福井日銀総裁:潜在成長率高める1つの方法は移民受け入れ緩和(2)

日本銀行の福井俊彦総裁は22日午後、都 内で講演し、「日本の潜在成長率が欧米に比べて低い主な理由は労働人口要因で あり、人口の伸びの違いには移民人口の違いが影響している」とした上で、「日 本の潜在成長率を高める方法の1つは、おそらく移民受け入れの緩和だろう」と 述べた。中央銀行総裁が移民の受け入れに言及するのは異例。福井総裁は3月 19日に迫った退任を前に、日本の中期的な課題について持論を訴えた。

福井総裁は「持続的に成長していく上で最大の課題は少子高齢化が進展し ていくことだ」と指摘。「少子高齢化の中で、いかにグローバルな活力を取り入 れながら経済の実力を高めていくことができるかが問われている」と述べた。

福井総裁はさらに、「少子高齢化の問題は、単に経済の観点からだけでは とらえきれないということは念頭に置いておかなければならない」とした上で、 「移民受け入れの緩和」に言及。「そうした社会を望むのか、あるいはそれほど 成長しなくても単一的な社会を望むのか、より深く議論すべき時期に来ているよ うに思う。グローバル経済の中で日本経済がどのような位置取りを目指すのか、 はっきりさせていくことが必要になっている」と語った。

財政再建にフリーランチはない

福井総裁は財政再建についても触れ、「重要なことは、これが中長期的な 問題であり、短期的な効果しかない方策は解決につながらないということ、そし て、何らかの意味での所得配分の見直しが必須であるということだ」と指摘。 「財政再建に近道やフリーランチはない」と述べた。

その上で、「パイの切り方を変えるプロセスを円滑に進めるためには、成 長率を高めていくことが重要だ」と指摘。「大切なのは実際にパイが大きくなる こと、つまり実質で成長率が高まることだ。実質成長率が高まらないで物価上昇 率が高まるだけでは効果はない」と述べ、名目成長率を高めさえすれば財政再建 が可能になるという主張を強く批判した。

福井総裁はその理由として、「年金の金額が変わらなくとも物価が上がれ ば、年金額が減るのと実質的に同じことだからだ」と指摘。「財政収支という意 味でも、物価上昇によって楽になることはない。物価上昇率が上がれば、名目の 税収は増えるが、歳出も増えるし、金利の上昇に伴って国債の利払いも増えると 考えられるためだ」と述べた。

バブルや金融システム混乱などリスクも考慮

福井総裁は中央銀行の役割については、「適切な金融政策によってそれぞ れの国の経済・物価の安定を図ることが、全体としての世界経済の安定につなが るというのが、世界の中央銀行の共通認識だ」と指摘。「金融政策の目的が自国 の経済と物価の安定であるという基本は変わらない」とした上で「それを達成す るためには、物価指数や成長率を見ているだけでは不十分だ」と述べた。

福井総裁は「長い目でみた経済や物価に影響を与える可能性がある要因、 たとえば資産価格や金融市場、金融システムの状況などにも目配りする必要があ る」と指摘。「今回のサブプライム(信用力が低い個人向け住宅ローン)問題や 日本のバブルなどの経験にかんがみると、資産価格の変動は時として、中長期的 な経済・物価に、非常に大きな振幅をもたらすことがある」と語った。

福井総裁はその上で「長い目でみた経済・物価の安定を考える場合には、 バブルや金融システムの混乱のように、起こる可能性は高くなくとも、コストの 大きいリスク要因を常に考慮に入れる必要があるし、その際には、資産価格や金 融面の状況などの情報をよく分析しなければならない」と述べた。

米景気さらに下振れるリスクも

福井総裁は足元の経済情勢については「米国経済は減速傾向が一段と強ま っている」とした上で、「住宅市場の調整や金融資本市場の変動の影響が予想以 上に大きい場合には、資産効果や信用収縮、企業や家計のマインド悪化などを通 じて、景気がさらに下振れるリスクがあり、十分留意する必要がある」と述べた。

福井総裁は世界経済については、「全体として拡大を続けているが、国際 金融資本市場の動揺が続く中で不確実性が増している」と指摘。「国際金融市場 の変動や米国経済の下振れの程度によっては、新興国など他の地域の経済も影響 を受ける可能性があり、注意が必要だ」と語った。

日本経済については「生産・所得・支出の好循環メカニズムが基本的に維 持される中で、物価安定の下で息の長い成長を続ける蓋然(がいぜん)性が高 い」としながらも、「海外経済や国際金融資本市場の動向、エネルギー・原材料 価格の影響といったリスク要因については、十分注意を払っていく必要がある」 と述べた。

「損失生じること避けられない」

当面の金融政策運営については、「先行きの金融政策運営についての基本 的な考え方は、これまでと変わりない。引き続き、経済・物価の見通しの蓋然性 を見極めるとともに、上下両方向のリスクを丹念に点検しながら、適切な政策運 営に努めていく」と語った。

福井総裁は米サブプライム問題については「国際金融市場はなお不安定な 状態が続いている」と指摘。これは「リスク再評価」の過程であり、「調整には 時間を要する」として、「その過程で金融機関などに損失が生じることは避けら れない性質の問題だ」と述べた。