BRICsの「R」シフト進む、資源力に個人も視線-債券投信大型化

日本の個人投資家の間で、ロシアに対する 投資意欲が高まりつつある。原油など資源価格の高騰を背景に、資源保有国と して経済発展を続けている点が最大の評価ポイント。新興国人気を引っ張って きた「BRICs」の中でも株式は割安との見方もあり、個別株の注文を取り 次ぐ証券会社では取引量が増加傾向だ。投資信託業界ではロシアファンドの投 入が相次ぎ、29日に運用を開始した債券ファンドは大型設定となった。

昨年8月、国内証券では初めてロシア株の取り扱いを始めたニュース証券 のワンフロアに、ポロローンとかわいらしい音色が響く。「この音はロシア株 の注文が入った合図で、口座数はコンスタントに伸びている」と、段上秀貴商 品本部長が話す。ロシア株専門のロシア系証券会社であるアルジゲート証券で も、株式取引が活発化。7日にメドベージェフ氏が大統領に就任して株式市場 が上昇した結果、「資源国の株式として再度注目されている。当社の5月の取 引高は4月比で倍増ペース」(株式営業部の金沢好樹副部長)だそうだ。

ロシアは天然ガス埋蔵量世界1位、石油産出量第2位と、BRICs(ブ ラジル、ロシア、インド、中国)の中でブラジルとともに資源大国。資源高を 追い風に両国の株式相場は上昇しており、ロシアの代表的な株価指数RTS指 数(ドル建て)は28日時点の年初来騰落率がプラス4.6%と、インドSENS EX30のマイナス19%、中国CSI300指数のマイナス31%とは好対照だ。

危機からの変ぼう、外貨準備は世界3位に

日本でロシア投資が増えているのは、高い経済成長の持続期待が高まって いるため。天井知らずのエネルギー価格の上昇は世界有数の資源大国を大きく 変えた。1998年にデフォルト(債務不履行)に陥ってロシア危機を引き起こし、 新興国市場全体を混乱に陥れたロシアは、プーチン前大統領の下で経済・財政 改革を推進。資源高という好環境にも恵まれ、06年には危機時に受けた融資を 完済し、外貨準備高は世界第3位にまで膨らんでいる。

新生インベストメント・マネジメントの尾沢浩之企画業務部長兼運用部長 は、ロシア経済について「内需も高い伸びを示しており、エネルギーの輸出に 依存した成長ではない。すでに国内総生産(GDP)の規模は大きく、ロシア はほかのエマージング(新興経済)諸国と少し異なる」と分析、安定した高成 長を当面持続していく点が最大の投資魅力と見ている。

ロシア単独相次ぐ、ドイチェの債券ファンドは490億円

日本でも、高成長国の1つとして2005年ごろからロシアへの関心が高まり 始めたが、株式市場が未発達などの理由で当初はロシアのみを投資対象国とし た株式ファンドはなく、BRICsやロシア・東欧ファンドなどという形で、 運用資金の一部を振り分けるファンドが主流だった。

しかしHSBC投信が昨年3月、国内籍の追加型公募投信として初めてロ シア単独の商品「HSBCロシアオープン」を投入。今年に入ると、2月に大 和証券投資信託委託が「ダイワ・ロシア株ファンド」、3月にビー・エヌ・ピー・ パリバ アセットマネジメントが「BNPパリバ・ロシア株式ファンド」が設定 し、5月30日には新生インベストメント・マネジメントが「新生・トロイカ ロシアファンド」を、三井住友アセットマネジメントも6月30日に投入する計 画で、単独での商品化が相次いでいる。現在運用中の3本の運用総額は28日現 在757億円。すべて、設定時よりも資産額を積み上げている。

また今月は、国内で初めてロシア債券を主要投資対象とする投資信託が誕 生した。ドイチェ・アセット・マネジメントが29日に設定した追加型の投資信 託「ロシア・ルーブル債券投信(毎月分配型)/(年2回決算型)」は、当初 設定額が上限600億円に対し、490億円に膨らんだ。販売会社は野村証券。ド イチェアセットの藤沢公春・投資信託営業部長は、先進国と比較して高い利回 りや、財政状態の改善に伴う格付けの引き上げ、通貨ルーブルの上昇などが見 込まれる点を挙げ、「資源高を背景としたインフレヘッジという観点からも、 ルーブル建て資産への投資を勧めたい」と話す。

低PER、エネルギー企業の多さ

ロシア資産への注目度が増し、中でも株式ファンドの設定が相次ぐ背景に は、経済成長力とともに株価水準の割高感の乏しさも挙げられている。ロシア 株式市場のPER(株価収益率)は10倍と、BRICs4カ国の中で最も低く、 これまでの歴史、情報量が少なかった分、海外からの資金流入が限定されてき たことも影響しているとされる。このため、中国やインドなど先駆けて急騰し たほかのBRICs諸国の株価が高値警戒から下落する中、ロシアはそれまで の上げが相対的に小さかったことも奏効、堅調な値動きを見せる。

またロシアでは、上場企業に政府系の大型企業が目立ち、投資に安心感が あるほか、時代の潮流にも乗るエネルギー関連企業が多い点も注目を集める一 要因だ。メドベージェフ大統領が会長を務める世界最大の天然ガス会社、ガス プロムは5月8日、米ゼネラル・エレクトリック(GE)と中国のチャイナ・ モバイルを抜いて世界の株式時価総額第3位に浮上した。さらに石油関連企業 には、露政府が3月に石油掘削税の引き下げを表明という好材料も出ている。 「石油企業は税引前利益の4-7割の税を負担していたが、それが軽減されれ ば、新たな油田開発投資に向けることができ、生産量拡大にもつながる」(ア ルジゲートの金沢氏)と、短期、中期両面で業績拡大期待が浮上してきた。

インフレ、人口動態がリスク

ロシア投資のリスクとしては、加速するインフレが挙げられる。実質所得 の伸びがインフレ率を下回る可能性があり、早急に即効性ある対策が求められ ている。ロシア中央銀行は4月に政策金利を引き上げたが、「政府は経済優先 でインフレを抑制しておらず、心配される」(ユナイテッドワールド証券の豊 島信彦執行役員)状況だ。日本と同様、人口動態もリスク要因。総人口は1992 年をピークに減少傾向をたどり、05年の平均寿命は国連開発計画によると男性 59才、女性72才と先進国の中で群を抜く短命国家だ。長期にわたる経済成長 の担い手の創出が課題でもある。

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