債券先物の乱高下、東証売買システム更新が拍車―背景に取引所間競争

債券先物相場が乱高下している。4月下旬 の相場急落をきっかけに、国内投資家などが金利上昇リスクを敬遠して取引を 手控え、先物市場の流動性が低下したことが根底にある。顧客確保に向けた取 引所間の競争を背景に、東京証券取引所が売買システムを更新したことが、値 動きの荒さに拍車をかけているとの指摘もある。

債券先物中心限月は前週末、前日比1円16銭安に急落する場面があった。 先物価格が1円超動くのは、今年に入ってからすでに12回目。2007年には2回、 06年は3回程度しかなかった。4月25日の日中取引では、前日終値に比べて2 円安まで下げ、取引を一時的に中断する措置「サーキットブレーカー制度」が 初めて発動された。

相場乱高下の主因は市場流動性の低下。日興シティグループ証券シニアス トラテジストの山田聡氏は、4月25日の相場急落で「市場流動性が低下してし まったため、一部の外国人投資家の売買で相場が大きく動くようになった」と いう。銀行勢など国内投資家が評価損を抱えてしまったために、取引を控えざ るを得なくなった結果だ。

東証のシステム更新、「値動きに拍車」

これに加え、東証の売買システム更新に伴う影響を指摘する声もある。三 菱UFJ証券金融市場部の上西誠国債課長は、新システムの導入で売買の発注 から取引成立(約定)までにかかる時間が短縮された結果、「自分がいま目に している値段と、注文を入れた瞬間の価格が変わってしまう」と述べ、約定さ せるためには、「何銭も高いところで買い注文を入れることになり、ますます 値動きに拍車がかかる」と困惑気味だ。

東海東京証券債券ディーリング部の有麻智之シニアリーダーも、「値動き のスピードには慣れることはない。速度に人間の目がついていかない」とため 息を漏らす。

1000分の数秒、100分の数秒で競争

債券先物の新売買システムは今年1月に導入された。投資家や証券会社な どユーザー側の進歩が非常に速く、アルゴリズム取引などの多様なシステム取 引手法が発達していることに対応するためだ。東証IT開発部の松井孝文マネ ージャーは、顧客を開拓・確保するために、「世界中の取引所が1000分の数秒 から100分の数秒のスピードを競い、凌ぎ合っている」と話す。

アルゴリズム取引とは、証券会社が機関投資家からの注文を特定の約束や ルールに従い、人手を介さずにコンピューターで自動的に発注、処理する手法。 人間の反射神経の10倍から100倍程度の速度で売買注文を処理するもので、 2003年ごろから米国で急速に発達してきた。野村総合研究所の田中隆博上級研 究員は、「国内でも主に外資系証券会社を通じて、ヘッジファンドなどが利用 し始めている」という。

アルゴリズム取引の特長について、クレディ・スイス証券の巻口蓉子エレ クトロニック・トレーディング部長は、「大量注文を高速で小口に分けて処理 できるため、機関投資家の手口が市場に洩れることなく約定できる」という。

野村総研の田中氏は、「米国では株式市場で取引全体の30%以上がアルゴ リズムを通じて取引されており、数年後には5割を超えると予想されている」 と説明する。「アジアでもシンガポール、香港、韓国などで利用されている。 ツールへのニーズは高まっており、それは日本の投資家も海外の投資家も変わ らない」と、クレディS証の巻口氏はみている。

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