英豪リオと豪BHPのCEOの夕食会-中国主導の買収合戦の幕開けに

2007年10月、英豪系リオ・ティントのト ム・アルバネーゼ最高経営責任者(CEO)と豪BHPビリトンのマリウス・ クロッパースCEOは、ロンドンのクラリッジズ・ホテルで雑談をしていた。 2人の姿は、世界を駆け巡る外交官のようだった。

BHPはその半年前、リオに対して非公式の買収提案を行っていた。リオ はこの提案を拒否する一方、カナダのアルミニウムメーカー、アルキャンを 381億ドル(約3兆9000億円)で買収。この買収により、リオの長期債務は 19倍に増加し、収入はほぼ2倍となった。雑談をした夜、テムズ川に浮かぶ自 身の運河船について話していたアルバネーゼCEOは、クロッパースCEOが 新たな攻撃に出ようと計画していることに気付いていなかった。

BHPのチャールズ・グッドイヤー前CEOの退任を祝うホテルでの夕食 会から2週間も経たないうちに、クロッパースCEOはリオに対する敵対的買 収攻勢を開始した。リオの時価総額は現在、1660億ドルとなっている。合併を 目指すこの動きは、豪州の豊富な資源と中国の市場をめぐる世界的な鉱物供給 の争奪戦を激化させつつある。

オーストラリアン・ファウンデーション・インベストメントで60億ドル 相当を運用するマーク・フリーマン最高投資責任者(CIO)は「アジア市場 に近接しているため、豪州は極めて魅力的だ」と指摘。「金属消費は依然、増 加しており、どのグラフを見ても今後も消費が伸び続けることを示唆している。 中国の需要に対応するには、豪州は非常に重要な地域だ」との見方を示す。同 社はシドニーで取引されるリオ株の筆頭株主であり、BHPの株主としては3 位となっている。

競争の過熱

既に鉱山最大手であるBHPが買収に成功すれば、合併後の企業は業界2 位の2倍の規模を持つことになる。INB銀行が4月に発表したリポートによ ると、合併していれば、07年の売上高は843億ドル、純利益は210億ドルと試 算されている。合併後のBHPは、アジアの鉄鉱石供給の半分を占め、原料炭、 銅、アルミ生産で世界首位となる見通しだ。

商品相場が2月に付けた過去最高値に近い水準を維持するなか、BHPと リオが合併すれば、世界の金属消費国の競争が過熱するとの懸念が高まってい る。豪州が輸出する149億ドル相当の鉄鉱石のうち半分以上を消費する中国は、 今回の買収に反対している。

「旺盛な需要」

格付け会社フィッチ・レーティングスのシニアディレクター、フレデリッ ク・ギッツ氏(東京在勤)は「中国は非常に急速な成長を遂げており、原料需 要が非常に旺盛だ」と指摘。BHPによる買収提案に対しては「世界の鉄鋼業 界全体、特に中国の鉄鋼業界が大きな懸念を抱いている。中国が結果に影響を 与えたいと思う理由は理解できる」との見方を示した。

中国の国営アルミメーカー、チャイナルコは2月、米アルミ大手アルコア とともにリオの株式の9%を取得し、中国はBHPによる買収を阻止しようと する動きを見せている。BHPとリオの07年通期決算では、中国向けがBH Pの売上高の20%を、リオでは18%を、それぞれ占めた。この割合は3年前 のほぼ2倍に上る。

JPモルガン・チェースの資産運用部門で天然資源関連株60億ドル以上 を運用するイアン・ヘンダーソン氏(ロンドン在勤)は「チャイナルコは買収 を阻止するためリオ・ティントの株式を取得した。このような買収が実施され ることを望んでいない」と指摘。「鉱山業界で強い交渉能力を持つという、買 収の基本的な論理は変わっていない」との見方を示す。

「不当な扱い」

リオのアルバネーゼCEOは、合併が意味を成さないと発言することを注 意深く避けている。その代わり、買収案はリオが考える同社の企業価値に合致 していないと主張してきた。同CEOはメルボルンでのインタビューで「BH Pは安い買い物をしようとしており、リオは不当な扱いを受けている」と述べ た。

一方、BHPのクロッパースCEOは、両社は経営統合について、数十年 間にわたって協議してきたと主張する。同CEOはインタビューで「業界全体 でもリオ社内でもBHP社内でも、この合併が達成される必要があると信じな い者はいない」と述べ、「わたしは常に、両社がうまく調和すると考えてきた。 常にだ」と言明した。

BHPは、欧州や米国、豪州の規制当局から買収の承認を得る必要がある が、これらの規制当局や顧客である鉄鋼メーカーから、買収に反対される可能 性がある。日本鉄鋼連盟と欧州鉄鋼連盟(Eurofer)は既に、買収に対 して反対する姿勢を表明している。

米資産運用会社ブラックロック・インベストメント・マネジメントが運用 する資産規模153億ドル規模の「ワールド・マイニング・ファンド」のマネジ ングディレクター、イビー・ハンブロ氏は「一部の人々が期待する通りにこの 買収が実現するかどうかは依然、かなり不透明だ」と指摘。「何らかの利点は あるだろうが、双方の株主にとってどのような影響があるかという文脈で検討 される必要がある。わが社は両社に投資しているため、違う観点から今回の件 を見ている」と述べた。

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