米JPモルガンのダイモンCEO、経営統合手法はまるで「空挺師団長」

米銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ ダイモン最高経営責任者(CEO)はマホガニーの机の下に置かれた青いプラス チックのリサイクル箱の中を探ると、41ページの書類を引き抜いた。「JPモル ガン・チェースの極秘資料」と記されている。

ダイモンCEO(52)はこの資料に、3月半ばに買収を決めた米証券ベア ー・スターンズとの統合状況を毎日、更新している。統合作業には5000人以上 が従事しているという。ページをめくると、リスク分析から規制関連に至るまで、 さまざまな分野の進展の詳細を示す文章や数字が並ぶ。統合担当者はベアー・ス ターンズの抱える不動産60カ所以上を訪れた。

「まるで第101空挺(くうてい)師団だ」とダイモンCEOは語り、にや りとする。「戦車や戦闘機、必需品、後方支援に機関銃はそろった。私が案件を やり遂げる能力というのは、そういうことだ」と述べた。

ダイモンCEOの能力を疑う者はいない。同氏はハーバード経営大学院卒業 から間もない26歳の時から、企業買収や合併を繰り返して現在のシティグルー プを作り上げたサンディ・ワイル氏の下で働いた経験がある。お手の物なのだ。

ベアー・スターンズの買収がウォール街のみならず、大きなニュースとなっ た一方で、ダイモンCEOの戦略をよりはっきりとらえたターゲットは別にあっ た。事情に詳しい関係者によれば、ベアー・スターンズ買収に備えていた3月の 同じ週末、遠く離れたシアトルではJPモルガンの別のチームが米S&L(貯 蓄・貸付組合)最大手のワシントン・ミューチュアルの資産を精査していた。同 社を買収する合意には至らなかったものの、ダイモンCEOのリテール(小口) 銀行業務拡大の意志は揺らぎそうにない。

危機に見舞われたウォール街でいまや伝説的な人物に上りつめたダイモン 氏だが、矛盾しているようにみえるのは、同氏の強みはJPモルガンの証券引き 受けやトレーディングではなく、支店での銀行業務やクレジットカードを主体と するリテールにあるということだ。

戦略に変更なし

ダイモンCEOは米住宅市場が崩壊するなかにあっても、消費者をターゲッ トとする戦略を変更しない。シカゴのバンク・ワンを4年にわたって経営した経 験がある同氏は、支店を中心とする銀行業務に情熱を持ち、顧客からの預金を愛 する。預金者は、クレジットカードや資産管理などのサービスを利用するかもし れない。預金として流れ込む資金は、会社全体が持つ流動性を高めてくれるのだ。

ヒルタウンゼンド・キャピタルのパートナー、ゲーリー・タウンゼンド氏は 「JPモルガンは、いまだに昔ながらのやり方で預金を集めることに非常に関心 がある」と指摘する。「連邦政府が保証する預金は現在展開中の世界では大きな 強みだ。他の資金調達源があっという間に消えてしまうのを誰もが見てきた」と 語った。

JPモルガンが2260支店を獲得するはずだったワシントン・ミューチュア ルの買収は、同社が企業連合から計70億ドル(約7300億円)の出資を受けて 存続が可能となり、実現はしなかった。

ダイモンCEOは、支店銀行業務は同氏の戦略上重要だと話す。リテールの 支店こそが、チェースとJPモルガンのブランド力を高め、さまざまなタイプの 顧客を集めることにつながるのだという。景気動向にかかわらず米国の人口は 増えるから、リセッション(景気後退)を利用して支店網を拡充すると同氏は 主張する。

米西部で特に弱いチェースのブランドは、ワシントン・ミューチュアルを買 収できれば、解決できるはずだった。クレジットサイツのアナリスト、デービッ ド・ヘンドラー氏は、JPモルガンがアトランタを拠点とするサントラスト・バ ンクスやノースカロライナ州のBB&T、PNCファイナンシャル・サービシ ズ・グループの買収に関心がある可能性を指摘する。

どの企業を買収しようと、ダイモンCEOはベアー・スターンズに対してと 同様、占領軍のようなやり方で対応していくだろう。UBSのアナリスト、グレ ン・ショアー氏は、すべての詳細を把握することで自身の経営する銀行が深刻な 問題に見舞われるのを防いできたダイモン氏の実績を指摘。「ダイモン氏は事実 上の最高財務責任者であり、すべての事業の責任者だ」と語った。

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