白川日銀副総裁:内外にリスク要因―必要な政策を機動的に実施(4)

日本銀行の白川方明副総裁は21日夕、就 任会見を行い、日本経済は「内外ともに多くのリスク要因を抱えている」とした 上で、「必要な政策を機動的に実施することを通じ、長い目で見た経済と物価の 安定に貢献したい」と語った。西村清彦副総裁も景気は「かなり減速している」 として、「柔軟かつ機動的な政策を考えなければいけない」と述べた。

政府は21日午前、20日付で日銀副総裁に任命した白川氏と西村氏に辞令 を交付した。福田康夫首相は18日、福井俊彦前総裁の後任に田波耕治国際協力 銀行総裁を提示したが、19日の参院本会議で同意を得られず、総裁が空席とな った。日銀は21日、政策委員会を開き、白川副総裁を金融政策決定会合などを 行う同委員会の議長に選出。総裁が空席の間、白川副総裁が総裁の執行部として の職務も代行する。

総裁の空席に加え、審議委員だった西村氏が副総裁となったため、本来は 正副総裁3人、審議委員6人からなる金融政策決定会合は当面、7人で開催する。 町村信孝官房長官は21日午前の会見で、次の7カ国財務相・中央銀行総裁会議 (G7)が予定されている4月前半の段階でも日銀総裁が空席だった場合、白川 副総裁が総裁代行として出席するとの見通しを明らかにした。

白川副総裁「異例の事態にも停滞許されない」

白川副総裁は総裁が空席となったことについて「総裁が欠けるという異例 の事態ではあるが、経済や金融には一日の休みもなく、日銀の業務が滞ることは いかなる意味でも許されない。総裁が任命されるまでの間、日銀の運営を預かる ものとして、しっかり職責を果たしたい」と語った。

白川副総裁は日本経済については「現在、国際金融市場の動揺や世界経済 の減速、エネルギー・原材料価格の高騰による中小企業の収益環境の悪化や、生 活関連物資の値上がりなど、内外ともに多くのリスク要因、不確定要因を抱えて いる」と指摘。その上で「経済、物価の見通しの上下両方のリスク要因を謙虚な 姿勢で、幅広い角度から分析することが求められている」と述べた。

日銀が3月の金融経済月報で、景気は「減速しているが、基調としては緩 やかに拡大している」と判断していることについては、自らの見方と「それほど 大きな違いはない」と指摘。ただ、日銀が先行きについて「当面減速するものの、 その後緩やかな拡大を続ける」としていることについては「標準的なケースを強 調して言うことももちろん大事だが、それと同時に、今は非常に不確実性が高い 時期であるので、標準的なシナリオには不確実性がある」と語った。

金融政策の3つの基本的考え方

白川副総裁は金融政策運営の基本的な考え方について3点を挙げた。まず 「金融政策が効果を発揮するまで非常に長い時間がかかる」と指摘。「足元の経 済の情勢はこれはこれで非常に大事だが、少し長い目で見て物価の安定がどのよ うに維持されるのか、維持されないのか、従って、持続的な経済成長が維持され るのか、維持されないのか、その点検が非常に大事だ」と述べた。

白川副総裁は2つ目として「経済が変化するときは非常に変化する」と指 摘。経済は「上にも下にも変化するときは非常に大きく変化する。従って、金融 政策運営にあたっては、常に予断を持ってはいけない」と語った。

白川副総裁は3点目として「日本のバブル以降の経験、あるいは最近のサ ブプライム問題を見ると、あらためて資産価格と実体経済の複雑な相互依存関係 がいろいろな形で経済の変動を及ぼしている」と語った。

白川副総裁はまた、現在の政策金利の水準について「実質短期金利は大ま かに言うと大体ゼロで、潜在成長率が1%台半ばから後半という感じだろうから、 現在の金融政策はその意味からすると、非常に大きな緩和方向の力を発揮してい るというふうには思う」と語った。

西村副総裁「金融政策は極めて難しい時期に」

一方、西村副総裁は「日本経済は現在、足元をみるとかなり減速している が、基調としてみるならば緩やかな拡大が続いている」としながらも、「同時に 国際金融市場の動揺、世界経済の減速傾向の強まり、エネルギー・原材料価格高 の影響など、先行きに多くのリスク要因が存在しているのも事実だ」と指摘。 「日本経済が物価の安定の下で持続的な成長を続けていけるよう、金融政策面で も極めて注意深い政策運営が必要だ」と述べた。

西村副総裁はさらに、「金融政策は極めて難しい時期に差し掛かってい る」とした上で、「一番大切なのは丁寧な分析」であり、そうした丁寧な分析の 下で、「柔軟で、かつ場合によっては機動的な政策ということも考えていかなけ ればならない」と語った。

