米ARS市場凍結:金融機関を訴えた投資家、損失の証明は困難か

米入札方式証券(ARS)市場でブローカ ーディーラーを務めるシティグループやモルガン・スタンレーなどの金融機関 が訴えられている問題で、顧客の立場の投資家が損失を被ったと弁護士らが証 明するのは難しいかもしれない。

金融機関は投資家にARSは現金とほぼ同等の流動性があると説明してい たとの主張に基づき、3月半ば以来、金融機関に対し少なくとも24件の集団訴 訟が起こされている。地方債や学資ローンを裏付けとする債券、優先株などを 中心とするARSの入札は2月中旬以降、不成立が相次ぎ、投資家は保有する ARSを売却できないでいる。入札はディーラーらが仕切っている。

だが、こうした訴訟に関与していない企業防衛を担当する弁護士は、それ でも投資家は利益を得続けていると指摘する。ARSの金利は7-35日ごとに 行われる入札で見直されるが、入札不成立となれば、金利は時に20%といった 水準まで上昇するからだ。

法律事務所オリック・へリントン・アンド・サトクリフのパートナー(ロ サンゼルス在勤)、ダニエル・チュコディー氏は、入札ごとの金利見直しに伴う 上乗せ金利の存在は入札が不成立となる可能性を投資家が認識していることを 証明していると話す。

投資家側の弁護士らは、顧客がほかの目的に資金を使うことができず損害 を被っていると主張しているが、コロンビア大学(ニューヨーク)のジョン・ コフィー教授(証券法)は、この訴えには「幾らか問題」があると指摘する。 「流動性の損失の程度を容易に測ることができるとは思えない」のだという。

調停

視力矯正センターを運営する米LCAビジョンで最高経営責任者(CEO) を務めていたスティーブン・ジョフィ氏は、低所得者向けのレーザー手術支援 とエイズ感染防止を目的に自ら始めた基金で問題が生じた。同氏は2月、基金 がARSに投じた135万ドル(約1億3900万円)の資金に流動性がなく引き出 せないことをUBSのブローカーから知らされたという。

「激しい怒りに駆られ動揺した」と言う同氏だが、その代理人を努めるジ ェーコブ・ザマンスキー弁護士(ニューヨーク在住)は、集団訴訟となれば数 年が必要で、調停がより適切な解決策だと説明する。すでに同弁護士はARS に関し6、7件の調停を申し入れているという。「集団訴訟が成功するとは思え ない。50-60人の投資家と話したが、個別の問題が多過ぎる」との見方だ。

UBS広報担当のカリーナ・バーン氏は、同行は訴訟や調停についてコメ ントしないとした上で、優遇金利での融資などを通じ「顧客に協力し、ケース バイケースで必要な流動資金需要に対応している」と説明した。

ニューヨークの連邦裁判所では、シティが少なくとも3件、モルガン・ス タンレーは2件の訴えを提起された。シティ広報担当者に電話取材を試みたが、 応答はない。モルガン・スタンレー広報担当のクリスティン・ポラック氏は、 原告側の主張を否定し、ARSの「課題」は市況に起因するものだと述べた。

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