フィリピンの食糧不足:貧困層で深刻化-1日1食で子供の食べ物確保

マーナ・ラックダオ氏(53)は以前、1日 に2食取っていた。いまでは1食だけ取り、残りの食べ物は2人の孫たちに与え る。

ラックダオ氏は、マニラのサンロケにある貧困層が住む地域で、広さ70平 方フィート(約6.3平方メートル)の小屋で夫と2人の成人した子供、孫たちと ともに住んでいる。コメ価格が過去1年間で41%高騰したため、1日に3食取 れるのは一家の若者たちだけになった。

ラックダオ氏は枕カバーを作って隣人たちに売り、家計の足しにしている。 一家の月収は9000ペソ(約2万2100円)。同氏は「朝はコーヒーだけ飲んで正 午に昼食を食べる。それがその日の最初で最後の食事になる」と語る。

スクラップの金属やプラスチックで屋根をふいた木造小屋に約8000世帯が 住むサンロケでは、世界的な食糧需要の拡大、商品市場への投機、燃料価格の上 昇といった現状が交錯している。

コメ輸入国による国内需要の確保が困難な状況となるなか、中国やベトナム が輸出を抑制するとの懸念が高まったことから、コメ先物相場は先週、少なくと も過去7年で最大の週間上昇率を示した。世界最大のコメ輸入国であるフィリピ ンは17日に実施したコメの入札で、目標の3分の2の量しか確保できなかった。

フィリピンの農業統計局によると、マニラの一般市場のコメ価格は先週、1 キロ当たり34ペソと、前年同期の24.07ペソを上回った。英ロイヤル・バン ク・オブ・スコットランド・グループ (RBS)のアナリストらが15日に発表 したリポートによると、フィリピンの国家食糧局が貧困層に対し1キロ当たり

18.25ペソでコメを販売しているが、これは消費の10%を占めるにすぎない。

国民が空腹にさらされていることは、アロヨ政権のさらなる弱体化につなが る可能性がある。フィリピンでは、1986年と2001年に国民の反政府運動が政権 の崩壊につながった。世論調査会社ソーシャル・ウェザー・ステーションズによ ると、アロヨ大統領の支持率は3四半期連続で低下し、3月には27%まで落ち 込んだ。

世界銀行

米カリフォルニア大学バークレー校の客員研究員、ラージャ・パテル氏は、 フィリピン政府は穀物の備蓄を中止し世界市場で購入するべきであるとする世界 銀行の提案に応じるべきではなかったと指摘する。

世界銀行は07年6月に発表したリポートで、フィリピンは穀物の備蓄量を 減らし、在庫を「価格の安定」ではなく「災害の軽減や安全策」のために利用す るべきであるとの見方を示した。

パテル氏は「フィリピン政府は、穀物の備蓄を阻止する政策を適用するため、 さまざまな強硬策を取ってきた」と指摘する。

国家食糧局のビック・ジャリナ副局長は、フィリピン政府は少なくとも15 日分の供給を確保していると主張し、パテル氏の批判に反論する。フィリピンの 1日当たりのコメの消費量は約3万3000トンとなっている。

サンロケは国家食糧局のコメ倉庫から4キロの場所にある。1995年のコメ 不足の際には一部の住民が倉庫に押し掛け、職員らに穀物を売るよう迫った。緊 張は再び高まっている。

ラックダオ氏は「国家食糧局のコメなどこの辺では見たことがない。孫たち に食事を与えることができなくなれば、95年の時のように迷わず高いフェンス を乗り越え、倉庫に押し入るだろう」と語った。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE