財務省:ドル売りの地合いに様子見姿勢-円、一時1ドル=100円突破

円の対ドル相場が13日、一時、約12年4 カ月ぶりに1ドル=100円の大台を突破したが、財務省は様子見姿勢を見せてい る。米景気後退懸念の高まりを受けて対ドルでは円高が急激に進行しているも のの、主要通貨に対する総合的な競争力を示す円の実質実効レートが依然割安 水準にあることなどがその背景にあるとみられる。

額賀福志郎財務相は13日夕、同100円割れ前に国会内で記者団に、「為替 の水準についてはコメントを差し控えたい」とした上で、「今後の相場の展開に ついては注意深く見ていきたい」との考えを示した。また、津田廣喜財務事務 次官も13日夕の会見で、「為替相場の過度な変動は、世界経済の成長にとり好 ましくないことは、累次のG7声明に盛り込まれている」と強調した。

今回の円高の背景には、米サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ロ ーン問題に端を発した米国の景気後退懸念がある。為替市場では、米景気の先 行き不透明感が強まるなかで、信用収縮不安からリスク回避でドルが売られて いる。米雇用統計をはじめ経済指標の悪化が際立ち、米国の再利下げ憶測から ドルの魅力が金利面で失われていることもある。

前回の円高局面では、2004年末から05年初めにかけて一時、同101円台ま で買い進まれた。津田財務次官は、今回は3年前のような「円高けん制発言」 が財務省首脳から出ない理由を問われ、「為替をめぐる環境はさまざまある。い つと比べて、どうというようなことを申し上げるつもりはない」と答えている。

谷垣禎一前財務相は当時、「ファンダメンタルズ(基礎的諸条件)を超える 動きにはきちっと対応する」と述べるなど「口先介入」を実施。渡辺博史前財 務官も「日欧は協調行動を取れる状況にある」などと協調介入も辞さない姿勢 を示していた。

当時は、米国の財政赤字と経常赤字の、いわゆる「双子の赤字」懸念から ドルが下落したが、足元の経済は好調だった。04年-05年にかけて米実質GD P(国内総生産)の伸びは年率3%台で推移したが、07年10-12月期は0.6% 増と低迷。今年1-3月期はマイナス成長も予想されている。米国経済のファ ンダメンタルズ(基礎的諸条件)を反映した動きだけに、介入に動きにくい面 があるのも事実だ。

前回と大きく異なるのは、なお円安の水準にとどまっている実質実効レー トだ。05年1月に120.6と直近の最高値をつけた同レートは、現在は99.5と当 時より17%程度の円安水準にある。実質実効レートは各国の物価上昇率で調整 し、日本からの輸出シェアなどを加味してはじき出す。現在の水準は、円がユ ーロなどに対して、対ドルほどの円高にはなっていないことを示している。

ユーロ・円相場でみると、現在は1ユーロ=156円前後で推移している。当 時は、同130円台と今よりも円高水準だった。このため、国内の輸出企業は、 円の対ドル上昇に伴う採算悪化をユーロ高・円安によってある程度カバーでき る構図になっている。

急激な円高、企業収益を圧迫

一方、ドル安を起因とした急激な円高は企業の収益圧迫を通じ、実体経済に 悪影響を及ぼす可能性がある。大田弘子経済財政政策担当相は13日午前の参院 予算委員会で、米国のサブプライム住宅ローン問題が日本経済に及ぼす影響に ついて、「ドル安に伴う円高、原油高が企業収益に悪影響をもたらしつつある」 と述べ、「特に中小企業の収益が急速に圧迫されつつある」との認識を示した。

ただ、過去の円高局面とは異なり、日本が輸入に依存する原油や原材料価 格の高騰が続く中、円高は輸入物価を押し下げ、コスト上昇に苦しむ輸入企業 や中小企業にとってはカンフル剤となる。経財相は4日の会見で、輸入の方が 輸出よりドル建て比率が高いため、仮に対ドルレートが10%切り上がった場合、 プラス効果の方が大きいとの試算を示している。

富士通総研経済研究所の米山秀隆主任研究員は、1ドル=100円割れを受け て、実体経済への影響について「当面の半年程度、急激な円高が続いた場合、 大企業でも厳しいだろう」とする一方、「半年以上の中長期でみると、輸入企業 にとってメリットが出てくる」との見方を示す。

米山氏はまた、「短期的には輸出企業の増益幅が減るということで、中長期 的なメリットよりもマイナス面の影響が大きくなる」と述べる一方、「中長期的 であれば、輸出企業も1ドル=100円や105円でも対応できるだろう」と述べた。

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