温暖化懇:排出量取引の実施時期、明示せず-首相への提言(3)

有識者や企業経営者らでつくる「地球温暖化 問題に関する懇談会」(座長・奥田碩トヨタ自動車取締役相談役)は16日、首相 官邸で開いた会合で温暖化対策に関する提言をまとめ、福田康夫首相に提出 した。焦点の排出量取引については、「欧米の動向を注視しつつ、試行的実施 を通じて、わが国の実情を踏まえたものとして検討が続けられなければならな い」と指摘するにとどめ、実施時期については明示しなかった。

排出量取引については、福田首相が9日、日本記者クラブでの演説で、今秋 に国内統合市場を試行的に創設する方針を表明している。勝俣恒久東京電力 社長、三村明夫新日本製鉄会長ら経済界関係者を含む懇談会の提言が注目さ れたが、提言は両氏らの慎重論に配慮した格好となった。

会合後、奥田氏は記者団に対し、排出量取引の開始時期を提言に盛り込ま なかったことについて聞かれ、「中では積極派と慎重派がいる。産業界はいろん なことを言っている」と慎重論が根強くあることを認めた。

その上で、「首相が代表して秋から始めると言っており、首相決断として産業 界としても重く受け止めるということだと思う」とも述べ、政府方針への協力は必要 との認識も示した。

東電・勝俣氏:排出量取引、もう少し検討必要

首相官邸報道室は提言内容と同時に、これまでの懇談会での各委員の発言 も実名入りで紹介している。この中で、東電の勝俣社長は、取引所はあった方が いいと容認する考えを示したものの、企業に対して排出可能量の上限(キャッ プ)を強制的に割り当てる手法には問題があるとの認識を表明。実験的な取り組 みも含めてもう少し検討が必要だとの意見を述べていたことを紹介している。

また、新日鉄の三村会長は、実需取引が少なく、金融ブローカーが参加して いるとの懸念を示していたという。

一方、国連環境計画金融イニシアティブ特別顧問の末吉竹二郎氏は、欧米 の現状を批判するだけではなく、早期導入に向けた結論を出すべきだとの積極 論を展開していた。

排出量取引、投機的行動への規制研究を

こうした議論を踏まえてまとめられた提言は排出量取引市場の運営に関して、 「市場メカニズムを活用して炭素削減を進める場合、ややもすると投機的行動が 起こりかねない」と指摘。「仮にマネーゲーム的様相が大きくなれば、多くのマー ケット参加者が迷惑を被る。そうならないための工夫も忘れてはならない」と国際 的な投機資金の流入に対して何らかの規制が必要との考えを明記した。

具体的には「国境を越えたマネーゲームに課税するという国際的な動向にも 留意しつつ、これについても研究をしていく必要がある」と税制面での検討を求 めた。

ただ、提言は排出量取引を試行的に導入するにあたって、各企業の排出可 能量の上限をどう割り当てるかなどの制度設計については触れていない。

奥田氏は記者団からこの点について聞かれると、「正直言って、具体的にこう いう方式で計算しろ、というものは持っていない。産業界の一部にはキャップを はめられるのはたまらないという意見がある。できるだけ合理的に日本にも世界 にも通じるような決め方をしていくということになる」と述べた。

民間金融機関も環境関連情報開示を

提言はこのほか、日本が目指す低炭素社会を実現するため、民間金融機関 の果たすべき役割について、「金融が社会のために果たすべき責任は一層重く なっている」と言及。「温室効果ガスの削減に資するような取り組みに対し、積極 的に資金供給することが必要」と呼び掛けたほか、金融機関も環境関連の取り 組みを開示する必要があるとも指摘した。

低炭素社会への移行に伴う負担に対しては、「産業界のみが負担するので はなく、広く国民レベルにおいても応分の負担をする日本らしい制度設計が考 慮されるべきである」と促した。

また、福田首相が表明した2050年までに現状から60-80%削減するという 温室効果ガス削減の長期目標については、「その実現に向けて、計画に基づき、 革新的な技術開発を着実に実行していくことが必要である」と指摘、実現に向け た取り組みを求めた。その前提となる中期目標については、「公平で実効性のあ るものとするため、セクター別の積み上げ方式を用いつつ志の高いものとしなけ ればならない」とするにとどめた。

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