武田株は続落、米バイオベンチャー買収価額は割高、利益停滞懸念(2

医薬品世界17位の武田薬品工業の株価が 続落。「がん領域で世界のトップスリーに入る」(長谷川閑史社長)との目標 を掲げ、米バイオベンチャー大手のミレニアム・ファーマシューティカルズを 88億ドル(約8800億円)で買収すると発表した。ミレニアムの時価に53%の プレミアムを乗せたため割高との声が多いうえ、のれんの償却やインプロセス R&D(研究開発費)などが短中期的な利益を押し下げるため、売りが増えた。

この日は売り気配で取引を開始、午前9時11分ごろ前日比300円(5.6%) 安の5110円で264万株の売買が約定した。その後は買い注文も入り下げ幅を縮 小、午後1時35現在、同3.3%安の5230円。

日興コーディアル証券の山本義彦首席アナリストは、今回の買収スキーム をみて、「割高。これまでの武田薬の巧みな買収案件と比べると違和感がある」 と指摘、「長谷川社長のあせりを感じた」とも付け加えた。

メリルリンチ日本証券は10日付で武田薬の投資判断を「買い」から「売り」 に2段階引き下げたほか、KBC証券は目標株価を7800円から6500円に引き 下げた。投資判断は「買い」。

買収インパクトは5月14日に大枠を提示

10日夜に開かれた記者会見と投資家説明会で、長谷川社長は買収インパク トについて、「現在、米国の会計監査会社と最終的な詰めを進めている。5月 14日の決算発表時にはガイダンスのような形で、ある程度示したい」と述べた。

リーマン・ブラザーズ証券の依田俊英シニアアナリストは、ミレニアムの 新薬将来価値を含めた正味現在価値(NPV)が44億ドルと指摘、のれん60 億ドル、20年償却と仮定すると、年間負担額は300億円と試算する。依田氏は 「EPS(1株利益)へのインパクトは8%。買収で製品ラインアップが拡充 し、2兆円近い流動資産の有効活用ともなる」(11日付の投資家向けリポート) とし、今回の経営決断を評価している。

野村証券金融経済研究所の漆原良一シニアアナリストも、09年3月期の連 結営業利益が2000億円台に入ったとしても、あくまで表面上の利益と指摘、「短 期業績のへこみより、資金を有効的に使うステージに来た」点を評価する。会 社側の08年3月期営業利益見通しは4850億円。

がん領域に本格進出

ゲノム創薬で先行する米ミレニアムの買収は、「武田薬の『INDエンジ ン』(新薬開発の流れ)を増強するディール」(ジャパン・アドバイザリー・ リミテッドの近江光雄氏)だ。前立腺がん・子宮内膜症治療薬「ルプロン」を 手放し、多発性骨髄がん治療薬「ベルケード」を手に入れているという観点か らも、「がん領域を強化するという戦略に則ったディール」とカリヨン証券の 桜井満也アナリストはみる。

10日夜の記者会見に衛星中継を通じてコメントを寄せたミレニアムのデボ ラ・ダンサイア最高経営責任者(CEO)は、ベルケードの2007年の世界売上 高を8億ドルと紹介、「近い将来10億ドルを超える可能性が高い」とした。

北米で4000人超の医薬情報担当者(MR)を抱える武田薬はこれまで糖尿 病治療薬「アクトス」など生活習慣病領域に特化したMR活動を展開してきた。 今回、ミレニアムが武田薬グループの傘下に入ることで専門医領域に進出でき るほか、「ボストンという好立地を生かし、先端情報や人材プールにアクセス しやすくなる」(長谷川社長)ことも、同社の研究開発力向上につながる。

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