【米経済コラム】FRBに新しい恒久的な武器を持たせよ-J・ベリー

米証券ベアー・スターンズが破たんにひん したことを受け、連邦準備制度理事会(FRB)の調査官は現在国内の大手投 資銀行で内部調査を行っている。誰に聞いても、各行は当局のこうした調査を好 意的に受け止めているようだ。

流動性が逼迫(ひっぱく)し信頼感が揺らいでいる状況では、FRBの存 在が、少なくともプライマリーディーラー(米政府証券公認ディーラー)である 投資銀行は信用に足りるとの貴重な安心感を取引相手先に与えることにつながる。

無論、調査官が投資銀行に赴いているのには理由があり、現在は商業銀行 だけでなくプライマリーディーラーに対しても公定歩合による窓口貸し出しが 可能になっていることが背景にある。

しかし、3月16日に発表したプライマリーディーラーに公定歩合での借り 入れを認める措置は、連邦準備法の条項の下で緊急措置として適用されているも のだ。バーナンキFRB議長は今月3日の上院銀行委員会での証言で、現在の危 機が徐々に収束し、終了に至れば「窓口貸し出しについては元に戻す必要があ る」と語った。

だが、議会はそうさせるべきではない。

信用市場の状態が正常化するにはかなりの時間がかかるとみられ、議会は FBR議長が「極めて重大な問題」をはらむとしたこの件について検討する時間 的猶予がある。

最後の貸し手

しかし、ベアー・スターンズの一件は多くのことを白日の下にさらした。 第一に、大手投資銀行は金融システムの中で極めて重要になっており、FRBは 最後の貸し手としての役割を果たさざるを得なかったということ。第二は、投資 銀行の本来の規制監督の中心である米証券取引委員会(SEC)は金融機関の事 業活動や安全性、健全性について監督する上で十分な専門性を持っていなかった という点だ。

ニューヨーク連銀のガイトナー総裁は3日に、FRBは投資銀行に調査官 を派遣し、「資金調達やその方法、金融市場の混乱を受けてそれを乗り切るため にどのように体質強化を図っているかについて注意深く見極めている」と述べた。 FRBは投資銀行に対し「資本の増強を図り、今回の危機をしのぐ上で体勢を強 化するよう」求めていると説明した。

今回の集中的な調査は、一時的な形をとっているが必要な規制で、幸いな ことにFRBにこうした行動を認める書籍が存在していた。

ポール・ボルカー元FRB議長は8日の講演で、FRBの一連の動きにつ いて「合法といえるぎりぎりの線で行動に出る必要があると判断し、力を示して いる。その過程で、長い間FRBに根付いてきた原則や慣行の一部を超えるこ とになった」と指摘した。

権限が必要

多くの評論家が、この発言をバーナンキ現議長に対する批判と受け止めた。 それは違う。ボルカー元議長の発言は、金融当局によるベアー・スターンズの救 済やプライマリーディーラーへの窓口貸し出しといった措置が間違いだったとの 見方を示しているのではない。元議長は、投資銀行に窓口貸し出しを行うという ことは「そうした金融機関への直接的な監督・規制の責任が伴うことを意味する。 どうすればそうした責任が混乱状態の中でのみ機能し得るのか分からない」と言 っているのだ。

その通りであり、だからこそ議会は適切に行動する必要があるのだ。

ニューヨーク連銀は16年前にプライマリーディーラー調査を打ち切り、も っぱらプライマリーディーラーが資本基準を満たしているかの審査に注力してき ており、監督責任は欠如していた。かつてのプライマリーディーラー調査には、 定期的な現場でのコンプライアンス調査が盛り込まれていた。

その調査は、FRBがプライマリーディーラーの規制・監督を担当してい ると公に信じさせることにつながっていたが、実際にはその権限を有してはいな かった。ニューヨーク連銀はその権限の獲得を目指すのではなく、1992年1月 に立ち入り調査をやめると発表した。

万能薬ではない

信用供与や難解な金融商品のディーラーとしての投資銀行の役割が急速に 拡大した過去数年、FRBにそうした権限が与えられていなかったことは残念だ。 ベアー・スターンズが破たんにひんした際、同社には店頭取引のデリバティブ (金融派生商品)に伴い何千もの取引相手が存在していた。

投資銀行の監督権限をFRBに与えることが万能薬になるわけではない。 FRBは既に、銀行持ち株会社に対してはそうした権限を有しているが、バラン スシートから切り離されたストラクチャード・インベストメント・ビークル(S IV)やコンデュイット(導管)の利用拡大を抑制する上で大した役目は果たせ なかった。

しかし、その職務についてはFRBの方がSECよりも適任だ。議会は現 在の緊急措置が終わる前に、投資銀行を監督・規制する上で必要な権限をFRB に与えるべきだ。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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