【今週の日本株】14000円挟む、インフレと円安綱引き-米金融決算へ

今週(16-20日)の東京株式相場は、日経 平均株価が1万4000円を挟んだ展開になりそう。記録的な原油高を背景に、世 界的なインフレ懸念が広がっており、景気の先行き不安が上値を抑える。また米 国では、リーマン・ブラザーズなど金融機関の3-5月期決算の発表が相次ぐた め、サブプライム(信用力の低い個人向け)ローン問題による損失規模を見極め ようと、発表内容には神経質になる公算が大きい。ただ、為替相場では円高修正 が進んでいるため、輸出関連株を中心に相場全体の下げも限定されそうだ。

安田投信投資顧問の茶野宏ファンド運用部長は、「国内企業の決算発表も一 巡し、相場にはこれといって強気になるだけの材料がない。ただ、為替は円安水 準を維持しており、売り込む材料もない」と話している。

FRBの一手注視、米金融決算も布石に

世界経済を巡っては、物価上昇と景気後退が同時進行する「スタグフレーシ ョン」への懸念が広がっている。6日のニューヨーク原油先物相場は、10ドル 以上急伸し、終値は1バレル=139.12ドルと、史上最高値をまたも更新した。 年初からの上昇幅は45ドル以上となり、率にして5割近い。「エネルギーと食 品価格の上昇で家計が圧迫される中、個人消費は前回より鈍化した」――。米連 邦準備制度理事会(FRB)が11日に発表した地区連銀経済報告(ベージュブ ック)は、物価上昇圧力が景気の下押し要因になっていると指摘している。

「断固阻止」――。バーナンキFRB議長は米国時間9日、これまでで最も 強い表現でインフレ退治を示唆した。金融市場では、発言をきっかけにFRBが 物価安定のため、年内に利上げに踏み切るとの観測が急浮上。10日の米債券市 場では2年債利回りが一時2.95%と、1月2日以来の高水準に達し、12日には 1年5カ月ぶりに3%台を付けた。FF金利先物相場では、25日に開催される 米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げを織り込む動きも出てきている。

しかし、「信用リスクの高まりを考えると、本格的に利上げを実施すること は難しい」(いちよし投資顧問の秋野充成運用部長)のが米国経済の現状だ。サ ブプライムローン問題から広がった信用不安が依然くすぶるだけに、FRBとし ても利上げ実施は慎重にならざるを得ない。FRBは難しいかじ取りを迫られて おり、インフレ懸念から前週の米株相場の上値は重く、国内独自の手掛かり材料 に欠ける中、日経平均も米動向に引っ張られて3.6%安となった。

米金融政策の方向性を占う意味でも、今週から本格化する米金融機関の決算 発表は注目だ。16日にリーマン・ブラザーズ、17日にはゴールドマン・サック ス、18日にモルガン・スタンレーが発表を予定している。米会計基準の厳格化 の影響も含め、証券化商品の損失規模が注視される。損失が拡大していれば、信 用不安の高まりから、スタグフレーション懸念が広がる可能性が高い。

ドル高政策

もっとも、為替相場では円高修正が続いており、相場の底は深くないとの声 は多い。前週の為替相場はドルの買い戻しが進み、12日の取引では1ドル=108 円台と2月下旬以来の円安・ドル高水準となった。3月17日に付けた年初来の 円高値(1ドル=95円76銭)と比べれば、10円以上の修正が進んだことになる。

米国では利上げの実施が難しいため、インフレ対策の1つとして浮上してい るのがドル高政策。原油買いに拍車をかけているドル安が下げ止まれば、物価の 上昇圧力も緩やかになる。ポールソン米財務長官とニューヨーク連銀のガイトナ ー総裁は9日、為替介入を「検討対象から排除しない」と発言し、米政府と中央 銀行がそろってドル安に対する懸念を表明。これまで「強いドル」を掲げつつも 黙認してきただけに、ドルの買い戻しのきっかけとなった。

トヨタ自動車の今期(2009年3月期)の想定為替レートは1ドル=100円。 国内企業の多くが、サブプライム問題の影響などから現状水準より円高で設定し ている。米国のドル高政策が続けば、円安水準が維持されることになり、「国内 企業の上方修正期待が高まりそうだ」(ちばぎんアセットマネジメントの安藤富 士男専務)。

