【経済コラム】信用市場の混乱を歓迎する中央銀行もある-J・ベリー

小さな自由経済国でインフレ抑制に努める 中央銀行ならば、利用できるならあらゆる助けを歓迎するだろう。たとえそれ が世界的な金融市場の混乱に伴うものであってもだ。ニュージーランド(NZ) 準備銀行はまさにそうした中銀だ。

NZ中銀は6日、政策金利を過去最高の8.25%に据え置くことを決めた。 消費者物価指数の上昇率を約5ポイント上回る水準だ。同行は昨年、政策金利 を合計1ポイント引き上げたが、それは景気抑制よりもむしろNZドルの上昇 につながった。

NZ中銀のボラード総裁は同日の四半期金融政策報告で、NZの経済成長 率を2007年の3.3%から今後2年間で約2%に落ち着かせる上で、海外信用市 場の逼迫(ひっぱく)が重要な要因となると指摘した。それが意味するのはつ まり、一部の市場関係者がNZのインフレ抑制に必要だと考えている追加利上 げが不要になるということだ。

2月27日、NZドルは1NZドル=0.8213米ドル付近と、23年前の変動 相場制移行後の最高値を更新した。06年夏時点では0.60米ドルに達していな かった。

NZドル高もあり、多くの同国企業は海外で国内と比べてずっと低い金利 で資金を調達してきたが、米サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅 融資)関連資産の巨額損失に端を発した欧米市場の混乱に伴い、銀行を含む同 国企業の海外での資金調達コストが膨らんでいる。だが、これこそがNZ中銀 の望むところでもある。国内景気の沈静化につながる可能性があるからだ。

NZではほかの多くの国々と同様、所得急増が住宅価格を押し上げ、住宅 ローン残高はわずか4年間で倍増した。個人消費も刺激され、個人の貯蓄率は 米国と同じようにマイナスに転じた。

排出権取引

金融政策報告は、ここ数年の利上げなどに伴い住宅市場が急激に減速して いると指摘。これが家計支出の伸びを鈍化させていると説明した。NZ経済を 今なお支えているのは、そのユニークな環境だ。世界的な乳製品の値上がりが、 乳製品が最大の輸出品であるNZの景気拡大の主因となっている。NZは人口 450万人に対して、羊が3900万匹いるといわれる酪農大国だ。

世界で最初に公式のインフレ目標を導入したNZ中銀は、中期的に消費者 物価指数上昇率を1-3%の範囲内に収めることを目指している。ボラード総 裁は、インフレ率が09、10年に低下傾向となるものの、今年は景気鈍化にもか かわらず3.7%に達する可能性が高いとしている。

同行の金融政策報告は、地球温暖化ガスの排出権取引制度に触れ、これが インフレ圧力を高めることになると分析している。NZ政府は海外からの排出 枠買い入れを求める方針で、燃料と発電のコストが高まる見込みだという。

政府による「物価に直接影響する大きな政策変更」に伴う一次的な影響は、 NZ中銀がインフレ目標維持で政府と交わした取り決めの対象外とされている ものの、NZ中銀はインフレへの無視できない二次的影響を見込んでいる。報 告は、この影響が大きくなれば、インフレ目標達成を目指す中銀への信頼性に も波及しかねないとしている。

気候変動に対する取り組みが本格化するなかで、世界中の中銀にとって、 これは興味深い新たな問題だ。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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