日銀展望リポート:緩やかな成長予想も「不確実性極めて高い」(6)

日本銀行は30日午後、白川方明総裁の下で 初となる経済・物価情勢の展望(展望リポート)を公表した。日本経済は2008 年度から09 年度にかけて、おおむね1%台半ばから後半とみられる潜在成長率 並みの「緩やかな成長を続ける可能性が高い」としながらも、「不確実性が極め て高い」と指摘。金融政策については「あらかじめ特定の方向性を持つことは 適当ではない」として、「機動的に金融政策運営を行っていく」と表明した。

実質GDP(国内総生産)成長率の政策委員の大勢見通しは、08年度がプ ラス1.4%-プラス1.6%、中央値プラス1.5%、09年度はプラス1.6%-プラ ス1.8%、中央値プラス1.7%だった。生鮮食品を除く消費者物価指数(コアC PI)前年比上昇率は08年度がプラス0.9%-プラス1.1%、中央値プラス1.1%。 09年度がプラス0.8%-プラス1.0%、中央値プラス1.0%だった。

金融政策運営は「経済・物価の見通しとその蓋然(がいぜん)性、上下 両方向のリスク要因を丹念に点検しながら、それらに応じて機動的に金融政 策運営を行っていく」と指摘。従来の「経済・物価情勢の改善の度合いに応 じたペースで徐々に金利水準の調整を行う」との文言は削除した。

景気には下振れリスク

日銀は4月と10月の年2回、展望リポートで先行きの経済・物価の標準的 な見通しとリスクシナリオを示す。予測値は政策委員(現在2人欠員で7人) の見通しから最大値と最小値を1個ずつ除いた「大勢見通し」と、高低順に並 べて真ん中にある「中央値」を公表している。1月と7月の決定会合で見通し に比べて上振れないし下振れが生じてないか点検し、金融経済月報で公表する。

展望リポートは09年度にかけての景気について「海外経済や国際金融資本 市場をめぐる不確実性、エネルギー・原材料価格高の影響など景気の下振れリ スクがある」と指摘。「この先、下振れリスクが薄れ、物価安定の下での持続的 な成長を続ける見通しの蓋然性が高まるのか、あるいは、下振れリスクが顕現 化する蓋然性が高まるのか、よく見極めていく必要がある」としている。

日銀がこれまで主張してきた「生産・所得・支出の好循環メカニズム」に ついては、今回の展望リポートでは触れられなかった。白川方明総裁は同日の 定例会見で、好循環メカニズムは「足元で弱まっている」と指摘。「海外経済や 国際金融資本市場をめぐる不確実性、エネルギー・原材料価格高の影響など、 景気の下振れリスクに最も注意する必要がある」と述べた。

新たにリスクバランス・チャートを公表

日銀はまた、「経済・物価を取り巻く不確実性が従来以上に高い」(日銀) ことを踏まえて、今回の展望リポートで従来の政策委員の見通しに加えて、各 政策委員が上振れまたは下振れる可能性について想定した確率分布を集計した 「リスクバランス・チャート」を公表した。

それによると、08年度の実質GDP分布は下方向に偏っており、委員は上 方リスクに比べて下方リスクが高いと考えていることが示された。09年度は上 下の分布はほぼ均衡しており、委員は下振れと同様、上振れの可能性もあると 考えていることが示唆された。08年度より09年度の方が分布の裾野が広くなっ ており、時間の経過とともに不確実性が高くなることが示されている。

展望リポートはコアCPIについては「需給ギャップがおおむね横ばい圏 内で推移する中、石油製品や食料品の価格上昇テンポを反映して、08年度央ま では1%台前半で推移し、その後はやや低下するとみられる」と指摘。「08年度 は前回見通し対比で上振れて1%程度、09年度も1%程度の伸び率となる」と 予想した。リスクバランス・チャートでは08年度、09年度ともにやや下方に偏 っており、08年度より09年度の方が分布の裾野が広くなっている。

上振れ、下振れ要因

展望リポートは経済情勢の上振れ、下振れ要因としては、①海外経済や国 際金融資本市場の動向②エネルギー・原材料価格の動向③企業の成長期待の動 向④緩和的な金融環境が続く下で、金融・経済活動の振幅が大きくなる可能性 -を指摘。

特に米国経済については「住宅市場の調整や金融資本市場の動揺がより深 く、長くなる場合には、景気は下振れる可能性がある」として、「この場合、貿 易取引や国際金融資本市場等を通じて、その影響が他地域に波及し、世界経済 全体としても下振れるリスクがある」としている。

また、国際商品市況が想定以上に上昇した場合には「各国でインフレ圧力 の高まりにつながるリスクがあり、その後の景気下振れ要因となる恐れもある」 と指摘。「日本にとっては、海外への所得流出が増加することにもなり、企業や 家計の支出活動にマイナスの影響を及ぼす可能性がある」としている。

物価安定の範囲は変わらず

展望リポートは物価情勢についても上振れ要因を指摘。「消費者の購入頻度 の高い財・サービスの価格上昇などを背景に、消費者のインフレ予想はさらに 高まる可能性がある」ほか、「企業においても、原材料価格の上昇を製品価格に 転嫁する動きが広範化する可能性がある」としている。

毎年見直しを行う「中長期的な物価安定の理解」は、「消費者物価指数の前 年比0-2%程度の範囲内にあり、中心値は大勢としておおむね1%前後で分 散している」として従来の考え方を踏襲した。福井俊彦前総裁、武藤敏郎前副 総裁、岩田一政前副総裁が退任し、現在の政策委員会は白川方明総裁、西村清 彦副総裁と5人の審議委員から成る7人で、副総裁と審議委員1人が欠員とな っている。顔触れは入れ替わったが、物価安定の範囲は据え置かれた。

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見通しは次の通り(対前年度比、%。<>は政策委員見通しの中央値)

                    【政策委員の『大勢』の見通し】
                  実質GDP      国内企業物価指数    コアCPI
【2008年度】     +1.4~+1.6      +2.4~+2.8      +0.9~+1.1
                   <+1.5>         <+2.5>         <+1.1>

10月時点の見通し +1.9~+2.3      +0.9~+1.2      +0.2~+0.4
                   <+2.1>         <+1.0>         <+0.4>

【2009年度】     +1.6~+1.8      +1.3~+1.8      +0.8~+1.0
                   <+1.7>         <+1.5>        <+1.0>

                    【政策委員の『全員』の見通し】
                  実質GDP      国内企業物価指数    コアCPI
【2008年度】     +1.4~+1.8      +2.3~+2.9      +0.9~+1.2

10月時点の見通し +1.9~+2.4      +0.8~+1.5      +0.2~+0.5

【2009年度】     +1.5~+1.9      +1.3~+1.9      +0.8~+1.1

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--共同取材:亀山律子 Editor: Hitoshi Ozawa,Masaru Aoki

参考画面: 記事に関する記者への問い合わせ先: 東京 日高正裕 Masahiro Hidaka +81-3-3279-2894 mhidaka@bloomberg.net 記事に関するエディターへの問い合わせ先: 東京 大久保義人 Yoshito Okubo +81-3-3201-3651 yokubo1@bloomberg.net

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