【コラム】サブプライムが変えたクラウディングアウト-Dウィルソン

「クラウディングアウト」とは通常、政府 の借り入れ増大が民間の資金調達を圧迫する状況を指す。しかし、最近の米銀 行業界では別の種類のクラウディングアウトが起こっている。

信用市場が昨年凍り付いてから米銀が実施した巨額増資の大半は、大手に よるものだ、資産規模の上位4行、シティグループとバンク・オブ・アメリカ (BOA)、JPモルガン・チェース、ワコビアは合計で831億ドル(約8兆 9800億円)を調達した。これは米銀全体の調達額の73%に相当する(ブルーム バーグ調べ)。

米貯蓄貸付組合(S&L)最大手のワシントン・ミューチュアルの121億 ドルを加えると、割合は84%となる。証券会社を加えれば、大手の割合はさら に高くなるかもしれない。

これによって、通常とは異なる種類のクラウディングアウトが発生する。 つまり、大手が巨額の資金を取り込んでしまった結果、中小の銀行は理にかな ったコストで資金を調達することが難しくなる。

例えば、オハイオ州の地銀、ナショナル・シティーは4月に投資会社コル セア・キャピタルなどに70億ドル相当の株式を売却したが、価格はほぼ40% 割引の水準だった。以来、同行株は下落し増資で発行した普通株と転換可能優 先株の価格に歩み寄る形で5ドルを割り込んだ。

ここで、もう1つの問題が浮上する。銀行がさらに増資をしようとしたと きに、投資家が応じるかという問題だ。リチャード・ラムズデン氏らゴールド マン・サックス・グループのアナリストは17日付のリポートで、米銀の増資 42件のうち株価が新株発行価格を上回っているのは4件のみだと指摘した。 信用環境が悪化するなかで米銀は650億ドルの追加増資が必要な可能性がある との見方も示した。

リポートは下落している増資銘柄の例を挙げていないが、探すのは簡単だ。 17日までで、シティとBOA、JPモルガン、ワコビアが昨年12月以降に実 施した12件の新株発行で、購入した株主に利益が出ているものはない。一番ま しなBOAでほぼ横ばい。ワコビアは2カ月で28%下落と最悪だ。

このような実績から見て、一部の米銀はこれから増資をしようとしてもク ラウディングアウトに遭遇する公算が大きい。政府の代わりに大手米銀が、彼 らを締め出す役割を演じてくれる。 (デービッド・ウィルソン)

(ウィルソン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。この コラムの内容は同氏自身の見解です)

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