【今週の債券】波乱含み、インフレや戻り売り警戒―1.75%付近は買い

今週の債券相場は波乱含みの展開となり そうだ。世界的なインフレ懸念が圧迫要因となるほか、前週末に相場が再び急 落したことで、戻り売り圧力も強いとみられる。一方、景気が減速感を強める なかでは、新発10年債利回りが1.75%付近に上昇すれば、投資家からの押し 目買いが入ると期待される。

10年債利回りの予想レンジは1.65-1.80%

今週の新発10年債利回りについて、23日の夕方までに市場参加者5人に ヒアリングしたところ、全体の予想レンジは1.65%から1.80%となった。

前週の相場は中盤までは底堅く推移したが、後半は連日急落した。新発10 年債利回りの値幅は1.60%から1.755%と、15.5ベーシスポイント(bp)に及ん だ。こうした余波を受けて、今週も振れの大きい展開が継続すると予想される。

大和住銀投信投資顧問の伊藤一弥国内債券運用第2グループリーダーは、 「前週の地合いを継続し、前半は値動きが荒くなり軟調、後半は小幅に戻し、 週末発表の消費者物価指数などを確認して戻りを試す展開」という。

もっとも、新発10年債利回りが一時1.755%と、昨年8月以来の水準まで 達したことで値ごろ感が出ている。相場下落で損失を抱えた投資家からの売り 圧力は残るが、景気が減速感を強めるなかでは、金利の上昇余地も限られる。

三井住友海上火災保険投資部の高野徳義グループ長は、「水準的に買いた い弱気。6月の国債償還を控えて、20年入札は買わないといけない投資家がい る。実体経済から考えると、インフレだけをテーマに金利上昇が続くとは思わ ない」という。

市場では、「長期金利は予想していたレンジの上限に近づいているので、 基本的に相場は強含みの展開を見込む」(AIGインベストメンツの横山英士 ポートフォリオマネジャー)といった声も聞かれた。

27日に20年債入札、クーポン引き上げで波乱なしか

需給面では、27日に20年利付国債の入札、29日には2年利付国債の入札 が行われる。前週の相場下落で利回りが急上昇し、いずれの入札でも表面利率 (クーポン)が引き上げられる公算が大きくなっており、相場の波乱要因にな りにくいとの見方が出ている。

日興シティグループ証券の佐野一彦チーフストラテジストは、「20年債入 札ではクーポンが少なくとも2.3%が見込まれ、絶対金利水準を重視する投資 家の買いが期待できる。2年債入札についても、利回りが0.8%台なら問題な い」という。

今回の20年債入札に関して、前週末の入札前取引では2.355%で取引され ており、クーポンは前回債の2.2%から、2.3%または2.4%に引き上げられそ うだ。発行額は前回債と同額の8000億円程度。

一方、2年債入札に関しては、クーポンが前回債の0.7%から0.8%に引 き上げられる見通し。発行額は前回債と同じ1兆7000億円程度。

もっとも、地合いが悪化しているだけに、入札が相場の波乱要因になると 警戒する見方もある。岡三証券の坂東明継シニアエコノミストは、「地合いが 悪いので、20年債入札への警戒感からヘッジ売りが出そう。一方、2年ゾーン は相対的に安定しているが、入札に対する不安は残る」という。

白川・日銀総裁があいさつ、29日は亀崎審議委員が講演

今週は、28日に白川方明日銀総裁が日銀金融研究所主催2008年国際コン ファランスであいさつをするほか、29日には亀崎英敏日銀審議委員が出張先の 山形市で講演・会見を行う。

白川日銀総裁は前週の定例会見で、景気減速が明確になっていると述べた が市場の反応は限られた。一方、亀崎委員が景気下振れリスクや物価にどのよ うな見解を示すか注目する向きもあるが、日銀の金融政策は中立姿勢が当分続 くとみられており、市場参加者の注目度は高くない。

日興シティグループ証の佐野氏は、「いずれも市場の材料にはならないの でないか」とみている。

週末には月次の重要経済指標が相次いで発表される。ブルームバーグ・ニ ュースの事前調査によると4月の鉱工業生産指数は前月比0.5%低下、4月の 全国消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.0%の上昇が予想されている。

ただ、個別の指標に対する市場参加者の関心は薄れており、事前予想に対 して大きく振れない限り、債券相場への影響は限定されそうだ。

市場参加者の予想レンジとコメント

23日夕までに集計した市場参加者の今週の予想レンジは以下の通り。先物 は中心限月の6月物。新発10年国債利回りは292回債。

◎三井住友海上火災保険投資部・高野徳義グループ長

先物6月物133円80銭-135円00銭

新発10年債利回り=1.68%-1.78%

「水準的に買いたい弱気。銀行の戻り売りも考えると、海外勢主体で振れ の大きい相場が続く。ただ、6月の国債償還を控えて、20年入札は買わないと いけない投資家がいる。CPIだけ気にして利上げに動くような状況ではなく、 2年債入札もクーポン水準は十分だ。昨年の世界債券安と同じ展開だが、実体 経済から考えると、インフレだけをテーマに金利上昇が続くとは思わない」

◎大和住銀投信投資顧問・伊藤一弥国内債券運用第2グループリーダー

先物6月物133円50銭-135円50銭

新発10年債利回り=1.65%-1.80%

「前週の地合いを継続し、前半は値動きが荒くなり軟調、後半は小幅に戻 して、週末発表のCPIなどを確認して戻りを試す展開か。引き続き、ボラテ ィリティー(価格変動率)上昇と流動性の低下が悪循環する。相場が落ち着く ためには、米国でインフレ懸念が後退する必要あるが、時間がかかる。20年債 入札は2.3%クーポン以上になる可能性大きく、買い手はいるとみている」

◎AIGインベストメンツ・横山英士ポートフォリオマネジャー

先物6月物134円00銭-135円00銭

新発10年債利回り=1.65%-1.74%

「長期金利は予想レンジの上限に近づいているので、基本的には強含みの 相場展開を見込む。ただ、インフレ懸念が高まっており、30日発表のCPIに 注目。鉱工業生産も減速懸念がある中で、強い数字が出れば金利が上昇する可 能性もあり、見極めたい。20年債と2年債入札は、前週末の調整で魅力的な水 準にきている。相場が落ち着いてくれば買いが入り順調になるのではないか」

◎トヨタアセットマネジメント・浜崎優シニアストラテジスト

先物6月物134円00銭-135円00銭

新発10年債利回り=1.67%-1.77%

「先週の下げ幅が大きかったので、今週は押し目買いが入りながらも、値 動きの荒い展開。インフレ懸念が残り、上値は重い。足元の相場下落は、3月 まで利下げを織り込む格好でミニバブルのようなものを形成したことの反動と、 インフレ懸念とが重なったため。チャートをみると、じりじりと金利が低下し てきたのが急上昇したので、調整は長期、なおかつ大幅になる可能性が高い」

◎岡三証券経済調査部・坂東明継シニアエコノミスト

先物6月物133円90銭-135円00銭

新発10年債利回り=1.66%-1.78%

「軟調。足元の金利は水準的に見て、さすがに行き過ぎとみている。実際 に相場が押し目をつける場面では買いが入ってくる。しかし、先週末のように 持ち高整理やヘッジ売りなどが先物に集中すると下げが止まらず、10年債もつ られて売り込まれるリスクは残る。世界的なインフレ懸念が意識されているの で、週末のCPI発表は要注意。入札への不安からヘッジ売りも出そうだ」

--共同取材:池田祐美、宋泰允、船曳三郎 Editor:Kazu Hirano, Tetsuzo Ushiroyama

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