主な一問一答は次の通り。

――就任にあたって抱負は。

白川副総裁「現在、日本経済は国際金融市場の動揺や世界経済の減速、エ ネルギー・原材料価格の高騰による中小企業の収益環境の悪化や、生活関連物資 の値上がりなど、内外ともに多くのリスク要因、不確定要因を抱えている。金融 政策運営にあたっては、経済、物価の見通しの上下両方のリスク要因を謙虚な姿 勢で、幅広い角度から分析することが求められている」

「そうした丁寧な情勢分析の上に立って、必要な政策を機動的に実施する ことを通じて、長い目で見た経済と物価の安定に貢献したい」

「総裁が欠けるという異例の事態ではあるが、経済や金融には一日の休み もなく、日銀の業務が滞ることはいかなる意味でも許されない。総裁が任命され るまでの間、日銀の運営を預かるものとして、しっかり職責を果たしたい」

西村副総裁「日本経済は現在、足元をみるとかなり減速しているが、基調 としてみるならば緩やかな拡大が続いている。しかし、同時に国際金融市場の動 揺、世界経済の減速傾向の強まり、エネルギー・原材料価格高の影響など、先行 きに多くのリスク要因が存在しているのも事実だ。こうした中、日本経済が物価 の安定の下で持続的な成長を続けていけるよう、金融政策面でも極めて注意深い 政策運営が必要だと考えている」

――今後の適切な金融政策運営についてどう考えるか。

白川副総裁「かつて事務方として日銀に在籍したときの教訓がいつくかあ る。1つは、金融政策が効果を発揮するまでには非常に長い時間がかかるという ことだ。従って、足元の経済の情勢はこれはこれで非常に大事だが、少し長い目 で見て物価の安定がどのように維持されるのか、維持されないのか、従って、持 続的な経済成長が維持されるのか、維持されないのか、その点検が非常に大事 だ」

「2つ目は、経済が変化するときは非常に変化するということだ。これは 上にも下にも変化するときは非常に大きく変化する。従って、金融政策運営にあ たっては、常に予断を持ってはいけないと思っている」

「3つ目は、日本のバブル以降の経験、あるいは最近のサブプライム問題 を見ると、あらためて資産価格と実体経済の複雑な相互依存関係がいろいろな形 で経済の変動を及ぼしている。ただ、このことは私が意識している一般的な前提 であり、当面の金融政策運営に対して何か意味しているわけではない。これから そうした前提を踏まえて、その上でさまざまな情報を集めて、議論をして4月の 金融政策決定会合に臨みたい」

西村副総裁「金融政策は極めて難しい時期に差し掛かっている。一番大切 なのは丁寧な分析、しかもその分析はわれわれが手にする数字となった経済デー タだけでなく、それ以外のさまざまな質的なデータを組み合わせ、データの中に 含まれる長期的な動きを見ながら、かつその長期的な動きに何か変動はないか小 さな兆しにも十分な注意を払いながら、柔軟で、かつ場合によっては機動的な政 策ということも考えていかなければならないということが一般論として言える」

――政府は「景気は踊り場にある」としているが、どうみるか。日銀の情勢判断 についてどう考えるか。

白川副総裁「日銀が3月の決定会合で示した基本的な見解とそれほど大き な違いはない。景気は住宅投資の落ち込みやエネルギー・原材料価格高の影響か ら減速しているが、基調としては緩やかに拡大している。日銀は先行きについて は、当面減速するというのがどれくらい続くか分からないが、その後は緩やかな 拡大が続くという姿を一応標準的な見通しに置いている」

「しかし、私自身は、その標準的なケースを強調して言うことももちろん 大事だが、それと同時に、今は非常に不確実性が高い時期であるので、標準的な シナリオには不確実性があると思う」

――白川副総裁は先の国会での所信聴取で、潜在成長率と比べると今の実質短期 金利は非常に低いと指摘したが、利下げには慎重か。

白川副総裁「実質短期金利は大まかに言うと大体ゼロで、潜在成長率が 1%台半ばから後半という感じだろうから、現在の金融政策はその意味からする と、非常に大きな緩和方向の力を発揮しているというふうには思う」

「ただ、金融政策が経済に対して影響を及ぼすルートは短期金利だけでは なく、短期金利から始まった中長期の金利、それから国債の金利だけでなく、民 間の企業に働きかける金利、つまりクレジット・スプレッドを加味した金利、あ るいはクレジット・スプレッドを加味した上で銀行がどの程度、積極的に融資に 臨んでいるのか、こういうことを総合的に判断する必要がある」

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