【今週の日本株】反落へ、世界的スタグフレーションを警戒-安全志向

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6月相場入りする今週(6月2-6日)の 東京株式相場は、反落する見通し。原油など商品市況高騰に始まるインフレ進 行で、世界的な景気減速への懸念は強まっている。株式や債券など伝統的資産 だけでは投資リターンが不十分で、分散効果も低減しつつあり、商品などの代 替投資先を探す動きが今後も強まりそう。先物主導で足元戻り歩調にある日本 株も、このまま楽観的にはなりにくい状況だ。

前週末のTOPIX終値は1408.14ポイント、日経平均株価は1万4338 円54銭。米国株堅調や為替の円安傾向など外部環境の改善に加え、債券先物 売り・株式先物買いの動きも加わり、両指数とも前の週から2.3%高くなった。 出来高も増加傾向で、30日の東証1部売買代金は2兆9500億円と、先物の特 別清算値(SQ)算出日を除くと2月20日以来の高水準に膨らんだ。

ただ、海外機関投資家の動向に詳しい草野グローバルフロンティア代表の 草野豊己氏は、「マーケット関係者が最も恐れるのはスタグフレーションだ。 債券投資家がインフレを織り込みに行く一方で、株式投資家は景気減速を織り 込んでおり、両相場ともいずれ下がる」と、警戒姿勢を緩めない。草野氏は、 「伝統的資産だけで運用を行ってきた投資家はカントリー・アロケーションや アセット・アロケーションが効かないと嘆き始めており、運用がますます難し くなっている」と話す。

1次産品やコモディティに

ドイツ銀行の債券アナリスト、ムスタファ・チャウドリー氏はこのほどま とめたリポートで、インフレ懸念を背景にした足元の世界的な金利上昇につい て「ポジショニングやリスク投資意欲の減退も金利上昇に拍車をかけてきた。 中央銀行が供給面から、インフレショックに有効かつ迅速に対処できるか疑問 視され、市場のインフレ期待も一段と上振れしている」と指摘する。

同氏が1960年以降の米国のS&P500種株価指数と10年国債利回りの相 関関係を調べた結果、ブラックマンデーのあった1987年、世界的な信用収縮 が起きた98年など金融危機発生時に、本来は逆相関の関係にあるべき株式と 債券のリターンが順相関になった。足元の米金融市場は、当時に似たパターン を見せており、景気減速下でインフレが進んだ場合、「株式投資収益と債券投 資収益は順相関の度を増していくと予想される。投資家は通常の株式・債券以 外の代替的な分散投資先を求めていく」と、チャウドリー氏は予測した。

三菱UFJ証券投資情報部の折見世記シニア投資ストラテジストによれば、 「株式と債券のゼロサムゲームを避けるように、長期のリアルマネーは1次産 品やコモディティを買っている」という。草野氏もシカゴ先物市場(CME) のデータを基に、「大手年金基金や著名大学の基金が過去5年間で購入した商 品先物指数連動型のファンドの総額を原油の現物に置き換えると、中国の過去 5年間の石油使用量に匹敵する」と指摘、商品投資はすでに一定規模になって いると見る。米シティグループのまとめでは、1-3月の商品指数に対する投 資は400億ドル増の1850億ドル(約19兆円)と、昨年1年間の増え分をしの ぐ資金流入を見せ、草野氏らの見解を裏付ける。

ECBの利上げ時期探る、米国でも統計

スペイン4.2%、ベルギー4%、イタリア3.6%、フランス3.4%、ドイツ

2.6%――。調査会社Eurostatがまとめた欧州連合(EU)主要国の 総合消費者物価指数(HICP)は、すべての国で金融当局が安定的と感じる 金利水準を上回っている。特にインフレ・ターゲティング制を採用する7カ国 のうち、ポーランドやチェコなどの国々はすでに利上げへシフト。これまで利 下げを行ってきた英国も、5月に公表した最新の「インフレ報告」で原油や食 品の価格高騰とポンド安による物価上振れが従来の想定より大きく、かつ長期 化する公算があると指摘し、追加利下げに慎重な姿勢を示した。

今週5日に開催予定の欧州中央銀行(ECB)理事会では、各国のインフ レ動向に議論が集まりそうで、ECBが示すメッセージの行方に市場関係者も 注目する。5月のユーロ圏景況感指数(速報値)は97.1で、2005年8月以来 の低水準。アイルランド銀行のチーフエコノミストであるダン・マクラフリン 氏は、「すべての先行指数は、欧州の景気がトレンドを下回ることを示唆して いる」と分析、インフレで実質可処分所得の目減りが起こると、生産性の低下 につながる可能性があると懸念を示した。

