バーナンキFRB議長はボルカー氏に続け-70年代の教訓、生かす必要

バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB) 議長はアーサー・F・バーンズ元FRB議長のような印象を残したくなければ、も っとポール・ボルカー元FRB議長のように振る舞う必要があるかもしれない。

ボルカー氏は9日、ニューヨークのエコノミック・クラブでの講演で、原油 や食品価格の急上昇を挙げ、「現在と1970年代初めには類似している点がある」 と指摘。「リセッション(景気後退)の恐れが若干あり、原油相場が急騰し、ド ルが非常に弱かった」と述べた。70年代前半はバーンズ議長(当時)がインフ レを定着させてしまった時期だ。

ボルカーFRB議長(当時)は引き継いだ高いインフレ率を抑制させるため、 80年にフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を20%に引き上げ、大恐慌以 来の大幅な景気悪化をもたらした。ボルカー氏の功績を無駄にしないために、バ ーナンキ議長は景気てこ入れに向けた総力的な取り組みを中断し、物価上昇圧力 への対策にもっと目を向け始めることが必要なようだ。

米連邦準備制度の歴史を研究するカーネギー・メロン大学のアラン・メルツ ァー教授は「最終的に大きなリセッション(景気後退)を招きたくなければ、小 さなリセッションが起こるリスクを取ることを余儀なくされる」と指摘する。

今週は米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。バーナンキ議長に はボルカー氏になかった大きな武器がある。それは、米金融当局がインフレ抑制 に向けて何か対策を講じると米国人の大部分がなお信じていることだ。

インフレ期待

ロイターとミシガン大学の今月の調査によると、向こう5-10年のインフ レ期待は平均で3.2%だった。ボルカー氏がFRB議長に就任して7カ月後に 当たる80年2月時点では、長期のインフレ期待は9.7%だった。ボルカー議長 の下で80-85年にFRB理事を務めたライル・グラムリー氏は「足元の状況は 当時と非常に異なっている」と語り、「米国民は米金融当局を信頼している」と 指摘する。

バーナンキ議長は、インフレ期待の安定を当然視することはできないし、物 価上昇圧力を抑える必要があることを理解している。このため米金融当局は、今 週0.25ポイントの利下げを実施した後に金融緩和を中断するとの見方が、FF 金利先物市場で広がっている。

一部のエコノミストは、米金融当局がすでに利下げをし過ぎたとみている。 FF金利誘導目標は昨年9月以来で3ポイント引き下げられ現在は2.25%。メ ルツァー教授はインフレ抑制には同目標が現状より少なくとも1-1.5ポイン ト高い水準であるべきだと主張する。

一部の政策当局者すら懸念している。過去2回の利下げで異議を唱えた米ダ ラス連銀のフィッシャー総裁は、食品やエネルギー価格が引き続き上昇している ことが、消費者のインフレ期待に影響を及ぼし始めているとみている。

ハーバード大学のジェフリー・フランケル教授は、金融緩和が商品相場の急 上昇につながっている可能性があると指摘する。低金利で企業の資金調達コスト は低下するが、その一方で投資家は低利回りの債券から商品に資金をシフトする ことを促される。「投機的なバブルが進んでいる」と同教授はみる。

ドル安

米利下げはドル安ももたらしている。ドルはユーロに対して年初来で7%下 落。コロンビア大学の経済学教授でノーベル賞受賞者のエドムンド・フェルプス 氏は、ドル安によって米企業は値上げしやすくなると指摘する。

70年代も同じ状況だった。当時のニクソン米大統領が71年にドルと金と の交換を停止したことを受け、ドルの価値が下がった。石油輸出国機構(OPE C)の減産を背景に73-75年に原油相場は4倍に上昇し、商品相場も上昇した。

70-78年にFRB議長を務めたバーンズ氏は10%強に利上げすることで インフレ圧力に対応した。しかし米経済は73年11月に1年4カ月に及ぶリセ ッションに入り、失業率はほぼ2倍の9%に悪化した。バーンズ氏は迅速に利下 げしたことから、インフレ対策は一時的な効果にとどまった。74年12月に

12.3%だったインフレ率は76年に4.9%に下がったが、ボルカー氏がFRB 議長に就任した5カ月目に当たる79年12月までに13.3%に上昇している。

DMJアドバイザーズの最高経営責任者(CEO)で米金融当局についての 著書のあるデービッド・ジョーンズ氏は「70年代の教訓は、何よりも米金融当 局がインフレ期待を安定させなければならないことだ」と語った。

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