悪化する米経済が払う代償-ドル安、物価高、規制強化に貧しい消費も

米国は経済と金融の混乱から抜け出そうとし て、大きな政府、インフレ高進、貧しい消費という大きな代償を払う可能性があ る。

過去20年間の大半、米政府は規制緩和を押し進め、金融当局はインフレ抑 制に大方成功し、多くの米国人は住宅の値上がりや輸入品の値下がりの恩恵に浴 して豊かな消費生活を享受できた。しかしこれが覆る可能性がある。

国際通貨基金(IMF)でチーフエコノミストを務めた経歴を持つケネス・ ロゴフ米ハーバード大学教授は「インフレ率は4-5%に上昇するだろう」と予 想。「ドル相場の下落は続き、低水準に長くとどまるものとみられる。そして結 局は規制の強化につながるだろう」と語った。

バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長ら当局者が先週、インフレ 期待が強まった可能性を示唆するなど、一部にはすでに予兆が表れている。米議 員は米住宅市場における米政府の役割拡大や、金融サービス分野の監視強化を議 論している。

米消費者は景気の悪化を実感している。ミシガン大学とロイター通信の調査 によれば、消費者の約45%が向こう1年間にインフレ調整後の所得が減少する と予想。1990年以来、最悪の見通しとなっている。

民間調査機関コンファレンス・ボードの消費者分析を担当するリン・フラン コ氏は「悲観派の人数が楽観派を上回り始めている」と指摘。「景気の先行き見 通しは過去17年間で最低だ」と述べた。

エコノミストによれば、米消費者が財力以上の生活水準を長年続けてきたつ けが回ってきている。過去15年間、内需は成長率を平均0.3ポイント上回る伸 びを続けてきた。この借金生活を可能にした背景には資産の値上がりがあった。 1990年代後半に株式相場が、その後は不動産価格が上昇。しかし、このバブル も今や崩壊している。

不愉快な現実の認識

コロンビア大学の経済学教授でノーベル賞受賞者のエドムンド・フェルプス 氏は現在の米消費者について、「当てにしていた遺産の相続ができないことに気 付いた人のようだ」と指摘。「一転して仕事や貯蓄に精を出し、あらゆる条件面 で譲歩している」と説明した。

元米財務次官補で現在は米有力シンクタンクのピーターソン国際経済研究 所のシニアフェロー、エドウィン・トルーマン氏は、内需の伸びが経済成長を下 回り、輸出がそのギャップを補うという90年代前半の経済状況に再び陥ると予 想する。

こうした調整を後押しするのがドル安だ。昨年9月に米当局が利下げを開始 して以来、ドルは対ユーロで10%、対円で15%それぞれ下落。ディシジョン・ エコノミクスのチーフエコノミスト、アレン・サイナイ氏は向こう数カ月でドル は一段と下げ、1ユーロ=1.70-1.75ドル、1ドル=90円に達すると予想する。

輸入コスト

ドル安は輸入品のコストを押し上げ、インフレ高進につながる恐れがある。 2月の石油を除いた輸入物価は前年同月比4.5%上昇と、過去12年余りで最大 の上げとなった。

ロゴフ教授は、「インフレ圧力は様々な要因から生じている」と指摘。米金 融当局がリセッション(景気後退)回避と金融混乱の対策に集中するため、イン フレ懸念を棚上げにしたと説明する。その上で、「当局は現状の危機にとらわれ、 金融システムに資金を過剰に供給しており、インフレ期待は抑えが効かなくなる だろう」と語った。

2000年の米株式市場のバブル崩壊と米エネルギー会社エンロンの破たんを 受け、米議会は企業監査の強化などを目的にサーベンス・オクスリー法(SOX 法)を成立させた。ロゴフ教授は、このままでは「SOX法の強化につながる」 こともあり得るとの見方を示している。

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