米PPIや鉱工業生産、月例経済報告

このほか日本株相場に影響を与えそうな材料としては、海外では16日に米 国でニューヨーク連銀製造業景気指数、17日に5月の米生産者物価指数(PP I)、住宅着工件数、鉱工業生産がそれぞれ発表予定。PPIでインフレ警戒感 が高まらないか、要注意だ。このほか、19日には6月の米フィラデルフィア連 銀景況指数があり、週末20日は株価指数先物やオプションの清算日が重なる 「クワドラプルウィッチング」で、米国はやや波乱含みとなる可能性もある。

一方、国内では16日に政府の月例経済報告、5月の首都圏マンション販売、 19日に4月の景気動向指数改定値、5月の鉄鋼生産が発表される以外はあまり 目立った統計の発表はない。また16日には、東証でミニTOPIX先物、TO PIXコア30先物、REIT指数先物が上昇するため、先物主導で関連銘柄が 動く場面も想定される。

*T

【市場関係者の当面の日本株相場の見方】 ●三菱UFJ証券投資情報部の船戸隆裕氏

「米国の景気後退期間の過去の平均は10カ月。雇用統計がマイナスになり 始めた今年1月から数えると、10月ごろ景気後退局面を脱する見通しで、今秋 を目指して買いを入れ始めたいところだ。ただ、1970年代のオイルショック時 には景気後退が16カ月続いたこともあるため、来春まで株式相場が停滞するリ スクもある。両方鑑みると、米国景気回復とドル高を見越してトヨタ株を半年か ら1年持つつもりで、安くなった時に少しずつ買っておくのがいい」

●しんきんアセットマネジメント投信の藤本洋主任ファンドマネージャー

「今週も下へのバイアスがかかりやすくなりそうだ。為替の円安方向で日本 株が買われるといった法則が崩れつつある。インフレが世界景気の足を引っ張る との懸念が強まっており、グローバルな需要の減退が輸出企業の為替採算改善を 帳消しにしてしまう可能性が強く意識されている。米証券大手の3-5月決算も 警戒。含み損の潜伏先と見られている価格が不透明な『レベル3』資産の評価損 が拡大する可能性が高いからだ。仮に日経平均が5月12日に付けた直近安値 (1万3540円)を下回り、節目の1万3500円も割り込むようだと、3月下旬以 降の戻り相場で買い出動した投資家の多くが見切り売りに動こう」

●みずほインベスターズ証券の稲泉雄朗エクイティ部長

「週前半こそ日経平均は1万4000円を挟んでもみ合いとなるが、後半にか けては戻り高値を更新しよう。想定レンジは1万3800円-1万4500円。円安が 進み、4-6月期業績は最悪を回避できる見通しになった。トヨタが1ドルの円 安で営業利益を300億円の利益増につながるように、企業業績は底上げされ、現 在の原油価格でも中間決算での業績上方修正が見えてくる。3月の戻り相場の初 期局面では、売買高が少ない中で輸出関連中心に指数が上昇した。足元でにぎわ った低位株物色がひと休みの半面、再び指数だけが上がる状況になろう」

●十字屋証券投資情報室の岡本征良室長

「輸出関連企業が恩恵を受けられるため、これまでは『円安=株高』の構図 だったが、これからは円安進行が海外からの調達価格上昇につながる点に目が向 かいそうだ。レギュラーガソリンが1リットル=200円の時代が来ても不思議で はなく、スタグフレーション(物価上昇と不況の進行)になりそう。日本は物価 が継続して下落するデフレーションだっただけに、物価の上昇には過敏になりや すい。相場の上値は重く、下値は1万3500円程度を予想する」

--共同取材:長谷川 敏郎、鷺池 秀樹、河野 敏、浅野 文重 Editor:Shintaro Inkyo

参考画面: 記事についての記者への問い合わせ先: 東京 常冨 浩太郎 Kotaro Tsunetomi +81-3-3201-2089 ktsunetomi@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: 東京 大久保 義人 Yoshito Okubo +81-3-3201-3651 yokubo1@bloomberg.net 東京 Nicolas Johnson +81-3-3201-8343 nicojohnson@bloomberg.net

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