IMF:金融混乱の損失1兆ドルに接近か、「長期化リスク」-報告(2)

国際通貨基金(IMF)は8日、年次の世 界金融安定報告を発表し、米国の住宅ローン危機に端を発した金融混乱に伴う 金融機関の損失総額は1兆ドル(約102兆円)に迫る可能性があるとの見通し を示し、その危機の広がりを予測する上で、「集団的な失敗があった」と指摘 した。

IMFは米住宅価格の下落と返済遅延の増加により、住宅ローン市場の損 失が5650億ドルに膨らむ可能性があるとの認識を示した。商業用不動産と個 人・法人向けローン関連証券を含む損失総額は9450億ドルに達する可能性も あると指摘した。

世界の金融機関はこれまでに2320億ドルの評価損を計上しており、IM Fの見通しは信用収縮の最悪期が終わっていない可能性があることを示唆して いる。当局は金融機関の財務状況の悪化が経済成長の足かせになることを懸念 しており、企業に資本強化を促している。

IMFの報告書は「現在の混乱は単なる流動性不足ではなく、バランスシ ートの深刻な悪化と弱い資本力を反映しており、その影響は幅広く、深く、し かも長引く可能性が高い」と記述。「資金繰りと信頼感の深刻な危機が長期に わたり続くリスクがある」と警告した。

モルガン・スタンレーのジョン・マック最高経営責任者(CEO)は8日 の株主総会で、信用危機が「あと数四半期」続くとの見通しを示した。

IMFは1年前、サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン危機 の影響は限定的なものにとどまるとの見通しを示していたが、今回の報告では 甘い規制と仕組み証券のリスクに対する理解の欠如を危機の原因に挙げている。

IMFの金融・資本市場部門責任者、ハイメ・カルアナ氏はワシントンで の記者会見で、IMFが危機を過小評価していた点について説明を求められ、 「今回の危機が非常に複雑であるため、分析がやや控えめになった」と答えた。

評価損総額に対するIMFの見通しは、ほかの予想を上回っている。UB Sのアナリストは2月に6000億ドルと予想した。

緊急時の行動計画

IMFは金融革新がいくらかは利益をもたらしたとしながらも、「過去8 カ月の出来事はこの利益に代償が伴うことも示した」と指摘。同時に各国政府 に対し、革新を過度に締め付けたり、現在の信用収縮の影響を拡大させるよう な変革など性急な規制強化に動かないよう求めた。

金融機関に対しては情報開示を高め、妥当な推定額がまとまり次第、評価 損を計上するよう促した。さらに、資本の適正に対する監督強化も求め、当局 は一段の混乱に備えるべきであるとの考えを明らかにした。

IMFは「評価損が壊滅的な強さを持って実体経済に重大な悪影響を及ぼ した場合、大規模な資産劣化に対応するため、当局は緊急時の行動計画を用意 すべきだ」と主張。「政策当局は問題を抱えた金融機関の損害に早急に対処す る用意もしておく必要がある」と付け加えた。

高いリスク

報告書は世界の「金融安定に対するリスクは依然高い」としながらも、新 興市場経済は「全般的に耐性を保っている」との見方を示した。ただ、「特に サブプライム危機や類似の衝撃が原因でドルに下落圧力が強まった場合、新興 市場国の一部では流動性が高まり、インフレ圧力が強まる可能性がある」と警 告した。

昨年11月に就任したストロスカーンIMF専務理事はサブプライム問題 が世界の金融システムに与えるリスクに対し、IMFが注意喚起を怠ったこと を認めている。

IMFは2007年4月の報告書で、「深刻な連鎖破たんの脅威」について、 リスクはほとんどないと言明。「投資銀行の試算では、全米の住宅価格が過去 に例のないぐらい大幅に下落しても、サブプライム関連証券への投資家はほと んど損失を被らない」と記述していた。

過去1年に少なくとも14社の金融機関が第三者からの出資を受け入れて いる。

IMFは「銀行や金融保証会社(モノライン)、政府系機関、ヘッジファ ンドなど様々な参加者がとったレバレッジの規模と、その持ち高が無秩序に解 消されるリスクを判断する上で集団的な失敗があった」と結論付けている。

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