【米経済コラム】インフレ懸念で利下げは限られる公算-J・ベリー

米連邦準備制度はインフレ環境の悪化を受 け、利下げを小幅に抑制する方針を検討せざるを得ない状況にある。

こうした状況は、連邦公開市場委員会(FOMC)が18日開催する次回の 定例会合で政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標(現行 3%)を0.5ポイント引き下げる一方、一部当局者からは利下げ幅を0.25ポイ ントにとどめるよう求める声が出る可能性があることを示している。

物価の安定と持続可能な雇用の最大化を政策目標にしている連邦準備制度 は、数十年ぶりに深刻なジレンマに陥っている。1つの目標を達成するために 必要な措置が、もう1つの目標を遠ざけてしまう可能性があるためだ。

1、2月の非農業部門雇用者数が2カ月連続で前月に比べ減少し、原油相 場が1バレル=106ドルを超えて過去最高値を更新したことで、状況はさらに悪 化している。

サンフランシスコ連銀のイエレン総裁は7日、パリで開かれた会合で「イ ンフレと雇用双方に対するこの不愉快なリスクの組み合わせこそ、FOMCが 今後金融政策の適切な方針を判断するなか、バランスを取らなければならない ことだ」と指摘した。

7日のFF金利先物を基にしたトレーダー予想では、0.75ポイントの利下 げが実施される確率は98%に達しているが、当局が2つのリスクのバランスを とる必要に迫られていることは、その可能性が低いことを示している。

誤った印象

利下げはインフレ見通しが悪化しているにもかかわらず、連邦準備制度が リセッション(景気後退)回避のため全力を尽くすという誤った印象を与えか ねない。

こうした懸念が、多くのアナリストが予想している次回のFOMC定例会 合前の緊急利下げの可能性を低くさせている。FOMCは前回の定例会合のわ ずか8日前の1月22日に、0.75ポイントの利下げに踏み切り、市場を驚かせた。 前回の定例会合ではさらに0.5ポイントの利下げが実施された。

ダラス連銀のフィッシャー総裁は7日、パリでのインタビューに対し、1 月の矢継ぎ早の利下げについて「われわれがこのような対応を今後も続けると いう期待を市場に抱かせるべきではない」との考えを示した。

連邦準備制度の信頼性が試されているのは、低インフレの維持という中央 銀行としての任務だ。イエレン総裁は「わたしの見解では、エネルギーや食品、 素材、そして為替相場に端を発したインフレ・ショックの影響がインフレ期待 や賃金決定に及ぶのを防いでいるのは、金融政策の信頼性だと思う」と述べた。

インフレ期待

イエレン総裁ほかFOMCメンバーの多くは最近、インフレは今後数年で 落ち着くとの見通しを示している。ただ同総裁も認める通り、この見通しはエ ネルギーや食品価格が「現行水準付近」で落ち着き、インフレ期待も高まらな いことが前提になっている。

バーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長をはじめとする金融当局者 の大半は、インフレ期待は「十分に落ち着いている」ようだとの趣旨の認識を 繰り返し示している。

しかし、ニューヨーク連銀のガイトナー総裁は先週、秘密を漏らしてしま ったかもしれない。同総裁は6日のニューヨークでの講演で「インフレ率は総 合、コアともに予想を上回っており、インフレ期待も高まっている」と述べた。

代替的な措置

インフレ期待と不透明感のどちらが高まっているにしろ、金融当局は身動 きが取りにくくなった可能性があるとの懸念を強め、代替的な措置を探ってい る。

これが、FRBが7日、今月予定している2回のターム物資金入札の規模 をそれぞれ500億ドルと、従来の300億ドルから引き上げると発表した主な理 由だ。昨年12月に始まったこの入札は、金融機関に幅広く流動性を提供するも のであり、利下げだけでは達成できない形で金融市場の逼迫(ひっぱく)した 状態を緩和する可能性がある。

金融逼迫を利下げ以外の方法で緩和する必要があることが、バーナンキ議 長の予想外の提案の背景にあったのかもしれない。議長は4日、住宅差し押さ えの拡大に対応し、銀行は選択肢の1つとして住宅ローン元本の減額を検討す べきだと提案した。

連邦準備制度が注目しているのは、過去のインフレ動向ではなく、1年後 のインフレ見通しだ。米金融当局がインフレをコントロールする能力に対する 信頼感が失われれば、インフレ期待が高まり、景気低迷にもかかわらず、実際 にインフレが加速しかねない。

当局が懸念を抱くのも無理はない。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は、同氏自身の見解です)

-- Editor: William Ahearn, James Greiff

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