ECBの利下げ抵抗に援軍-東欧向け輸出好調で、ユーロ圏景気が好調

欧州の景気拡大が、ここ10年で最悪のイン フレをユーロ圏が克服する時間を欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁に与え ている。

東欧向けや他の新興市場向け輸出需要の伸びなどを理由に、ユーロを使用す る15カ国で景気がもちこたえている兆しが増している。これにより、ECB政 策委員会メンバーの中でもインフレ抑制を特に重視する委員は、利下げへの圧力 を食い止める援軍を得ている。

逆に、利上げへの圧力が増す可能性がある。欧州連合(EU)の行政執行機 関、欧州委員会が今年のインフレ率は9年ぶり高水準になると予想しているため だ。モルガン・スタンレーのロンドン在勤エコノミスト、エルガ・バルトシュ氏 は、ECB政策委員会メンバーのうち「タカ派に有利なデータが出始めている」 と指摘する。

米国のリセッション(景気後退)入りの可能性と世界的なインフレ高進とい う2つの脅威に対応する最善策に関して、世界の主要中銀は真っ二つに分かれて いる。バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる米金融当局は利下 げを実施し、ユーロは対ドルで過去最高値を付けた。一方、スウェーデンやオー ストラリアを含む少なくとも7カ国の中銀は利上げを行った。ECBでは、トリ シェ総裁やウェーバー独連銀総裁を含む政策委員会メンバーが、東欧やアジアな どの市場の需要が米景気減速による影響を相殺していると説明している。

バルトシュ氏もユーロ圏経済について、「新興市場が好調に動いているので、 再び加速する可能性がある」と語る。

景気好調示す指標

ユーロ圏経済の好調さ持続を示す最近の指標としては、ドイツで2月の企業 景況感指数が市場予想を上回ったほか、失業率が1992年以来の水準へ低下した ことが挙げられる。ユーロ圏のサービス業でも景気加速がみられた。

こうした兆候はインフレ懸念が増しているトリシェ総裁には好都合だ。ウェ ーバー独連銀総裁は先週、インフレの脅威を投資家が「明らかに」小さく見積も っていると指摘。欧州委は今年のユーロ圏のインフレ率が2.6%と、ユーロが導 入された1999年以来の高水準になると予想している。ECBの目安は2%をや や下回る水準。

もちろん、ユーロ圏では景気が減速している国もあり、利下げ圧力は消え去 っていない。モルガン・スタンレーはイタリアが今年リセッション入りする可能 性があると予想。ドイツ銀行は、過去10年にわたってスペイン経済を支えてき た同国の住宅価格が今年は8%下落する恐れがあるとみている。

また、ユーロが過去1年で対ドルで15%上昇したことによる景気への影響 も懸念され、2月早くには利下げ見通しを後退させた投資家の間でも、再び同見 通しが復活してきている。ユーロが過去最高値の1ユーロ=1.5239ドルを付けた 2月29日、欧州銀行間貸出金利(EURIBOR)先物12月限は0.08ポイン ト低下した。

トリシェ総裁自身も、約1カ月前には景気見通しについて「不透明感は異例 に高いままだ」と発言し、利下げ期待を高めた。それでも物価上昇圧力が高まる なか、同総裁は市場の早期利下げ観測を抑えざるを得なくなっている。総裁は景 気見通しがはっきりするまで、ECBの金融政策は中立だと強調している。

ECBは次回の定例政策委員会を6日に開催する。ブルームバーグ・ニュー スがエコノミスト54人に実施した調査によれば、全員が同中銀は政策金利を4 %で据え置くと予想している。ECBは景気とインフレ見通しの修正も今週 発表する。

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