M&A成功の秘訣は「コア人材の心つかむこと」-元機構の冨山氏(2

産業再生機構の最高執行責任者(COO)とし て多くの日本企業再建を進めた冨山和彦氏(47)は、合併・買収(M&A)を成功さ せる秘訣は、対象企業の「コア人材の心をつかむこと」と強調、機構で手掛けたカネ ボウの場合、このコア人材は「女性営業部員」だったと語った。

機構解散後にM&A助言などを手掛ける会社を起こした冨山氏は、M&Aによる 取得対象は表面的には株式、財務的には将来の収益になるとしながらも、実際に買う のは「人材」だと指摘。企業価値が設備から知的財産に依存する知識集約型化の進展 を背景として挙げた。冨山氏は5日のブルームバーグ・セミナーとその後のインタビ ューで語った。

再生機構が約4000億円で買収したカネボウの価値は経営陣でも設備でもなく、 店頭で化粧品を売る女性営業部員だったという。冨山氏は人生で最高に緊張した瞬間 はこうしたコア人材の営業部員に話をした時だったとして、「彼女たちの心を失った らオシマイと思っていた」と明かした。

企業によってコア人材は研究員やエンジニアだったりする。コア人材を味方に付 ければ、敵対的買収だとしても問題ないと冨山氏は語る。M&Aは欧米でも8割はう まくいっていないと言われることに触れ、終身雇用が多く「強烈なDNAを持つ」日 本企業はより人材に目配りする必要があると強調した。

サッポロホールディングスの経営陣と労働組合は、米系投資ファンドのスティー ル・パートナーズの買収提案に「反対」を表明した。経営計画、雇用確保や労働条件 の維持について考え方が明示されていないことなどが理由としている。サッポロH労 組は人的側面への配慮の少なさも批判している。冨山氏もスティールの企業経営の理 解度に疑問を呈している。

買収目的の経営統合に支障

冨山氏は、M&Aの取引自体は成功しても、人的側面や会社の成り立ち、文化と いった面をないがしろにすると、買収後の経営統合がうまくいかなくなると指摘した。 このため「M&Aには遊離感、かみ合わない部分がある」とも述べた。

同時に買収後の人材の扱いは重要と指摘、「ポイントは明らかで、フェアな人事 をやること」と強調した。カネボウの化粧品部門を買収した花王について、相乗効果 発揮には時間が必要と前置きした上で「フェアな人事をやればチャンスが出てくる」 と評価した。

日本企業については会社という枠と人的資本という枠が必ずしも一致していない との現状を示した。このため、これを調整する手段としてM&Aは有効であり、件数 や金額が「もっと増えていかなければいけない」と述べた。

カネボウやダイエーを含めて41件の企業を支援して産業再生機構は昨年3月15 日に解散した。その後に冨山氏は経営コンサルティングやM&A助言といった業務を 手掛ける「経営共創基盤」を同年4月3日に設立。現在陣容は70人程度まで拡大し ており、2年目には100人体制を目指している。

冨山氏は1960年生まれで、東京大学法学部在学中に司法試験に合格。東大卒業 後にボストンコンサルティンググループ入社、スタンフォード大学で経営学修士(M BA)取得、2003年4月から産業再生機構COOを務めた。

--共同取材 東京 白木真紀、室谷哲毅 Editor:Kenzo Taniai、Kenshiro Okimoto

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