【米経済コラム】銀行の評価額引き下げは行き過ぎなのか-J・ベリー

この数カ月間、金融市場を最も混乱させたの が、銀行のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)関連資産の大 幅な評価額引き下げだった。だが、この引き下げが一部、行き過ぎだった可能性 がある。

バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は2月28日、米上院銀行 住宅都市委員会の公聴会で証言し、米会計規則のために銀行は資産の時価評価を 行う際、取引がほとんどない資産に人為的に低い価格を付けざるを得なくなって いる可能性があると述べた。

バーナンキ議長は、こうした資産を実際の取引に基づいて評価できないこと が「現在われわれが抱える主要な問題の一つだが、その解決方法が分からないし、 どう対処すればよいか見当が付かない」と語った。

資産評価額の引き下げにより、米シティグループなど大手金融機関の一部は 損失補てんのための増資を余儀なくされた。

パンク・ジーゲルのアナリスト、リチャード・ボーブ氏など一部のアナリス トは、銀行が資産評価に用いている手法は「実態を反映していない」と指摘する。

ボーブ氏は2月28日のインタビューで、「この時価評価会計では、銀行は市 場の実勢を反映していない指標に基づいてポートフォリオを評価せざるを得な い」と指摘。銀行が用いる指標の一つは、「米国の商業用不動産の含み損を8% 程度」と示唆しているが、実際は「0.25%」だと説明した。

指標の誤り

すなわちボーブ氏は、銀行は含み損が実際よりも32倍悪いとする指標に基 づいて証券を評価していると強調する。「われわれは事実とは異なる指標に基づ いて評価を行っている。これが不要な問題を引き起こしている」という。

問題となるのは、多くの投資家がリスクを回避しているなか、将来大きな価 値となり得る資産でも今現在、買い手がいなければ、ほとんど価値を持たないと いうことだ。

時価評価を義務付けている理由の一つは、資産の時価が下がっているのに資 産価値をいつまでも購入価格のままにしておく企業の行為を防ぐためだ。

だが、現在のように金融市場が混乱しているときに、時価評価は意味がある のだろうか。多くのサブプライム関連資産の価値は額面価格を大きく下回ってい る。

時価評価の猶予期間

上院銀行委の公聴会でバーナンキ議長に質問を投げ掛けたのはチャールズ・ シューマー上院議員だった。同議員は「多くの人から」銀行の資産評価額は「人 為的に低かった」と聞いたと述べた上で、評価額の引き下げの結果、資本金が奪 われ「融資ができなくなり、身動きが取れなくなっている」と指摘。一つの対策 は、時価評価を6カ月間猶予することかもしれないと提言した。

シューマー議員は、「資産価値を評価するのは極めて難しく、過小評価すれ ば、過大評価した場合と同じ程度に悪い影響を及ぼすだろう」と語った。

だがバーナンキ議長はこの意見に同調せず、時価評価の猶予を認めた場合、 投資家が何かを隠しているのではないかとの疑念を抱く恐れがあると反論。また これは会計審議会の責任だと述べた。

シューマー氏の話には誇張し過ぎている点があった。評価損などにもかかわ らず、米国の金融機関の大多数は今でも十分な資本金を持っているのだ。

米連邦預金保険公社(FDIC)が2月26日公表した四半期報告書によれ ば、昨年末時点でFDICが預金保証をしている金融機関の99%が資本基準の 上限か、それを上回る水準だった。

確かに07年第4四半期は金融業界にとって最悪の時期だった。トレーディ ング関連損失は106億ドル(約1兆1000億円)と、四半期ベースで初めての損 失となった。純利益は計58億ドルと、第4四半期としては91年以来の低水準だ った。

しかし評価損計上にもかかわらず、銀行業界の総資産は3320億ドル (2.6%)増え、国内預金額は1710億ドル(2.5%)増と、四半期ベースで過去 最大の伸びとなった。

バーナンキ議長が証言で言及したように、恐らく年内に若干の中小銀行の破 たんがあるだろう。昨年には3行が破たんしたが、影響が広がることはなかった。

多くの投資家が、巨額の評価損を計上しても銀行がどれだけ強じんであるか を理解したなら、市場をめぐる執拗(しつよう)な懸念が若干は解消されるだろ う。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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