ダイモン氏の最初の答えは「ノー」-証言で分かったベアー救済劇の内幕

米ベアー・スターンズの資金繰り逼迫(ひっ ぱく)危機のさなか、当局から同社救済への協力を求められた米銀JPモルガ ン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)の答えは「ノ ー」だった。

同CEOは、ベアー・スターンズがバランスシートに抱える負債がもたら すリスクが大き過ぎると判断したのだと、関係者らは3日の議会証言で語った。 ダイモン氏の拒絶を受け、米連邦準備制度理事会(FRB)は16日の日曜日、 アジア市場で週明けの取引が始まる直前にベアー・スターンズ向け融資を発表 した。

議会証言は、史上最大規模の証券会社救済までの事態の展開を明らかにし た。ガイトナー・ニューヨーク連銀総裁とバーナンキFRB議長は決定を擁護 したが、一部議員は危険な賭けへのただ乗りを許したと批判した。金融当局者 らはその週末、1907年のパニックや大恐慌時代の取り付け騒ぎにも劣らない混 乱に発展することを恐れたと説明した。

社会主義

ガイトナー総裁は、強力な政策対応がなければ、勤労者の所得減、住宅取 得や教育、日々の生活資金の借り入れコスト上昇、退職資金の目減り、失業増 につながっただろうと強調した。一方、議会は政府が国民の税金を危険にさら したことを問題視。さらに、差し押さえに直面する住宅保有者よりもウォール 街の救済を優先するのかと、今回の措置に厳しい目を向ける。ジム・バニング 上院議員(共和、ケンタッキー州)は「なぜ市場の見えざる手による裁きの邪 魔をしたのか。これでは社会主義だ」と述べた。

結局、FRBはベアー・スターンズの資産300億ドル(約3兆750億円) のリスクを負うことになり、JPモルガンは昨年末の価値の8分の1未満の価 格でベアー・スターンズを買収することになった。救済の詳しい仕組みは今や 明らかになっているが、ダイモンCEOの証言は自身のためらいと当局が抱い た恐れの大きさを浮き彫りにした。

3月13日、ガイトナー総裁は米証券取引委員会(SEC)との電話会議で ベアー・スターンズが破産申請の瀬戸際にあることを知る。ベアー・スターン ズは決済銀行であるJPモルガンに緊急融資を求め、ダイモンCEOはニュー ヨーク連銀に電話をかけた。バーナンキFRB議長とポールソン米財務長官は 翌14日早朝、JPモルガンを通じてベアー・スターンズに緊急融資することを 決めたという。

手練手管ではない

ベアー・スターンズのアラン・シュワルツCEOによれば、ベアー・スタ ーンズ側は身売り先など選択肢を模索するため28日間の猶予があると考えてい た。しかし金融当局は週末中に事態を収拾することを主張し、同CEOを驚か せたという。アジア市場でパニック売りが始まることを恐れたのだと、ガイト ナー総裁は説明した。

シュワルツCEOは週末に、複数の相手に身売りを打診したが、リスクの 大きさや時間的制限の厳しさから、真剣に検討したのはJPモルガンのみだっ た。そのJPモルガンも問題の16日の朝には恐れをなした。ダイモンCEOは ガイトナー総裁とポールソン長官に、リスクが大き過ぎると伝えた。「誓って、 交渉のための手練手管ではなかった」とダイモンCEOは話す。

ガイトナー総裁は、ベアー・スターンズの資産を当局が保証することは望 ましくなく、JPモルガンを通じてベアー・スターンズにさらに融資して時間 を稼いでも損失に歯止めはかからず、ベアー・スターンズやJPモルガンに当 局が出資することは違法だと説明。ベアー・スターンズの資産を担保に融資す ることはできると提案した。結局、この方法が選択された。

リスクはあるが、ベアー・スターンズを破たんさせた場合の経済への悪影 響に比べれば害悪は小さいとガイトナー総裁は当局の判断を擁護する。少なく とも、14日の金曜日に貸し付けた緊急融資の130億ドルは、17日の月曜日に400 万ドルの利息を付けて返済されたという。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE