短観:大企業・製造業DIは4年半ぶりの低水準-利下げ観測強まる(6)

日本銀行が全国の企業を対象に行った企業 短期経済観測調査(短観、3月調査)で、大企業・製造業の業況判断指数(D I)が2期連続で悪化し、2003年12月以来の低水準となるなど、企業の景況感 は軒並み悪化した。国際金融市場の動揺や世界経済の減速、原油価格の高騰で、 景気の先行き不透明感が高まっており、早期の利下げ観測が強まっている。

日銀が1日発表した短観で、景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪 い」と答えた割合を引いた業況判断DIは、大企業・製造業がプラス11と昨年 12月の前回調査から8ポイント悪化、3カ月先の見通しはプラス7。大企業・ 非製造業はプラス12と4ポイント悪化、先行きはプラス13だった。ブルーム バーグ・ニュースの予想調査の中央値は、大企業・製造業プラス13、先行きプ ラス9、大企業・非製造業プラス12、先行きプラス10となっていた。

BNPパリバ証券の島本幸治チーフストラテジストはブルームバーグテレ ビジョンのインタビューで「景気の後退入りが確認された。日銀は30日の経 済・物価情勢の展望(展望リポート)で景気見通しの大幅な下方修正をせざるを 得ないだろう。そしてその後、日銀は利下げを検討するだろう」としている。

設備投資計画の悪化は衝撃的

大企業・非製造業は3期連続の悪化で05年3月(プラス11)以来の水準と なった。ゴールドマン・サックス証券の村上尚己シニアエコノミストは「DIは 総じて悪化し、市場予測をやや下回る弱めの内容だ。先行きもさらなる低下が見 込まれており、業況判断が悪化に転じたことが鮮明になった。02年に始まった 景気回復が終えんし、景気が後退局面に入ったことをあらためて確認する結果」 という。

今回初めて集計された08年度の設備投資計画(含む土地投資額)は、大企 業・全産業が前年度比1.6%減、中小企業・全産業は同24.2%減、全規模・全 産業は同5.3%減と、いずれも昨年3月調査の07年度計画(2.9%増、17.7% 減、0.3%減)を下回った。事前予想では大企業・全産業0.1%増、中小企業・ 全産業20.0%減、全規模・全産業3.5%減が見込まれていた。

バンク・オブ・アメリカグローバル為替・金利・商品戦略部の藤井知子日 本チーフエコノミスト兼ストラテジストは「設備投資計画がマイナスに出たのは 衝撃的だ。企業がすでにリストラ体制に入りつつあるということであれば、この 先、景気の下振れリスクがある」と指摘する。

中小企業のDIも大きく悪化

大企業・製造業の08度設備投資計画は同3.3%減と、「2000年代では 2002年度に次ぐ低い水準で、不況期のスタート」(城西大学の霧島和孝教授の ブルームバーグテレビジョンのインタビュー)となった。バンク・オブ・アメリ カの藤井氏は「景況感、収益、設備投資計画は若干予想よりも弱めで、全体的に 景気悪化が加速度的に進みつつある」と指摘。日銀の金融政策見通しをこれまで の「据え置き」から「6月会合での0.25%利下げ」に変更した。

07年度の設備投資計画(含む土地投資額)は、大企業・全産業が前年度比

6.8%増と、昨年12月の前回調査(10.5%増)から下方修正。中小企業・全産 業は同1.1%減と前回調査(4.6%減)から上方修正。全規模・全産業は同

4.2%増と前回調査(6.8%増)から下方修正された。

中小企業・製造業の業況判断DIはマイナス6と前回調査から8ポイント 悪化、3カ月先の見通しはマイナス9。中小企業・非製造業はマイナス15と同 3ポイント悪化、先行きはマイナス21だった。事前予想の中央値は、中小企 業・製造業がマイナス5、先行きがマイナス8、中小企業・非製造業はマイナス 18、先行きはマイナス20となっていた。

利益計画は楽観的で下方修正含み

中小企業・製造業のDIは2期ぶりの悪化で、03年12月(マイナス10) 以来の水準。中小企業・非製造業のDIは4期ぶりの悪化で、04年9月(マイ ナス17)以来の水準となった。ゴールドマン・サックス証券の村上尚己シニア エコノミストは「原材料高の影響でマージン(利益率)圧縮の影響を受けている 中小企業でもDI悪化が顕著になっている」としている。

08年度の想定為替レートは通期で1ドル=109.21円、上期が同109.56円、 下期が同108.86円だった。回答期間は2月26日-3月31日。調査対象企業は 1万705社、回答率は98.6%だった。同日午前の日経平均株価は短観には反応 薄で、前日のニューヨーク株高を好感して前日比172円45銭(1.4%)高の1 万2697円99銭と反発した。

08年度の経常利益計画は大企業・製造業が前年度比横ばい、全規模・全産 業は同2.4%増となった。城西大の霧島氏は「為替相場の想定が少し甘いため、 利益計画を少し楽観的にさせている」と指摘する。円の対ドル相場は午前10時 半現在、1ドル=99円台後半で推移しており、「このまま市場で円高ドル安の 地合いが続くと、大企業・製造業の経常利益計画は下振れしてくる」(みずほ証 券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)とみられる。

利下げの確率は5割程度か

全規模・全産業の生産・営業用設備判断DIは0と過不足のない状況で、 前回調査から横ばいだった。雇用判断DIは前回のマイナス10から今回はマイ ナス9と不足超幅が若干縮小。日銀が金融政策運営上、重視している短観加重平 均DI等でみた需給ギャップはわずかながら悪化した。

三井住友アセットマネジメントの武藤弘明シニアエコノミストは「需給ギ ャップの改善はここに来て足踏みしている」としながらも、「絶対レベルとして は不足超であることから、日銀がシナリオを大きく書き換えるほどの動きではな いかもしれない」と指摘。「短観全体としてはネガティブだが、日銀が予防的な 利下げに踏み切るかどうかは、現時点でもフィフティ・フィフティか、それより もやや下といったところだろう」とみる。

みずほ証券の上野泰也氏は「今回の短観が弱い内容になったことは、シナ リオ下方修正の圧力を強める新たな材料と言える」と指摘する。ただ、日銀の金 融政策については「0.5%しか利下げの余地がないだけに、仮に利下げをするに しても、タイミングはじっくり選びたいというのが日銀の本音だろう」と指摘。 「展望リポートで景気シナリオが大幅に下方修正されて、そのまま利下げに向け て一直線で走るとまでは期待しないほうがよい」としている。

--共同取材:小宮弘子、市倉晴美、亀山律子、鎌田泰幸、吉川淳子 Editor:Masaru Aoki,Hitoshi Ozawa

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