日銀短観:業況判断DIは大幅悪化へ、リスク要因抱え企業が慎重に

日本銀行が4月1日発表する企業短期経済 観測調査(短観、3月調査)では、企業の業況判断指数(DI)が大幅に悪化す るとみられている。国際金融市場の動揺や世界経済の減速、エネルギー・原材料 価格の高騰による中小企業の収益環境の悪化や、生活関連物資の値上がりなど、 日本経済は内外ともに多くのリスク要因を抱えている。こうした強い逆風を受け、 短観では企業の景況感が慎重化していることが示されそうだ。

ブルームバーグ・ニュースが民間調査機関20社を対象にまとめた予想調査 (中央値)では、3月短観で景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と 答えた割合を引いた業況判断DIは、大企業・製造業がプラス13、大企業・非 製造業がプラス12と、いずれも昨年12月の前回調査の実績(プラス19、プラ ス16)から大幅な悪化が見込まれている。

短観の回答期間中、日経平均株価は大きく下落。円の対ドル相場も1ドル =100円を突破した。日興シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは 「3月調査の短観は米国景気の急減速、円高・ドル安の進行、国際金融市場の混 乱、原材料価格の上昇といったマイナス要因を背景に、企業センチメントが慎重 化していることを裏付けるものとなるだろう」と予想する。

設備投資計画も大きく減速へ

24日発表された法人企業景気予測調査では、企業の景況判断(BSI、 「上昇」-「下降」を引いた比率)が大幅に悪化した。大企業・製造業のBSI はマイナス12.9(前期はプラス5.2)、大企業・非製造業のBSIはマイナス

7.2(同マイナス2.2)だった。同調査は企業経営者に景気の方向性を聞いてい るため、景気の「良い」「悪い」という水準を聞く短観より振れが大きいものの、 短観でも同様に景況感の悪化が示される可能性が大きい。

3月短観では2008年度の事業計画が集計される点でも注目される。第一生 命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは「前回12月調査に比べると、現在 は①為替円高②原油価格③米国経済―といった外部環境が総じて悪化しており、 企業の期待収益も下振れを余儀なくされていると見込まれる」と指摘する。

ブルームバーグ・ニュースの予想調査では、大企業・全産業の08年度設備 投資計画は前年度比0.1%増が見込まれている。アールビーエス証券の山崎衛チ ーフエコノミストは「新年度直前の3月調査では、企業の慎重な姿勢が反映され る傾向があるが、今回は経営環境の悪化が追い討ちをかけ、より慎重な設備投資 計画になる可能性が高い」と指摘。「企業規模を問わず、前年比マイナスの計画 になる」と予想している

日銀の標準シナリオには不確実性が

日銀の福井俊彦前総裁の任期が19日で切れたが、総裁人事は迷走が続いて いる。福田康夫内閣は総裁候補として、7日に武藤敏郎前副総裁、18日に田波 耕治国際協力銀行総裁を提示したが、いずれも野党が多数を握る参院で同意を得 られず、日銀総裁は19日以降、空席となっている。副総裁には白川方明元日銀 理事と西村清彦前日銀審議委員が就任。総裁が空席の間、白川副総裁が総裁の代 行と金融政策決定会合の議長を務める。

政府は19日発表した3月の月例経済報告で「景気回復はこのところ足踏み 状態にある」として、景気判断を2カ月連続で下方修正した。日銀が3月の金融 経済月報で示した景気判断は「住宅投資の落ち込みやエネルギー・原材料価格高 の影響などから減速しているが、基調としては緩やかに拡大している」、先行き は「当面減速するものの、その後緩やかな拡大を続けるとみられる」。

白川副総裁は21日夕、就任会見を行い、日銀の情勢判断について「今は非 常に不確実性が高い時期なので、標準的なシナリオには不確実性がある」と指摘。 日本経済は「内外ともに多くのリスク要因、不確定要因を抱えている」とした上 で、「経済、物価の見通しの上下両方のリスク要因を、謙虚な姿勢で、幅広い角 度から分析することが求められている」と述べた。

台頭する4-6月の利下げ予想

3月調査の短観は、4月8、9日に開かれる日銀の金融政策決定会合、そ れに4月30日に示される経済・物価情勢の展望(展望リポート)で大きな判断 材料となる。モルガン・スタンレー証券の佐藤健裕チーフエコノミストは「展望 リポートで景気見通しと政策スタンスに抜本的に修正が入れば、利下げは急速に 現実味を帯びるだろう。市場環境次第では、新首脳陣の下、総裁不在でも緊急会 合が開催され、政策変更に至る可能性もある」と指摘する。

福井前総裁は5年前の総裁就任直後の3月25日、イラク戦争の開始に合わ せて臨時の金融政策決定会合を開催。銀行保有株の買い取り枠を2兆円から3兆 円に拡大した。その後も、4月8日の金融政策決定会合では資産担保証券の買い 入れ検討を表明。4月30日と5月20日の会合で連続して量的緩和政策の拡大 に踏み切るなど、矢継ぎ早に政策を打ち出した。

HSBC証券の白石誠司チーフエコノミストはこれまで、08年4-6月に おける利下げを「40%のリスクシナリオ」としてきたが、「最近の米国金融シ ステム不安の著しい増大、クレジットクランチ色の強まり、根強い世界株安・ド ル安(円高)傾向、米国雇用情勢悪化の明確化などを受け、08年4-6月にお ける0.25%利下げをメインシナリオとすることを決断した」としている。

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