訂正:外貨準備、初の1兆ドル超え-積極運用に向け議論高まる可能性

日本の外貨準備が初めて1兆ドルを超え た。1999年1月から2004年3月までの断続的な円売り・ドル買い介入によ って積み上がった外貨建て資産の運用益に加え、保有する米国債の時価評価 額が増え続けているのが主因。中国に次ぐ世界第2位の規模を誇る外貨準備 の積極運用に向けて議論が一層高まりそうだ。

財務省が7日発表した2月末の外貨準備高は約1兆80億ドルとなり、 1月に比べて119億ドル増え、8カ月連続で過去最高を更新した。内訳は、 外国債が8568億ドルと8割以上を占め、外貨預金が1割強の1224億ドル。

最近では新興国の間で外貨準備や原油関連収入など元手にリスクの高 い運用を手掛ける「政府系ファンド(SWF)」の設立が相次ぎ、政府資産 の積極的な運用を追求する動きが目立っている。日本でもこうした動きに後 押しされ、日本版政府系ファンドの設立を求める声も上がっている。

自民党では、国家戦略本部直属の「SWF検討プロジェクトチーム」を このほど立ち上げ、外貨準備の運用益や年金資金を原資にした政府系ファン ド設立に向けた模索を始めた。座長の山本有二前金融担当相はブルームバー グ・ニュースに対し、「今後、外貨準備の規模については当然議論されるべ きだ」と述べるとともに、「一般会計に毎年繰り入れている外貨準備の利子 分(運用益)を原資として組み入れていくことは当然考えたい」と語った。

一方で財務省は政府系ファンドの設立に否定的だ。額賀福志郎財務相は 「高いリスクを伴うことになる。どういう目的で運用していくのか十分議論 し、国民に納得できる形にしなければならない」とした上で、「党ではそう いう問題意識を持って十分議論していただきたい」とクギを刺した。

運用利回りは11%

内外金利差の影響で高い利回りが続き、外貨準備の運用は現在好調に推 移しているのも事実。同省は昨年11月、外貨預金の利子や債券の配当など 外貨建て資産の運用益が約3兆6900億円(2006年度)で、利回りは4.00% に上ることを明らかにした。これに債券の値上がり益(キャピタルゲイン) を含んだ運用利回りは6.7%。過去1年間の利回りは約11%に達している。

外貨建て資産を運用している外国為替資金特別会計からは、1982年以降 ほぼ毎年、運用益の一部を翌年度の一般会計へ繰り入れており、累計では

21.5兆円となる。来年度は1.8兆円の繰り入れを予定している。

同省では05年4月、外為特会が保有する外貨建て資産の運用について 「安全性及び流動性に最大限留意した運用を行うこととし、この制約の範囲 内で可能な限り収益性を追求する」とした基本方針を公表した。

運用対象は米国債を中心とした各国の国債をはじめ、米住宅金融大手の ファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)やフレディマック(連邦住宅貸付抵当公 社)などの政府機関債、世界銀行などの国際機関債、資産担保債券などの債 券に拡大。今夏には、人員を1人増やして国際局為替市場課内に「資金管理 室(仮称)」を設置し、外貨準備の運用を強化する方針だ。

額賀財務相は7日午前の閣議後会見で、今後の運用方針について「基本 的に外貨準備は通貨の安定のためにある。その上に立って流動性、安全性を 確保し、適正な利潤を求めていきたい」と述べるにとどめた。

日本総合研究所の牧田健主任研究員は「米国債などの運用によって3- 4%で安定的なリターンを得られているものを、あえてさらなるリターンを 求める必要があるのか。リスク資産を運用すれば、高いリターンを得る時も 損をする時もあり、安定的に一般会計に繰り入れることは難しい」と指摘す る。

さらに、「小さな政府を目指すなかで、政府系ファンドを国が運用する 必然性は全くない。官から民への流れに逆行している。金融セクターの活性 化というのであれば、税制の見直しや規制改革などによって金融環境を整え るのが政府のやるべきことであり、収益を上げることではない」と言う。

各国の事情

中国は昨年5月、1兆5300億ドル規模の外貨準備の一部を米投資会社 ブラックストーンに出資し、注目を浴びた。同9月には政府系ファンド「中 国投資公司(CIC)」を設立し、2000億ドルを運用。韓国では中国に先駆 けて05年に資産規模200億ドルの「韓国投資公社(KIC)」を設立した。

輸出に大きく依存している中国や韓国は、自国通貨高を抑制するための ドル買い介入の原資として自国通貨で資金調達を行っている。しかし、米国 金利に比べて自国金利が高く、米国債などの安全資産で運用した場合にドル 買い介入が逆ザヤとなるため、高利回りの資産に投資せざるを得ない。国内 金利が超低金利で推移している日本とは違った事情がある。

日本の場合、外為特会の運用益は円ベースで確定しない限り利益として 計上できないため、同額の政府短期証券(為券)を発行しており、資産と債 務が表裏一体となっている。ドル建ての運用益を円に転換すれば、市場でド ル売り・円買い介入との憶測が生じるためだ。運用益が出るたびに為券が増 える現行ルールの解決策について、同省幹部は「問題意識は持っているが、 何ができるかということについてはあまり簡単な選択肢はない」とする。

これに対し、牧田氏は「運用益に関しては円に転換していくのが一番妥 当な選択肢」と主張する。1990年代初頭までドイツ連銀が外貨準備調整とし てドルを売っていた例を挙げ、「今や介入の効果は限られている。日本政府 が方針として介入ではなく、外貨準備を調整すると明確なアナウンスをすれ ば、大きな影響は出ないのではないか」とみる。

第一生命経済研究所の熊野英夫主席エコノミストは「基本的に、巨大な 政府短期証券の発行残高を減らさなければならない。そのためには保有する ドル資産を売るしかないが、為替への影響を考えると売るに売れない。日本 の外貨準備は矛盾の塊。政府系ファンドを設立しても解決しない」と強調す る。

その上で、「誰がどのように管理するのか。損失が発生した際の責任は 誰がどのように取るのか。よく議論した方がよい。最後のツケは結局、国民 が払うことになる」と述べ、慎重な見方を示している。

--共同取材 東京 氏兼敬子 Editor: Hitoshi Ozawa,Hidekiyo Sakihama

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