暫定税率期限切れでマクロ経済に影響-オフショアで資金流出懸念(2

ガソリン税(揮発油税)の暫定税率維持を 含む租税特別措置法改正案の年度内成立に向けた与野党協議が行き詰まり、3 月末で暫定税率の期限切れが不可避の情勢となった。政府・与党は来月末に衆 院で再可決する方針だが、暫定税率の即時廃止を求めている野党の強い反発が 予想される。暫定税率が廃止されれば国・地方合わせて3兆円近い歳入欠陥に つながり、マクロ経済への影響も避けられそうにない。

ガソリン税を含む道路特定財源の暫定税率の期限切れとともに、国際金融 取引にかかる所得税・法人税の非課税措置や土地売買時に適用される登録免許 税の軽減措置なども道連れで期限が切れて増税となり、東京オフショア市場か らの資金流出や住宅着工の減少などを危ぶむ声も上がっている。

福田康夫首相は27日夕の緊急会見で、2009年度以降の道路特定財源の一般 財源化を表明したが、民主党が求める暫定税率の08年度からの即時廃止につい ては「現実無視」とし、応じない構えを明確にした。これに対し、民主党は「考 えを全く異にしている」(菅直人代表代行)と強硬姿勢を崩していない。

これを受け、与党は同日、増税になる可能性のある税項目について、来月 末まで適用期限を延長するつなぎ法案の提出を提案。町村信孝官房長官は28日 の記者会見で「国民生活や経済社会に混乱を起こしたくない、という現実的な 判断に基づくものだ」としているが、調整は難航が予想される。

歳入欠陥には歳出削減で対応

暫定税率が切れると、ガソリン価格は1リットル当たり25.1円値下がりす る。同税を含む道路特定財源の税収5.4兆円のうち、暫定税率の上乗せ分はほ ぼ半分の2.6兆円(国約1.7兆円、地方約0.9兆円)に上る。これを受け、津 田廣喜財務事務次官は「歳入不足になれば予算執行に何らかの支障が生じる可 能性がある」と懸念を表明した。新規事業の着工を凍結するなど歳出削減で対 応し、新規国債発行による補てんは回避する方針だ。

みずほ証券の柴崎健シニアファイナンシャリストは国の予算への影響につ いて、「道路特定財源でカバーできない事業については建設国債の増発要因とな るため、補正予算編成時に修正する必要がある」としながらも、「金額が比較的 小さく、市中発行ペースに影響は与えない」と指摘する。

一方で、地方財政への影響は大きいとみる。国から地方へ交付する地方道 路整備臨時交付金も期限切れとなり、0.7兆円の交付金が支払われなくなるから だ。この場合、地方の歳入減は約1.6兆円に上ることから、柴崎氏は「地方債 による調達か、道路事業の縮小を迫られる。緊縮財政の流れを受けて事業縮小 の圧力が強まる可能性もある」との見方を示している。

ジャパン・パッシングの可能性

邦銀が海外で運用するために外貨などの資金を外国銀行から調達する「特 別国際金融(オフショア)勘定」や、債券を担保に外銀から外貨などを借りる 「外国金融機関等の債券現先(レポ)取引」で外銀が受け取る利子にかかる非 課税措置は今回の改正案で適用期限を撤廃し、恒久化を目指していた。

これらの措置が期限切れとなればオフショア勘定で15%、レポ取引で20% 課税されることになる。米国、英国、フランスの3カ国の場合、二国間租税条 約に基づき非課税措置を維持できるが、煩雑な事務手続きが必要だ。残る先進 7カ国(G7)やその他の国の間では税率引き下げの優遇措置にとどまる。

オフショア勘定とレポ取引の残高は今年1月末の段階で計約37兆円に上る。 これらの資金が非課税のシンガポールや香港に流出したり、ロンドンを窓口に 取引が行われたりする可能性もあり、東京オフショア市場が空洞化する「ジャ パン・パッシング」につながりかねないとの懸念が市場関係者の間で強まって いる。

カリヨン証券の加藤進チーフエコノミストは非課税措置が期限切れとなれ ば、「一時的にでも資金流出が起こる可能性がある」と指摘。その上で「円の国 際化を図るために東京オフショア市場が導入されたのに、使い勝手が悪いとい う印象を与えてしまうと、ローカルな市場になる恐れもある」と危ぐする。

このほか、土地売買の際の不動産登録免許税の減免措置も期限切れとなれ ば現行の1%から2%に税率が上がることから住宅着工への影響も予想される。 第一生命経済研究所の永浜利広主任エコノミストは、「都心部の地価が上昇して いるなかで需要が下がっている。昨年の改正建築基準法施行後に激減し、戻り 始めた住宅着工の頭を抑える要因に間違いなくなる」との見方を示している。

つなぎ法案で増税回避も

政府・与党は暫定税率が3月末で失効した場合、衆院通過から60日以内に 参院で議決されなければ、衆院で3分の2以上の再可決できる憲法59条の規定 に基づいて改正案の成立を目指す公算が大きい。この場合、2月29日に衆院で 可決された同案は4月29日に衆院で再可決が可能だ。

期限切れに伴い一時的に増税となる税項目については、民主党も適用期限 の延長について賛成の方針だ。同党は政府提出の改正法案のうち7項目を分離 し、年度内成立に向けて審議する法案を提出したが、政府・与党は一括法案と して成立させる大前提を崩しておらず、平行線をたどっていた。

7項目はオフショア勘定・レポ取引にかかる利子課税や土地売買の登録免 許税のほか、海外旅行者のたばことウイスキーの持ち込み、石油化学用ナフサ の輸入、交際費の損金算入。自民と公明の連立与党は一時的な増税を回避する ため、今月末に期限切れを迎えるこれらの税項目について「民主党提案の趣旨 を踏まえ、4月末まで適用期限を延長する」としたつなぎ法案の提出を呼びか けたが、野党がどのように出るかはまだ判然としない。

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