原油高止まりならCPIは今夏2%接近、債券相場は正念場-リーマン

過去最高値圏にある原油価格が大幅な下落 に転じない限り、国内のインフレ率は今夏2%近くまで加速。長期金利は2006 年5月以来となる2%に迫る――。リーマン・ブラザーズ証券の山下周チーフJ GBストラテジストは29日のインタビューで、債券相場は6月以降「正念場を 迎える」との見通しを示した。

ニューヨーク原油先物相場は22日、135.09ドルの過去最高値を記録。年初 来40%も上昇した。内外経済の減速にもかかわらず、日本の全国消費者物価指 数(生鮮食品を除く、コアCPI)は3月に前年比1.2%上昇。半年前はマイナ ス0.1%だった。長期金利の指標とされる10年物国債利回りは29日に一時

1.795%に上昇。米サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン問題が金 融システムに打撃を与える直前の2007年8月以来の高水準をつけた。

山下氏の「基本シナリオ」によると、内外経済のさらなる減速と原油価格の 大幅な下落、円高・ドル安の進行に伴い、国内物価・金利は年末にかけて低下に 向かう見通しだ。

ただ、原油が130ドル程度に高止まりし、円・ドル相場も横ばい圏内にとど まる「リスクシナリオ」の場合には、コアCPI上昇率は今夏に1.9%前後まで 加速し、10年債利回りは2%近くまで上昇。金融政策の動向に敏感とされる2 年債利回りも0.9%程度に上がるという。

大幅な利上げも

リスクシナリオが実現すると、債券相場は「新たな段階に移行する」と、山 下氏は語る。経済成長を加速も抑制もしない政策金利水準である「中立金利」と 日本銀行による将来の利上げ余地について、市場の見方が大幅に変わると見てい るからだ。

山下氏によると、中立金利は1%台の半ばから後半とされる潜在成長率と、 中期的な予想インフレ率に分解できる。予想インフレ率はこれまで0%を若干上 回る程度だったが、2%近いコアCPI上昇率が定着すると1%程度に高まると いう。その場合、市場が認識する中立金利はこれまでの1%台後半から、2%台 半ばから後半に上昇することになる。

中立金利は、内外経済が成長軌道に戻った後に、日本銀行が政策金利をどこ まで引き上げるかの目安になると、山下氏は指摘する。コアCPIの上昇加速に よって中期的な予想インフレ率が高まれば、「日銀による将来の利上げ幅が、こ れまでの市場予想より大幅になる可能性がある」という。

物価上昇に影響を及ぼしている原油高に関し、日銀の白川方明総裁は20日 の記者会見で、原材料価格は「基本的には高水準での横ばいが続いていく」と想 定していると述べた。4月に公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポー ト)によると、正副総裁を含む7人の政策委員は08年度のコアCPI上昇率 (中央値)を1.1%、09年度は1%と予想した。

足元の債券市場では、10年債とインフレ連動国債(TIPS)の利回り格 差が示す予想インフレ率(BEI)は0.4%前後。3月下旬から上昇傾向にある が、なおコアCPI上昇率(1.2%)よりは低い水準にとどまっている。

6月からが正念場

イーサン・ハリス米国担当チーフエコノミストらリーマン・ブラザーズ・ホ ールディングスの調査チームは、ブッシュ米政権の一時的な減税による景気下支 え効果は限定的と分析。住宅価格の下落が消費を圧迫するため、米国経済は一段 と減速し、原油は今夏110ドル程度まで下落すると見る。景気低迷でインフレ圧 力も弱まる中、米連邦準備制度理事会(FRB)は10-12月期に利下げを再開 し、09年3月までに現在2%の政策金利を1.25%まで引き下げると予想する。

山下氏の基本シナリオによると、円高・ドル安の再燃もあって、国内のコア CPI上昇率は1.4%前後で頭打ちとなり、10年債利回りは1.5%、2年債は

0.75%程度に落ち着く。日銀は政策金利の据え置きを続け、年末には10年債が

1.3%、2年債は0.6%まで利回り低下が進むとの見立てだ。

債券相場は目先、6-7月に正念場を迎えるとも指摘。過去の例では「投資 家の需要が高まる3-5月に金利低下(相場上昇)が進み、その後に金利が上が りがち」だが、今年は3-5月に金利が上昇してしまったためだ。米設備投資の 減速や減税効果の弱さも明らかになり、内外金利に低下圧力がかかると予想した。

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