日韓首脳:EPA交渉再開へ6月に実務者協議、対北朝鮮で連携(6)

福田康夫首相は21日午前、来日している韓 国の李明博(イ・ミョンバク)大統領と首相官邸で会談し、3年余にわたり中断して いる日本、韓国の自由貿易協定(FTA)を柱とする経済連携協定(EPA)交渉 再開に向けた実務者協議を6月中に開催することで合意した。しかし、韓国側に はEPA締結で対日貿易赤字がさらに拡大することへの懸念があり、協議を通じ てこうした問題の解決を図れるかが今後の課題となりそうだ。

会談後、両首脳が記者会見し、合意内容を「日韓共同プレス発表」として文 書で公表した。日韓EPA交渉は2003年12月に開始されたが、盧武鉉(ノ・ムヒ ョン)前大統領政権下の両国政治関係の冷え込みや、工業製品や農水産物の 関税撤廃などをめぐる立場の違いなどから2004年11月以降中断している。日 本外務省幹部によると、両首脳が合意した実務者協議は、2月の会談で一致し たEPA交渉再開に向けた「準備会合」にあたり、課長レベルで実施するという。

李大統領は記者会見で、日本との経済関係ついて「部分的にかなりの格差 があることも事実だ。格差をそのままにして進めば、より多くの格差ができてしまう という懸念もある」と述べ、このままEPAを締結することで韓国の対日貿易赤字 が拡大することへの警戒感を示した。

その上で、「わたしはFTA問題について交渉する前に、両国がウィン・ウィン する、互いの役に立つ、互いのためになる方向にしていくべきだと思う。この問 題については実務レベルで話を始めてもいいと思う」と述べ、実務者協議を通じ て日本側に問題解決を促す考えもにじませた。

三菱総合研究所の杉浦光主任研究員は21日放送されたブルームバーグテ レビジョンの番組で、日韓EPA交渉について「韓国側は日本から(工業製品の) 輸入が増えるのを懸念している。日韓のEPAを含めて直接投資の拡大、技術 移転の拡大というものをうまく組み合わせていかないと韓国にとってのデメリット はなかなか克服できない」と述べた

今回の首脳会談ではこのほか、朝鮮半島の非核化に向け、一層緊密に連携 していくことも確認。08年中に日中韓の3カ国首脳会談を日本で開催することで も合意した。

福田首相:日韓の経済関係緊密化にEPAは重要

日本外務省の資料によると、日韓の07年の貿易額は827億ドルで、お互い にとって中国、米国に次ぐ第3位の貿易相手国。ただ、韓国は主力輸出品であ る半導体などの生産のため、日本の中間財(部品、素材)と資本財(製造機械) に依存しており、07年は速報値で298億ドルと過去最大に膨らんだ対日貿易 赤字に悩んでいる。

福田首相は会見で、「日韓の経済関係を一層、緊密なものにするために、E PAが重要な役割を果たすという点で大統領と一致した」と指摘した上で、「韓国 側が日本の投資拡大や産業協力に強い関心を持っていることを理解している。 日韓EPAに関して、進展が得られれば、日韓の企業間協力が推進される環境 が醸成される」と述べ、韓国側の意向も踏まえ、李大統領との間で合意した実務 者協議に精力的に取り組む考えを示した。

共同プレス発表によると、両首脳は政府や業界間の対話と協力の強化を通 じ、経済関係を一層強化していく決意を確認。李大統領は日本企業への対韓 投資を促進するため、「部品・素材専用工業団地」の設置を検討する考えを表 明した。李大統領は会見で、この点について、「われわれは両国の経済協力を バランスよく拡大していくため、部品、素材産業分野の交流の増大方法も検討し た」と述べ、日韓の貿易不均衡解消にはこの分野での投資や技術移転の拡大 が重要との認識を示した。

また、両首脳は原油価格高騰が世界経済に与える影響について懸念を共有 し、エネルギー安全保障政策面での協力を強化していくことが必要との認識でも 一致。青少年のワーキング・ホリデー制度の参加上限を2009年に年間7200人、 12年までに1万人に拡大することでも合意した。

シャトル外交

韓国大統領の訪日は04年12月の盧前大統領以来3年4カ月ぶり。両首脳 は李大統領が就任した2月25日に福田首相が訪韓して初会談した際、1年に 最低1回ずつ日韓首脳が相互往来する「シャトル外交」再開で合意しており、今 回の李大統領訪日はその第1回目。

盧前大統領時代は小泉純一郎元首相による靖国神社参拝などをきっかけに 冷え込んだ日韓関係だが、ビジネスマン出身で「実利外交」を掲げ、日米との関 係を重視する李大統領の誕生で急速に改善。李大統領は7月の主要国首脳会 議(北海道洞爺湖サミット)の際に開かれる気候変動問題に関する拡大会合に 参加するため再来日するほか、福田首相も08年後半に再訪韓する。

福田首相は会見で、「日韓関係を成熟したパートナーシップ関係に格上げす ることがわたしたちの仕事であるという認識を大統領と確認した」と指摘。大統領 も、日本の政治家による過去の植民地支配など歴史認識に関する発言が繰り返 し韓国側の反発を招いたことに関し、「政治家はたびたび失礼な発言をする。そ れぞれの意見をもって発言するのをいちいち敏感に対応する必要はない」と述 べた。

ただ、大統領は会見で、自民党などの保守系議員の反対で実現に至ってい ない在日韓国人の地方参政権付与について前向きな対応を福田首相に求めた ことを紹介。その上で、「歴史認識に関する問題は日本のやるべき仕事だ。その 問題によって未来に向かうことに支障をきたしてはならない。日本側もその意味 を十分に理解していただいていると思う」とも述べ、日本側にクギを刺すことも忘 れなかった。

首脳会談では、両国共通の安全保障面での課題である北朝鮮問題につい て意見交換。福田首相によると、北朝鮮による核計画に関する早期の「完全か つ正確な申告」が必要との認識で一致するとともに、拉致、核、ミサイルの問題を 包括的に解決して国交正常化を実現するとの日本政府の立場に李大統領の理 解と支持を得たという。

日本外務省幹部によると、21日の首脳会談で、李大統領から竹島(韓国名・ 独島)、靖国神社、歴史認識に関しての言及はなかったという。

--共同取材:Heejin Koo、山村敬一、君塚靖、曽宮一恵 Editor: Hitoshi Sugimoto、Kenshiro Okimoto

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