【経済コラム】米利上げ幅を決定するのは重力の法則?-J・ベリー

米金融当局はインフレ抑制を目指し利上げ 幅を検討する際、重力の法則を参考にするかもしれない。すなわち、原油価格も 含め、上がったものは必ずいつか下がるのだ。

原油相場が前年比約2倍の1バレル当たり140ドルに達した16日、上昇に 限界が見えたようだ。

いずれにせよ、中国やインドなど新興経済国の原油需要が急速に拡大しても 価格上昇は必ず止まり、若干下落するだろう。原油価格が2倍になれば需要は縮 小し、これが価格の緩やかな下落につながるからだ。

従って金融当局者らは、原油が原因で消費者物価が4%もしくはそれ以上の ペースでいつまでも上がり続けることはないということは十分理解している。食 品価格も現在のインフレ率高止まりの主因の1つだが、やがて頭打ちとなること は避けられない。

しかし、バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長をはじめとする当 局者らは、食品・エネルギーのインフレが国内の価格設定プロセス全体に影響を 及ぼさないようにしたいと考えている。だからこそ当局者の多くが近頃、インフ レをめぐる強硬な言葉を口にするのだ。

バーナンキ議長は9日、ボストン連銀の会議で、米連邦公開市場委員会(F OMC)が長期的なインフレ期待の上昇に強く抵抗すると語った。

こうした当局者の懸念表明を受け、シカゴ商品取引所(CBOT)のフェデ ラルファンド(FF)金利先物の動向は、年内に数回の0.25ポイントの利上げ が実施されると投資家がみていることを示している。ただ6月24、25日のFO MCで金利が変更されると予想する投資家は少数だ。

政策決定の難しさ

現在、最善の金融政策を選ぶのは非常に難しくなっている。

米経済はリセッション(景気後退)入りしていないものの、住宅市場の深刻 な不況が経済成長を抑制しており、雇用者数は減少している。従って、景気過熱 を沈静化させるために利上げが必要というのとはまったく違う。しかも利上げし たからといって、食品とエネルギー価格が大きく影響を受けるわけでもない。

むしろ今の利上げの主な目的は、コアインフレの抑制に必要ならば米金融当 局がどのような措置でも講じるとの安心感を消費者に与えることだろう。これが うまく行き、消費者のインフレ期待を低く抑えられれば、一時的に商品とエネル ギー価格が上昇してもインフレの高止まりにつながる可能性は低くなるだろう。

コーンFRB副議長はボストン連銀会議で、米国のインフレは3つの要因に よって引き起こされると語った。すなわち、現在、食品とエネルギーのコストを 押し上げているような価格ショック、インフレ期待、全体的な需要・供給バラン スだ。

いまのところ価格ショックは、消費者物価指数のコア部分に大きく影響して いないし、賃金の伸び加速につながっていない。例外は航空運賃ぐらいだ。

民間部門の平均時給は5月までの1年間で3.5%の上昇と、前年同月の伸び を約0.5ポイント下回っている。米労働省が発表した雇用コスト指数は3月まで の1年間で3.2%上昇と、前年同期の上昇率から変わらなかった。

物価に根本的な変化はない

また米経済成長が減速していることから、労働コストが近い将来にインフレ 圧力を強める可能性は小さい。

一部の民間エコノミストは、過去4年間の原油の値上がりと最近の食品価格 上昇が米国のインフレの根本的な変化を示唆していると主張する。しかし、それ を裏付ける証拠はほとんどない。

この数十年間、インフレ総合指数が、変動の激しいエネルギーと食品を除い たコア指数を上回ってきており、コア指数の方が今後の動向の判断に有用である ことが明らかになっている。つまり、この間、総合指数が常にコア指数に向けて 低下する傾向がみられた。

ボストン連銀のローゼングレン総裁は9日の会議で、同連銀のエコノミスト が実施した最新調査によって、依然としてコア指数が総合指数よりも予測に適し ていることが示されたと述べた。

米国のインフレは制御不能ではない。米当局者らは、物価安定と最大限の雇 用維持という2つの目標を追求しつつ、今後もインフレが制御できるよう努める 覚悟だ。

現在のようにインフレと失業の双方が当局や消費者の望む水準を上回る状況 では、政策はどちらか一方を無視することができない。

昨年夏以来、当局者は金融市場の混乱のなか、経済の破たん回避に集中せざ るを得なかったが、深刻なリセッション入りのリスクは後退した。

従って今は若干のインフレ対策に取り組むべき時だ。ただ、小さい規模で緩 やかに行うのが良い。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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