【米経済コラム】FRB、「最後の貸し手」として獅子奮迅-J・ベリー

米連邦準備制度理事会(FRB)の最も 重要な責務は同国の金融システムを守ることで、今月はまさに同システムの崩 壊回避に向けて大胆かつ適切な行動を打ち出してきている。

米証券会社ベアー・スターンズへの「救済」については批判も出ている が、それは見当違いだ。ベアーの株主が受け取るのは約2億4000万ドル(約 230億円)、1株当たりでは2ドルほどと、すずめの涙ほどでしかない。13 日の取引終了時点では、同社の時価総額は67億ドルを上回っていた。

危機は一部救われた。金融当局が行ったことは、ほかの金融機関に危機 が連鎖するリスクを低減することだった。

当局が何も手を打たず、保証のないリスクをとってきた多くの金融機関 の幹部に戦略の失敗を重く受け止めさせるのは結構なことではあろう。しかし 問題は、そのやり方では米国経済が沈んでしまいかねないことだ。要するに、 金融当局は中央銀行としてなすべきこと、つまり最後の貸し手として金融シス テムを守るという役割を果たしているのだ。

それは、持続的な最大限の雇用と物価の安定維持というFRBの他の責 務とはいささか距離を置いた役割だ。そうした責務を遂行するため現在、連邦 公開市場委員会(FOMC)は、現行3%のフェデラルファンド(FF)金利 の誘導目標の引き下げで対応しようとしている。アナリストらは、今週のFO MCで1ポイントの利下げを予想している。

ゼロ金利に接近か

一部の当局者は金利調整面で余地を残すことを望むとも考えられるが、 流動性の危機を背景に大幅な利下げが不可避となることもあり得る。金利はゼ ロで行き止まりであることを忘れてはならない。一部のアナリストは数カ月以 内に、FF金利の誘導目標はゼロに近づくと予想する。一方にはそれほど悲観 的でない見方もある。

欧州中央銀行(ECB)はこれまでのところ、政策金利を4%に据え置 いており、米国が大幅な利下げを継続することで、ドル相場に対する下押し圧 力は強まるとみられる。ドル安は、石油など一部の商品相場の一段の上昇につ ながりかねない。

さらに重要なのは、金融危機を引き起こしているのは貸出金利の水準が 原因ではないという点だ。真の原因は、多くの住宅ローン関連資産の価値が依 然として不透明であることだ。JPモルガン・チェースによるベアーの買収を まとめる上で、金融当局は週末に、ベアーの資産のうち最大300億ドルに関 連する信用リスクについて支援することで合意する必要があったのは、その例 だ。

金融当局者は、ベアーについてきちんと整理し、資産の価値については 最近になって慎重に試算したと指摘した。

ベアー身売りの支援だけではなく、FRBは11日にターム物証券貸与フ ァシリティー(TSLF)、16日にはプライマリーディーラー(米政府証券 公認ディーラー)による公定歩合での借り入れを認める措置をそれぞれ発表し た。両措置ともに19のプライマリーディーラーが関与するが、ベアーも突然 の身売りまではその一員だった。

TSLFでは、プライマリーディーラーは3月27日から始まる入札を通 じて米国債を借り入れる。国債の借り入れ期間は28日間。プライマリーディ ーラーは国債借入の担保として、ファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)やフレデ ィマック(連邦住宅貸付抵当公社)といった米連邦機関債および連邦政府支援 機関の保証付き住宅ローン担保証券(RMBS)などを差し入れる。信用格付 けが格下げ方向の見直し対象となっていないその他の「AAA/Aaa」格付 けのRMBSも担保として受け入れる予定だ。

圧力軽減

重要なのは、RMBS市場に掛かっている圧力を軽減することだ。

17日に始まった2つ目の措置では、プライマリーディーラーはRMBS や地方債、投資適格級の社債などを担保として差し入れることで、公定歩合で の借り入れが可能となる。

FRBはさらに16日に、公定歩合を0.25ポイント引き下げ3.25%とす ることを発表した。18日開催のFOMCでは、FF金利の誘導目標とともに、 公定歩合も再び引き下げが見込まれる。

米証券大手リーマン・ブラザーズ・ホールディングスのリチャード・フ ルド最高経営責任者(CEO)は17日、「FRBがプライマリーディーラー による公定歩合での借り入れを認める措置を発表し、担保として幅広い投資適 格級の証券を受け入れる方針を表明したため、流動性の見通しは改善している。 わたしの見方では金融業界全体の流動性問題は懸念事項から外れる」と、金融 当局の行動を評価する発言を行った。

だが、そうでもないようだ。

FRBの新たなファシリティーや、週末に慌しくベアーの身売りをまと めるための金融当局による支援の必要性を裏付けるかのように、リーマンの株 価は17日、2割近く下落した。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は、同氏自身の見解です)

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