ドイツ銀では、ECBのスタッフ予測に注目。3月時点で08年=2.9%、 09年=2.1%だったインフレ率(HICP上昇率)が6月にはそれぞれ3.4%、

2.4%に引き上げられると推測する。市場はすでにECBの次の一手が利下げ ではなく、利上げになると読んでいるようで、ユーロ翌日物無担保金利加重平 均(EONIA)フォワードレートは現在、年内の25ベーシス・ポイント (bp)の利上げを約75-80%織り込んだ。

今週は米国でも、2日に5月のISM(米供給管理協会)製造業景気指数、 3日に5月の自動車販売統計、6日に5月の雇用統計など重要統計の発表が相 次ぐ。最近の流れから、低調な内容が示される可能性が高い中で、インフレリ スクが警戒されているのは欧州と同じ。米メリルリンチの北米担当チーフエコ ノミスト、デービッド・ローゼンバーグ氏は原油相場の高騰で08年の米イン フレ率が平均4.5%に上昇すると予想する。

国内個人も安全志向か

サラリーマンのボーナス需要を見込み、国内大手投信各社は「割安」「高 配当」をうたったバリュー型株式投信を相次ぎ設定している。5月22日に運 用を開始した野村アセットマネジメントの「野村日本株割安高配当株投信 0805」は706億円の資金を集め、日本株関係者に一抹の明るさをもたらした。 しかし、募集上限5000億円で、30日に設定された日興アセットマネジメント の「日興ジャパン高配当株式ファンド」は178億円にとどまり、国内個人投資 家の株式に対する複雑な心情もうかがわせる。

「投資から貯蓄へリバース(逆流)する兆しが見え始めた」と語るのは、 大和総研投資戦略部の壁谷洋和ストラテジストだ。同氏は5月の日本株相場に ついて、「外国人投資家が第3週までに1兆円近く買い越す中で、個人は売り 越しだった。値上がりしたところで利益確定売りを出していた」と総括する。

壁谷氏は、5日から募集を開始する個人向け国債の販売動向を注視。「足 元で金利が上昇している環境下で、株式投信より個人向け国債にお金が集まる 可能性も出ている。個人の安全志向が強まっているようだ」と話す。日本でも 4日に、1-3月の法人企業統計が公表予定。前週末発表の4月の有効求人倍 率は3カ月連続で低下し、約3年ぶりの低水準だった。景気の先行きに不安心 理が強まれば、個人はより安全姿勢を強める可能性がありそうだ。

*T

【市場関係者の当面の日本株相場の見方】 ●MU投資顧問(三菱UFJフィナンシャルグループ)株式運用部の野田清史 シニアファンドマネージャー

「物価が上昇傾向にあり、債券から株式への資金の流れはまだ続きそうだ。 金利上昇で金利敏感株が上昇してくるだろう。グローバルで見た場合、インフ レ率を相対的に抑える国が選好されることになる。資源を持たないベトナムな どの国の株価は大きく下落している。日本は省エネという技術力があり、イン フレ率を抑えることは可能だ」

●独立系シンクタンクCFi代表の千原詮ストラテジスト

「今の若いファンドマネジャーはインフレを知らない。インフレヘッジで 株式の組み入れを引き上げようとする向きもあろうが、企業業績は悪化してい かざるを得ない。本当のインフレファイター銘柄を選別するのが大事だ」

●UBS証券の平川昇二チーフストラテジスト

「日経平均は、1万5000円に接近すると予想している。米耐久財受注で 非国防資本財受注がプラスとなるなど、米国は1-3月期に続き4-6月期も 景気後退に陥らない可能性が高まってきた。世界の株式市場が『米景気後退な し』を織り込む相場に突入している。今後ドル高が予想されることも日本株に プラスになる。ドルベースの日本株パフォーマンスが世界でも上位に入ってき たことで、アンダーウエートにしている海外投資家にあせりが出ている」

●かざか証券の市場調査部の田部井美彦部長

「先物主導で株式相場は上昇してきたが、持たざるリスクが高まり、現物 の買いも増えてきている。為替相場が円安・ドル高で推移し、輸出関連をけん 引役に一段高する可能性もある。米サブプライム住宅ローン問題などで新たな 悪材料が出なければ、日経平均は5月の戻り高値(1万4392円)を抜け、1 万5000円を目指すそう。25日移動平均の1万4000円付近がサポートライン」

--共同取材:長谷川 敏郎、常冨 浩太郎、浅野 文重 Editor:Shintaro Inkyo

参考画面: 記事に関する記者の問い合わせ先: 東京 鷺池 秀樹 Hideki Sagiike +81-3-3201-8293 hsagiike@bloomberg.net 記事に関するエディターへの問い合わせ先: 東京 大久保 義人 Yoshito Okubo +81-3-3201-3651  yokubo1@bloomberg.net 東京 Nicolas Johnson +81-3-3201-8343 nicojohnson@bloomberg.net

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