渡辺前財務官:ドル買い介入、差し迫ってない-中国に急減速リスク(3)

前財務官の渡辺博史一橋大学教授は17日、 都内で講演し、ドル安是正のための為替介入の可能性について「そうクィックデ シジョン(早期の決定)という話ではないのではないか」と述べ、早期の介入実 施には否定的な見方を示した。一方、世界経済については、足元では米経済の落 ち込みを欧州とアジアが下支えしているが、中国経済は年後半に調整に入る可能 性が高いと語った。

渡辺氏は、先にポールソン米財務長官が介入の可能性を示唆したことに関し、 米景気の低迷を背景に「金利が動かせない中で為替も動かせないと自ら言う必要 はない、という判断だろう」と話し、「あくまでディフェンシブ(防御的)、パッ シブ(受け身的)な動きだ」と指摘した。さらに、介入を実施する場合、協調介 入でないと効果が薄いとも述べ、各国の置かれた経済状況が異なるため、「実際 にやるかは別問題」との認識を示した。

ポールソン米財務長官は9日、「為替介入という選択肢を排除しない」と発 言し、13、14日に開催された主要国首脳会議(洞爺湖サミット)財務相会合で も、強いドルを信じると表明。これまで中国などに対し市場介入を控えて「為替 相場の柔軟性」を向上すべきだとしてきた姿勢から一転し、ドル相場を支える 「口先介入」に踏み切った。

一方、渡辺氏は中国経済について「累積している問題が一気に顕在化するリ スク」があり、「今年後半からかなりの調整に入る」可能性が高いと話した。具 体的には、実質成長率の「2%前後の下方調整は中国の成長にかなりの影響を及 ぼす」と述べ、中国周辺のアジア諸国の景気を下押しする可能性にも言及した。 中国の累積している問題としては、貿易黒字や流動性の増加、非効率な投資、所 得の不均衡、食料品を中心としたインフレを挙げた。

また、世界経済では「やはりインフレが大きな問題になってきている」と指 摘。原油価格の高騰が長引けば、アジア諸国の「国際収支に徐々に影響が出てく る」と話し、日中を除くアジア諸国が貿易赤字に転落する可能性に言及した。食 料価格の高騰に関しても、「世界全体のマーケットがマネタリゼーション(金融 商品化)に入っている」と指摘し、食料価格高騰の「何割かはマネタリゼーショ ンの影響だ」との見方を示した。

渡辺氏は、サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン問題を受けた 米実体経済の落ち込みに関しては、「それほど悲観的にならなくても良いのでは ないか」と話した。その背景について「新大陸から発生した津波に対して旧大陸 の東西が歯止めになっている」と述べ、原油高で潤う湾岸諸国やロシアだけでな く、欧州やアジア諸国の底堅い成長が足元では世界経済を下支えしているとの認 識を示した。

渡辺氏は2004年7月から約3年間、財務官を務めた。在任中は為替市場へ の介入を一度も実施しなかった。

--共同取材:三浦和美     Editor: Norihiko Kosaka, Tetsuzo Ushiroyama

参考画面: 記事に関する記者への問い合わせ先: 東京 野澤茂樹 Shigeki Nozawa

+81-3-3201-3867 snozawa1@bloomberg.net 記事に関するエディターへの問い合わせ先: 大久保 義人 Yoshito Okubo

+81-3-3201-3651 yokubo1@bloomberg.net David Tweed

+81-3-3201-2494 dtweed@bloomberg.net

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE