三菱ケミH社長:有機ELパネル参入で年内提携へ-10年に製品化(3)

有機ELパネル市場への参入を目指す総 合化学国内首位の三菱ケミカルホールディングスは製品化の実現に向け年内に も提携先などの決定を行う方針だ。次世代の映像機器向け薄型ディスプレーと して有望視される有機ELパネル分野で、「三菱」ブランドでの世界展開を図 るためデバイスメーカーと共同開発に取り組み2010年にも製品化を目指す。

同社の小林喜光社長は23日、ブルームバーグ・ニュースとのインタビュ ー で、パネル開発の提携先について「それなりの規模を有するメーカーと共 同して取り組むが、イニシアチブはうちが取る」と強調。発表時期は「年内だ。 それでもやや遅すぎるぐらい」との見方を示した。また提携先は、系列を超え て世界規模で打診しているという。

有機ELは、液晶やプラズマに比べて消費電力が少なく、高画質な映像を 表現できるのが特徴。米調査会社アイ・サプライが昨年12月に発表した世界 市場予測レポートによると、有機ELは2010年に1225億円となる見込み。小 林社長は「有機ELはリスクのある商売。しかし中途半端なことはできない」 と指摘。「ただ、材料提供だけなら即やめたほうがよい」として、「多額の研 究開発費をかけて開発し素材だけを提供するのでは投資資金が回収できないだ ろう」とし、最終製品化により有機EL事業の採算性の向上を目指す考えを示 した。

ブランド展開、標準化作りがポイント

同社長は、先行する同社の有機太陽電池開発で培った先端の塗布技術など をパネル生産でも応用できるとの自信を示した。傘下の三菱化学は既に有機パ ネルの下地材料開発では世界最高水準にあり、基礎材料の一つの発光材料でも 実用化の一歩手前に達している。また同社は現在、有機ELの一分野では米ユ ニバーサ ル・ディスプレイ・コーポレーションと共同で開発を進めている。

小林社長は、「化学メーカーが自分たちで最終デバイスまでブランド展開 する時代が必ず到来する」と予測する。そのうえで、「うちはまだまだ最終製 品が少なすぎる」として、有機ELパネルの本格開発に取り組む決意を示した。 また、投資回収率を上げるためには「ブランドが大切であり、同時に標準化作 りのうまさも必要」とし、薄型テレビ向けパネルではシャープや松下電器 産 業が上手にブランド展開を実践している例を挙げた。

投資規模には慎重姿勢

一方、同社長は有機EL業界での競争については「泥沼化するのは避けた い」として、初期投資はリスクを勘案し比較的小規模にとどめるなど慎重に進 めると指摘。市場ニーズの趨勢を見極めながら段階的に投資規模を高めていく との考えを示した。ソニーは出光興産と有機発光素材を共同で開発し、昨年12 月に世界で初となる有機ELテレビを販売している。また、住友化学はテレビ や携帯端末向け有機ELパネルの生産に08年に参入する方針を表明するなど 次世代パネルでの競争激化が予想される。

CLSA・カリヨン証券の黒澤真シニアアナリストは、国内の化学会社が 最終製品志向を高める理由には、「産油国が既存の石化製品分野で川中まで進 出し始めたことが背景にある」と指摘する。そのうえで、黒澤氏は、三菱ケミ カルの有機ELディスプレーへの取り組みについて「既存の液晶やプラズマな どのパネルと品質や製造費の面で競争力が維持できるのか、また既存製品との 差別化が図れるのか」などが見極めのポイントだろうとの見方を示した。

三菱ケミカルHDは13日、2010年度を最終年度とする新中期経営計画を 発 表。3カ年での設備投資・投融資額は5900億円、研究開発には4250億円 を投じる。設備投資投融資は特に機能商品分野に2100億円を投入し、これま で以上に先端技術を重視し総合化学会社への飛躍を明確に打ち出した。同社は、 次世代に向けた成長分野を育成することを念頭に置き、次世代ディスプレー、 有機太陽電池、固体照明など7つの新分野に取り組む。

基礎化学、石化分野も取り組む

小林社長は7つの新分野について、①将来の巨大市場、②二酸化炭素の削 減、③利益期待――の3点を重視して選択したと説明する。さらに「ツゥー・ マッチ・ペトロケミカル・オリエンテッド(石化事業偏重)だったものを、時 代に合わせて付加価値を高めた商品群にシフトする」と述べた。ただ、「やや メディアには誤解されているようだが、われわれはきちっと基礎化学、石化分 野にも取り組むつもりだ」と付け加えた。

三菱ケミカルHの27日株価終値は前日比11円(1.6%)高の716円。

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