野田日銀委員:循環メカニズムに赤信号ともるリスク否定できず(3)

日本銀行の野田忠男審議委員は12日午後、 前橋市内で会見し、国内の生産・所得・支出の循環メカニズムについて、同日 午前の講演で「幾つかの注意信号が点滅し始めている」と述べたことについて、 循環メカニズムが途切れる「瀬戸際にあるというような認識ではない」としな がらも、「将来これが赤信号に変わるリスクは全く否定し切れない」と述べた。

野田委員は講演で、国内の生産・所得・支出の循環メカニズムが「決定的 に途切れてしまう蓋然(がいぜん)性を示唆するような明確な証拠がそろって いるわけではない」としながらも、けん引役である輸出とこれを左右する国際 金融市場や世界経済の動向が「重要なリスク要因」となっており、メカニズム の維持に「幾つかの注意信号が点滅し始めている」と語った。

野田委員は円高の進行については「輸出企業に与える影響は、短期的には 一番大きな問題」としながらも、「時間軸を延ばして考えた場合、交易条件は良 い方向に改善していくため、わが国全体の所得形成力にとってはプラスの方向 に働く」と指摘。「短期的にどういう影響があるのかというのも大事だが、一方 で中長期的な影響もそう軽く見ない方がいいだろう」と述べた。

国際金融市場は「まさに緊迫した状態」

米サブプライム(信用力が低い個人向け住宅)ローン問題に端を発した国 際金融資本市場の混乱に対応するため、海外の5つの中央銀行が緊急の資金供 給の拡大に踏み切ったことについては、国際金融資本市場は「まさに緊迫した 状態にある」と述べた。

野田委員はただ、「国内の短期金融市場は欧米と比較して落ち着いていると いう認識に変わりはない」と指摘。日銀が「従来と特に屈折的な変化をもって オペレーション等の対応をしていくということは、今のところ考えられない」 と述べた。

その上で、「世界全体の市場動向には従来以上の注視が必要だし、その変化 に応じた柔軟、機動的なオペ対応が年度末越えを控えて、ますます重要になっ てきているという認識は日銀の中で十分共有されている」と語った。

主な一問一答は次の通り。

――政府が内示した正副総裁の人事が参院で不同意となったことが市場に与え る影響をどうみるか。

「正副総裁人事は政府、国会で手続きが進ちょく中なのでコメントは控え たい」

――円高が日本経済に与える影響をどうみるか。

「一般的な見方とそう変わりないと思うが、やはり円高が日本の輸出産業、 輸出企業に与える影響は、短期的には一番大きな問題として認識しなければな らないだろうと思う」

「ただ、時間軸を延ばして考えた場合には、交易条件は逆の方向、すなわ ち良い方向に改善していくわけだから、わが国全体の所得形成力にとってはプ ラスの方向、言ってみれば取り戻す方向に働くことがあるので、短期的にどう いう影響があるのかというのも大事だが、一方で中長期的な影響もそう軽く見 ない方がいいだろうと考えている」

――昨日、海外の5つの中央銀行が資金供給の拡大に踏み切ったが、国際金融市 場は緊迫した状態にある。日銀は今後どのように対応するのか。

「総じて言えば、今年に入って一時、沈静化の方向に向かうかに見えた時 期もあったが、2月半ば、さらには2月末から欧米のクレジット市場で信用ス プレッドの拡大など、さまざまな事象がどちらかというと良くない方向に出て きている現象が見られた。そういう状況を受けて、昨日、5つの中央銀行が声 明を出して対策を打ち出した。おっしゃるように、まさに緊迫した状況にある」

「日銀としては国内の短期金融市場は欧米と比較して落ち着いているとい う認識に変わりはない。従って、従来と特に屈折的な変化をもってオペレーシ ョン等の対応をしていくということは、今のところ考えられない。ただ、世界 全体の市場動向には従来以上の注視が必要だし、その変化に応じた柔軟、機動 的なオペ対応が年度末越えを控えて、ますます重要になってきているという認 識は日銀の中で十分共有されている」

――講演で「輸出をけん引車とした生産・所得・支出の循環メカニズムについて、 幾つかの注意信号は点滅し始めているが、先行き、この循環が決定的に途切れ てしまう蓋然性を示唆するような明確な証拠がそろっているわけではない」と 述べた。循環メカニズムが途切れる瀬戸際にあるという印象を受けるがどうか。 また、注意信号が赤信号に変わったら、政策対応を行う用意があるのかどうか。

「生産・所得・支出のそれぞれの項目を見た場合、生産は先般の金融経済 月報でも、先行き増加していくとみられるが、当面横ばい圏内で推移すると指 摘した。循環の起点である生産は長い増加基調を続けているという認識だった が、幾つかの理由-講演でも述べたが、10-12月の生産が特に自動車やIT(情 報技術)、電子部品のところでかなり好調だった反動もある」

「ほかにも、海外経済の先行きに対する不安が何がしか反映されている可 能性も全く否定し切れないところが1つある。もう1つの項目である所得とい う点で見ると、これも金融経済月報できちんと書いてあるが、企業収益は伸び 悩みつつも高水準ということで、足元は従来の企業収益の増勢に少し鈍化が見 られる。そういう意味からすると、従来のように青信号で突っ走っていた状態 よりは、やはり少し注意が必要かなということだ」

「ただ、これも総じて水準としては高い利益を今後も維持していくだろう とみている。従って、瀬戸際にあるというような認識ではない。それははっき り申し上げられると思う。そういう意味からすると、将来これが赤信号に変わ るというリスクは全く否定し切れないが、それに対応する政策はどうかと言わ れても、それはあくまでもリスクの範囲内であるので、それに対する政策対応 うんぬんをここで申し上げるのは必ずしも適切ではないと考えている」

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