【経済コラム】日本改造に足りない日本人が苦手な英語-W・ペセック

日本は景気拡大のためならほとんど金に糸 目を付けない。公的債務を膨張させ、ゼロ金利政策を実施し、金融機関などを救 済してきた。しかし、金を出すだけじゃだめだ。口を出すときが来た。

東京は世界の金融センター目指してインフラ整備を急ぎ、ヘッジファンドや 金融機関を呼び込むため、ロンドンのカナリーワーフのような再開発地域を検討 している。それ自体は良いことだが、一つの重要な要素が抜けている。英語だ。

経済産業研究所(RIETI)のシニアフェロー、関志雄氏(肩書は当時) は、2002年5月に発表した「イングリッシュ(Engrish)の経済学」と題した 論文で、急速にグローバル化する世界で日本が最前線に立ち続けるため、英語力 を高める必要性を強調した。あれから6年。日本はいまだに「英語力で引け」を 取っている。国の経済力や頻繁な日本人の海外渡航に比較して、英語を流ちょう に操る能力は驚くほど低い。

個人的にはこの問題を取り上げることに多少の不安を感じる。日本人の英語 学習の必要性を議論するのは、米国の文化的覇権主義に映りかねないからだ。来 日して6年の私自身も日本語学習に苦労しており、そんな私が他人の言語能力を 判断できるのかとも思うし、そもそも、われわれ米国人は外国語習得に熱心だと の評判を持たない。

それでも、良くも悪くも、英語は金融やビジネス、科学、インターネットに おける共通言語だ。英語力向上の必要性に逆らう時間が長いほど、可能性を制限 してしまう結果となる。

1つの共通言語

アジアパシフィック・テクノロジー・ネットワークの責任者、ルイス・ター ナー氏は「世界でも本物の金融センターはすべての国籍に加え、会計や法律、情 報技術、取引、資産精査など、さまざまな専門領域から人材を集めねばならない が、これらの人材をまとめるには1つの共通言語が必要で、それは好むと好まざ るとにかかわらず、英語だ」と語る。アジアではいずれ中国語が第2言語となる 可能性はあるものの、現時点では英語が中心だと、同氏は付け加えた。

第2言語としての英語のテスト、TOEFLを2007年に受けた日本人の点 数は中国やインド、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、ネパール、韓国、 ベトナムを下回った。北朝鮮にさえ、及ばないありさまだった。

日本は正しい方向には動いている。文部科学省が近年、英語教育の改善に取 り組んでいるからだ。中学からではなく、小学生から英語教育に取り組む動きも 見られる。ただ、もっと大胆な行動が必要だ。もう無駄にできる時間はない。日 本に非常に勢いがあって商売目的の外国人が押し寄せた1980年代ならまだし も、今や日本企業は国際社会を相手にしているのだ。

スイスのローザンヌにあるビジネススクール、IMDのジャンピエール・レ ーマン教授は「日本の存在感のなさは驚くほどだ。国際的あるいは欧米の会議だ けではなく、アジアの多くの政策や学問の場でもそうだ。英語を話せないという のが唯一の原因ではないが、重要な要素ではある」と話す。

企業には重いコストがのしかかる。従業員に英語教育を施せば、費用がかか り、その時間の生産性は落ちる。主に言語能力だけで人材を雇えば、本来求めら れる能力を持った候補を見逃すことにもつながる可能性がある。

反発と妥協

国内では、英語をめぐる議論にこれまで一部から反発の声もある。中心にあ る懸念はグローバリゼーションが文化や伝統に及んでいるという点だ。日本語は ひらがなやカタカナ、漢字を合わせ持つなど、複雑な言語だ。識字率が高い日本 で、英語にあまりにも重点を置けば、未来の世代の日本語能力を低下させること につながるとの懸念がある。

だが、ここでは適切な妥協点を見いだす必要がある。英語力向上に伝統や文 化を犠牲にする必要はない。現実は、中国とインドの台頭で、日本には一つしか 選択肢が残されていないということだ。英語力向上か、急成長する新興国に置い てきぼりをくうかだ。

英語がすべてではないし、日本の長期的な問題を突然解決してくれる魔法の つえでもない。キャノンベリー・グループ(ロンドン)のプレジデント、フィリ ッパ・マルムグレン氏はむしろ、日本の金融センター化を妨げているのは税制だ とみる。それでも英語はデジタル時代の東京の競争力を一層高めてくれる要因だ ろう。マルムグレン氏は「言葉の問題は障害だが、克服できる」と語る。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニスト です。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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