エプソン:ディスプレー事業の生産拠点を縮小-社長に碓井氏を抜擢

セイコーエプソンは30日、赤字に苦しむ 携帯電話向けなど中小型液晶ディスプレー事業について、生産拠点を縮小し、人 員の配置転換も進めると発表した。同時に最年少取締役の碓井稔常務(53)が社 長に昇格する首脳人事も発表、新製品開発への体制を整える。

発表資料によると、中小型ディスプレーの生産では、フィリピンの後工程拠 点を今期(2009年3月期)に閉鎖。中国深センの加工契約会社との委託契約も 今期終了する。国内では前工程の岐阜事業所の製造ラインの生産を来期(10年 3月期)に中止する。前期(08年3月期)に2600人だった国内生産拠点の人員 は、成長分野への配置転換で11年3月期に1500人に、海外は同1万2000人か ら4000人体制とする。

これらの措置などで、従来6カ所あった同ディスプレーの生産拠点は2カ所 に絞る。国内は鳥取事業所に製造機能を集約、海外は中国・蘇州を後工程の拠点 として強化する。調査会社ディスプレイサーチによると、エプソンは携帯電話向 け薄型パネルで世界3位(金額ベース)。しかし、競争激化による価格下落など でディスプレーなど電子デバイス事業は今期4期連続の営業赤字の見通しだ。

碓井氏は6月25日の株主総会終了後の取締役会で正式に社長に就任する予 定。05年4月に社長に就任した花岡清二氏は代表権のある会長に、草間三郎会 長は相談役に就く。

驚きのある商品を-碓井氏

碓井氏は、インクジェットプリンターで「マイクロピエゾ」と呼ばれるエプ ソンの独自技術の生みの親。近年は生産技術開発本部と研究開発本部を指揮して きた。同日都内で会見した花岡氏は交代のタイミングについて「改革は道半ばだ が、方向感は見えてきた」と説明。碓井氏については「技術と商品を語らせたら エプソンで右に出る者はいない。次の世代を切り開く観点で新しい技術を育てる には適任」と評した。

碓井氏は、これまで一般消費者向けに事業が偏りすぎた点を反省点として挙 げ、産業用分野にも事業を展開、「驚きをもって迎えられるような商品を出して いきたい」と抱負を語った。

同社は同時に今期(2009年3月期)の連結純利益が前期比62%増の310億 円になる見通しだと発表した。前期に比べて税負担が減るのが主因。純利益はブ ルームバーグ・データによるアナリスト14人の予想中央値である331億円をや や下回った。会社予想の今期売上高は同3.5%減の1兆3000億円、営業利益は 同5.9%増の610億円。

今期は円高が圧迫

東証で会見した久保田健二常務によると、情報機器事業では前期1500万台 だったインクジェットプリンターの販売数量は今期1600万台以上を目指すが、 円高が収益を圧迫する。為替レートは1ドル=95円(前期は114円)、1ユー ロ=155円(同162円)を予想している。一方で、構造改革と高付加価値製品の 販売増で、ディスプレーなど電子デバイス営業損失は前期の171億円から110億 円に縮小する見通し。

前期(08年3月期)連結純損益は191億円の黒字(07年3月期は71億円の 赤字)だった。インクジェットプリンターで低価格機種が増加したうえ、ディス プレーの数量減で売上高は同4.8%減ったが、営業利益は前の期比14%増えた。 アモルファスTFT(薄膜トランジスタ)液晶の固定費削減効果で電子デバイス 事業の営業損失が縮小した。

●碓井稔(うすい・みのる)氏:1955年生まれ、79年東大工卒、同年信州 精器(現セイコーエプソン)入社。02年取締役、07年常務。長野県出身、53 歳。

エプソン株の終値は前営業日比65円(2.4%)高の2810円。

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