日銀議事要旨:世界経済の下振れとインフレリスク高まっている(2)

(第3段落以降にコメントと発表内容を追加します)

【記者:日高正裕】

6月18日(ブルームバーグ):日本銀行は18日午前、5月19、20日の金融 政策決定会合の議事要旨を公表した。それによると、委員は海外経済について 「国際金融市場の動揺が続き、米国経済が停滞するなど下振れリスクが引き続き 高い」との認識を共有する一方で、「原油など国際商品市況は高水準にあり、世 界的にインフレリスクが高まっている」との見方で一致した。

委員は米国経済については「金融市場・資産価格・実体経済の負の相乗作用 がいつどのように収束に向かうのか、不確実性が大きい」との認識で一致した。 ただ、複数の委員は「金融・建設業以外の企業決算はさほど悪くなく、米国経済 が大きく下振れるリスクはやや後退した」との見方を示した。

先行きの金融政策の運営については、複数の委員が「景気については下振れ リスクが高い状況にあるが、政策判断にあたっては常に景気と物価の両方に注意 を払っていることを対外的に説明していく必要がある」との考えを示した。リー マン・ブラザーズ証券の山下周チーフJGBストラテジストは「海外景気の減速 が鮮明になるに従って、インフレ懸念も徐々に沈静化に向かうだろう」とした上 で、「日銀は09年前半まで利上げを見送るだろう」と予想している。

ある委員は一次産品価格の上昇について「需要ショックと供給ショック の2つの面で日本経済に影響を及ぼしており、これらのショックが持続的」 であると指摘。「一次的な供給ショックについては、インフレ予想の変化を 通じて2次的な影響が生じないのであれば、必ずしも金融政策で対応する必 要はないというのが教科書的な回答だが、現在は持続的で複合的なショック が生じているため、政策対応は難しくなっている」と述べた。

米国型コアCPIは実勢表さず

また、ある委員は「一次産品価格の上昇は相対価格の変化をもたらし、 資源配分の調整を促すが、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動次第 では一般物価水準の大きな変動につながるリスクもあるので、これらの動向 に注意しながら金融政策運営を行う必要がある」と語った。

こうした物価情勢において、どのような物価指標をみていくことが適当かに ついても議論が行われた。ある委員は「持続的なエネルギー・原材料価格の上昇 が生じている現状では、それらを除いた米国式のコア消費者物価指数は、物価の 実勢を表していない可能性がある点には十分留意する必要がある」と指摘。ある 委員は「現在のように川上から川下に価格転嫁が進んでいく状況では、企業物価 指数も引き続き重要な指標である」と述べた。

国内経済については、複数の委員が「特に中小企業において、原材料高や 円高の影響を受けて収益が伸び悩み、設備投資や雇用スタンスが慎重化して いる」と指摘した。

また、多くの委員は雇用者数について「短期的な振れが小さいとされる 毎月勤労統計の常用雇用者数が前年比2%程度の伸びで推移している一方、 調査対象の広い労働力調査はこれより弱めの動きとなっており、中小企業を 中心に限界的な労働需要が鈍化している可能性がある」と指摘した。

消費者のインフレ予想は高まっている

日銀は同時に、経済・物価情勢の展望(展望リポート)を作成した4月 30日の決定会合の議事要旨も公表した。それによると、多くの委員は物価につ いて「企業がコスト増を最終製品に転嫁する動きが広がっている」と指摘。 「企業の価格転嫁の動きを映じて、一次産品価格上昇の影響が川上から川下 段階に一段と広がっている」との認識を示した。

また、ある委員は「生活必需品の価格上昇により消費者のインフレ予想 は高まっており、その影響に注意すべき」であるとの認識を示した。

米国経済については、何人かの委員が「金融環境のタイト化と実体経済 の悪化という、金融と経済の負のフィードバック・メカニズムに歯止めがか かっていない」と指摘。このうちのある委員は「日本のバブル崩壊後の長期 的な景気低迷の経験を踏まえれば、金融システムが安定しないと、金融緩和 や減税の効果も限定的になる可能性がある」と述べた。

4月30日と5月19、20日の金融政策決定会合では、いずれも全員一致で政 策金利の据え置きが決まった。白川方明総裁は13日の会見で、国内の景気につ いては下振れリスク、物価については上振れリスクを「注意深くみていく必 要がある」とした上で、金融政策については「両面のリスクを踏まえた上で、 物価安定の下での持続的な成長を実現できるよう適切な政策判断に努めてい きたい」と述べ、当面は様子見を続ける姿勢を示した。

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