ドル急落、対円で約12年7カ月ぶり95円台-金融不安で売り止まらず

午前の東京外国為替市場では、ドルが急落。 ドルは対円で一時、約12年7カ月ぶりに1ドル=95円台に突入し、対ユーロで は史上初の1ユーロ=1.59ドル台を付けた。前週末に発表されたニューヨーク 連銀などによる米証券ベアー・スターンズへの緊急資金支援を受け、金融不安 が再燃。朝方にはベアー・スターンズの買収や米緊急利下げが発表されたが、 市場の不安心理は払しょくされず、ドルを売る動きが加速した。

ドイツ証券の深谷幸司シニア為替ストラテジストは、米連邦準備制度理事 会(FRB)による公定歩合の緊急利下げ発表後も、ドル安がさらに進行して おり、市場がまったく好感していないことは一目瞭然だと指摘。「ドル・円も ユーロ・ドルもすでにオーバーシュート(行き過ぎ)の領域に入っているが、 なかなか止まるめどが立たない」といい、ドル・円は95円、ユーロ・ドルは1.60 ドルを試す方向にあると見ざるを得ないと語る。

金融不安再燃でドル安加速

週明けの外国為替市場では、金融不安の高まりからドルが売られた前週末 の流れを受け継ぎ、早朝からドル売りが先行。ドル・円は1ドル=98円台後半 で取引を開始すると、前週末に付けた約12年半ぶり安値を下抜け、午前7時ご ろには98円台前半までドル安が進んだ。

その後、米銀大手JPモルガンによるベアー・スターンズの買収や米連邦 準備制度理事会(FRB)による公定歩合の緊急利下げが発表されると、ドル の買い戻しが強まり、ドル・円は一時、99円台を回復。しかし、すぐにドル売 りが再燃し、午前9時ごろには97円台に突入。売りが売りを呼ぶ展開となる中、 さらに97円ちょうども割り込み、午前11時半前には一時、95円76銭(ブルー ムバーグ・データ参照、以下同じ)と1995年8月15日以来の安値を付けた。

ユーロ・ドルも1ユーロ=1.57ドル、1.58ドル、さらに1.59ドルと大台 を次々と突破し、一時、1.5903ドルまでドル安が進行。5営業日連続でユーロ 導入以来のドル最安値を更新した。

そのほか、ドルは対スイス・フランや対シンガポール・ドルでも最安値を 更新。主要6通貨に対するインターコンチネンタル取引所(ICE)のドル・ インデックスは70.698と73年3月の指数導入以来の最低を塗り替えた。

ソシエテ・ジェネラル銀行外国為替営業部長の斉藤裕司氏は、「非常にボ ラタイル(変動の激しい)な相場で、どういう材料でどういうタイミングで出 てくるかが分からないと、市場は疑心暗鬼になっている」と指摘する。

FRBが公定歩合引き下げ発表―B・スターンズ買収

FRBは16日(日本時間17日午前)、公定歩合を0.25ポイント引き下げ

3.25%とすることを決定した。また、プライマリーディーラー(米政府証券公 認ディーラー)が公定歩合で借り入れることを可能にする措置を発表した。担 保として「幅広い」投資適格級の証券を受け入れる。

一方、JPモルガン・チェースは16日、ベアー・スターンズを買収するこ とで合意した。買収価格は1株当たり約2ドルで、14日終値に基づいた時価総 額40億ドルを大きく下回る。

14日にはJPモルガン・チェースとニューヨーク連銀がベアー・スターン ズに最大28日間、資金を供給する緊急融資枠を設定。これを受け、市場では信 用収縮の深刻化が改めて意識され、米株式相場が急反落。投資家のセンチメン トを示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ・インデッ クス(VIX、別名「恐怖指数」)は31.16と約5年ぶりの水準まで上昇した。

みずほ信託銀行資金証券部の金子和広調査役は、「ベアー・スターンズは 買収が決まったが、買収価格からすると実質破綻といえ、ほかの金融機関はど うなんだろうという話にもなるだろうし、いずれにしろドル売り圧力は強い」 と指摘。ドルの下値不安が払しょくされない状況の中、「場合によっては95円 割れなど急激なドル安もあり得る」とみている。

利下げで信用不安の解決できず

フェデラルファンド(FF)金利先物相場によると、18日に開かれる米連 邦公開市場委員会(FOMC)でFF金利誘導目標が1ポイント引き下げられ る確率は5割超。残りは0.75ポイントの利下げ予想となっている。

FRBは14日、「市場の展開を注意深く監視しており、金融システムの秩 序立った機能を促すため必要に応じた流動性供給を続ける」との声明を発表。 11日には、新たな信用市場の混乱緩和を目指し、最大2000億ドル(約20兆6000 億円)相当の米国債を入札方式により貸与する措置を打ち出していた。

ドイツ証券の深谷氏は、「先週もいろいろ対策が打たれているが、そのた びにドルは逆に売られるという展開で、マーケットが考えていることと今打た れている対策との間にギャップがある」と指摘。利下げも「やらないよりはや ったほうがいいが、現状を解決するのは難しい」といい、信用クレジット対策 や公的資金注入などの対策が出ない限り、市場の混乱は収まらないとみている。

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT、オンライン版)は17日、ゴールド マン・サックス・グループ、モルガン・スタンレー 、リーマン・ブラザーズ・ ホールディングスなど米投資銀行が、週内に予定されている第1四半期決算の 発表時に、追加の評価損を計上する可能性があると報じた。

一方、額賀福志郎財務相は17日午前、省内で記者団に対し、「最近の為替 の動きは過度の動きの感じを持っており、懸念している」とした上で、「為替 動向を大きな関心を持って見ている」と述べた。政府の今後の対応策について は「今、具体的にそこまで考えていない」と述べるにとどめた。財務相はまた、 米国が引き続き「強いドル政策」を維持しているとの認識をあらためて示した。

--共同取材:加藤有明 Editor:Tetsuzo Ushiroyama、Norihiko Kosaka

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