【経済コラム】混乱する世界が日本の「愚」に目を向ける-W・ペセック

世界市場が大きく揺れ動いている現在、世 界は日米欧の当局者の動向に注目している。しかし来週、世界は日銀総裁空席と いう事態を目の当たりにする可能性がある。

19日に任期が切れる福井俊彦日銀総裁の後任人事で、民主党など野党は武 藤敏郎副総裁の総裁昇格に反対している。確かに、心を躍らされるという点では 武藤副総裁は最高の候補者ではないかもしれないが、総裁となっても全く問題の ない人物だ。

問題なのは、日本のイメージにさらに泥を塗りかねない浅薄な政争なのだ。

これまで世界のメディアが日本を取り上げる際、「野党リーダー」という言 葉が使われることは少なかった。事実上、一党支配が続いていたからだ。

しかし、民主党が昨年、参議院第一党となり、今や日本はこれまで経験した ことのない機能する二大政党制に足を踏み入れている。だがこれまでのところ、 二大政党制は政治的まひ状態を招き、不運な犠牲者となったのが日銀だった。

点数稼ぎ

民主党は、日銀の独立性という観点から元財務事務次官の武藤氏の総裁就任 に反対すると主張しているが、おかしな話だ。日本の政治家は実際には、日銀が 独立性を発揮して利上げを進めることなど望んでいない。そんなことは政治家の 生命を著しく困難なものにする。

これはあくまでも政治的な点数稼ぎなのだ。ただ、日銀を点数稼ぎに利用す るのは間違っている。福井総裁の任期を若干延長することも考えられるが、浅薄 な政治ではこのような措置は難しいだろう。これは日本の危機だ。

愚かしいことが多過ぎる。自民党にしても、野党が武藤氏に反対することを 知っていながら代わりの候補を用意しなかったのはおかしい。野党のリーダーも、 武藤氏に代わる総裁候補者を胸の中で決めておかなかったのはおかしい。

福田政権の問題

日本の景気回復は揺るぎ始めており、政府は経済問題に集中する必要がある。 しかし、政府はインド洋での海上自衛隊の給油支援や調査捕鯨、中国からの輸入 食品の問題などに力を入れてきた。

政府がまず集中すべきなのは、リセッション(景気後退)の回避と、より多 くの国民が経済成長の恩恵を享受できるようにすることだ。

活気ある国内市場へ

そのためには、家計の貯蓄縮小と支出拡大を促す必要がある。もちろん米国 の消費者のように借り入れによって消費を増やすのではなく、あくまでも活気の ある国内市場の創出が求められる。

トヨタ自動車は今週、2008年春闘の労使交渉で、1000円の賃上げを回答し た。松下電器産業も同額の回答をしている。この金額は私からみればおかしいと 思える。内閣府が発表した2月の消費者態度指数が5年ぶりの低水準となったの もむべなるかなと考えざるを得ない。

日本にとってより大きな問題は、硬直した、変化を嫌うビジネスモデルだ。 小泉純一郎元首相は任期中、改革を目指した。しかし小泉氏の首相退任後、改革 の勢いは失われ、株の持ち合いや買収防衛策は小泉政権時代よりも増えている。

民主党が改革を進めることも期待されたが、小沢一郎代表が率いる同党は政 治的駆け引きを優先させているように思える。

政治家は常にそういうものだ。だからといって、日銀を政争の具にするべき ではない。現在の世界の状況はあまりにも不安定であり、日銀総裁が空席で乗り 切れるような時期ではない。まさに愚の骨頂だ。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニスト です。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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