【米経済コラム】ベアーS救済めぐる不毛な論議は不要-J・ベリー

一部の政治家らは、米証券大手ベアー・スタ ーンズの破たん回避を目指した米金融当局の救済策は正しかったのかどうかとい う議論を仕掛けることで、金融当局の信用失墜を狙っているようだ。

彼らは、恐ろしいまでの経済的惨状を招きかねない、大手金融各社が次々と 破たんする事態の方が良かったと主張するつもりなのだろうか。

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のマーティン・ウルフ氏など一部の 専門家は、この救済策が長期的な悪影響を及ぼすとの見方を示している。

ウルフ氏は25日付のFT(オンライン版)に、「2008年3月14日を忘れる な。この日、グローバル自由市場資本主義の夢がついえたのだ」と記した。

ニューヨーク連銀の支援を受けて米銀JPモルガン・チェースがベアー・ス ターンズ買収合意に至ったことから、金融システム全体の破たんは回避された。 ベアー・スターンズが破たんしたとしても、ひょっとしたら他の金融機関には波 及しなかったかもしれない。しかし、そのリスクが存在したことは確かであり、 ベアー・スターンズの調査を発表した2つの米上院委員会はそれを忘れるべきで はない。

救済措置をめぐる議論の多くでは、これは金融業界の富裕層の救済だと決め つけられてきた。米上院財政委員会のボーカス委員長(民主、モンタナ州)が 26日、ベアー・スターンズのアラン・シュワルツ最高経営責任者(CEO)と JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEO、バーナンキ米連邦準備制度理事会 (FRB)議長、ニューヨーク連銀のガイトナー総裁、ポールソン米財務長官に 対し、ベアー・スターンズの「売却計画の正確な詳細と、協議参加者、協議が誰 によってどのように進められたのか」を明らかにするよう求めた際、富裕層の救 済などという文言は使われなかった。

ポピュリスト的政治

ボーカス委員長は「金融業界のみならず実体経済でも景気は厳しくなってお り、われわれは納税者に対し、この取引の詳細を調べる義務を負っている」と語 った。

こうした調査は正しい。正しくないのは、金融システムの安定性が危機にひ んした際に、あたかも実体経済と金融の利益が相反するかのように語り、一般大 衆受けを狙うポピュリスト的政治を続けることだ。

上院財政委の共和党トップ、グラスリー議員(アイオワ州)も、「ベアー・ スターンズの問題で、市場のパニックを回避するために何が必要で何が必要では なかったかという問題と、納税者にとっての救済策の意味は別だ」と述べた上で、 「議会には、納税者がこの救済措置によって損失を被るかどうかを調べる責任が ある」と述べた。

損得勘定から見ても、救済措置が市場のパニック回避に必要だったとしたら、 これに要する費用はたとえどれほどであったにせよ、十分に元を取れるだろう。

上院銀行委員会のクリス・ドッド委員長(民主、コネティカット州)も26 日、来月3日にベアー・スターンズの救済策に関する別の公聴会を開くことを明 らかにした。同公聴会では米証券取引委員会(SEC)のコックス委員長も証言 する。コックス委員長の証言は、SECが投資銀行の監督機関であるだけに重要 な意味を持つ。

ポールソン米財務長官は26日、FRBは監督範囲を拡大し、救済対象とな り得る大手証券会社も監督する必要があるとの見解を述べた。

納税者のリスク

しかしベアー・スターンズの救済を納税者にとってのリスクという側面から 見た場合、米金融当局は損失を被るよりも利益を得る可能性が大きいだろう。

当局が融資の担保として引き受けた資産は、既に市場価格が大きく下落して おり、しばらくの間は必ずしも売却する必要があるとはいえない。また、JPモ ルガンがこの取引に関連して発生した損失の最初の10億ドル(約1000億円)を 負担する。

仮にベアー・スターンズ危機がわずか一夜にしてこれほどまでに悪化するこ とがなかったら、もっと賢明な策が見つかったかもしれない。しかし金融危機と はこうしたものであり、納税者へのリスクに関するあら探しをいくらしたとして も、ポピュリスト的政治を画策する政治家以外の人にとっては何の益にもならな いだろう。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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