「男は黙って」1年超のサッポロH:米スティール買収提案拒否の公算大

「男は黙ってサッポロビール」-1970年に一世 を風靡(ふうび)した広告のように、サッポロホールディングスは1年超、米系投資 ファンドのスティール・パートナーズからの買収提案に沈黙を守った。提案への意思 表明をしなければならない期日までの残された時間は2週間を切ったが、企業全体の 利益を損なうなどとして拒否する公算が大きい。スティールはブルドックソースとの 攻防と同様に難しい選択を迫られる。

サッポロH株を66.6%まで買い増すため、1株825円で1500億円超の友好的T OB(株式公開買い付け)―2007年2月15日にスティールは、取締役会の賛同を前 提にした買収を提案した。サッポロHは直ちにみずほ証券を財務アドバイザー(FA、 日興シティグループ証券も追加)として、買収防衛策の手続きを開始した。

買収防衛ルールに沿って買収目的などについてスティールに情報提供を要請、回 答の受け取りを繰り返して外部有識者による特別委員会に提案を諮問したのが1月、 「企業価値を毀損(きそん)する恐れあり」との回答を2月4日に受け取った。これ を踏まえて提案への賛否を示す期日は3月5日に迫っている。

防衛策で認められたこの1年超を利用してサッポロHは、不動産事業で米モルガ ン・スタンレー証券と資本・業務提携を結び、中期計画も改定して独自に企業価値を 高める姿勢を見せた。特別委の見解を最大限尊重するとも表明しており、スティール 買収提案に賛成する可能性は低い。

みらいコンサルディングの新木啓之M&A担当ディレクターは、サッポロHにつ いて「ビール会社の中でも古い旧財閥の芙蓉グループ中核企業で、外部の資本を前向 きに受け入れる余地は全くない」と述べた。サッポロHが買収提案を受け入れないと の予想は、企業の合併・買収(M&A)に詳しい関係者の間でほぼ一致している。

サッポロHが提案を拒否した場合、スティールとしては①敵対的となるTOBを かける②市場で株式を買い進む③委任状勧誘で株主総会での役員入れ換えを目指す④ 友好的買収提案を撤回するのみ――などの選択肢が考えられる。

スティールの選択肢

市場で株式を買う場合は株価が上昇する、TOBや委任状勧誘は勝てる見込みが ないと踏み切りにくい。スティールは昨年、天龍製鋸に敵対的TOBを仕掛け、アデ ランスなどの総会で株主提案をしたが、いずれも失敗している。

サッポロHは3月28日に定時株主総会を開催する予定。議案を盛り込んだ総会招 集通知は開催日の2週間前までに発送する必要がある。スティールはこうしたタイミ ングも見計らってサッポロHへ次の手を打つことになる。

スティールがTOBに踏み切り、サッポロHが新株予約権発行といった防衛策を 発動した場合、「スティールが発行差し止め仮処分を申請して法廷闘争に持ち込む可 能性はある」(西村あさひ法律事務所の岩倉正和弁護士)。サッポロHが新株予約権 について総会に諮るかどうかといった不確定要因はあるが、防衛策をめぐる法廷闘争 でスティールは岩倉弁護士が助言したブルドックソースに負けたばかり。

法律事務所はスティールがアンダーソン・毛利・友常法律事務所、サッポロHは 長島・大野・常松法律事務所を起用している。

スティールが過去に買収を仕掛けたソトー、ユシロ化学工業、明星食品、ブルド ックは買収防衛策を導入していなかった(ブルドックは事後に買収対抗策を導入・発 動)。防衛策をめぐる裁判所の判断への司法関係者の関心度は高い。

サッポロH『のらりくらり』かわす

スティールに批判的な一橋大学大学院の服部暢達客員教授は、サッポロHについ て「東京高裁で濫用的買収者と認定されたスティールに真正面から対応する必要はな く、実際『のらりくらり』かわすという、いい対応をしている」と評価した。

スティールはサッポロ経営陣ばかりでなく、これまでのM&Aの過程で経済産業 省の甘利明大臣や北畑隆生事務次官を筆頭に政治家、官僚からも批判を受けている。

新生証券の宮川淳子シニアアナリストは、スティールについて「最終的にサッポ ロHへのTOBを撤回、保有株をなんらかの方法で手放す可能性が高い」と予想した。

一方、モルガン・スタンレー証券の神山直樹ストラテジストは、サッポロHがス ティール提案を拒否した場合、株式市場にいいニュースではないと強調した。株主の ガバナンス(企業統治)を通じた効率化を否定する前例にもなりかねないと指摘した。

サッポロHの株価はスティール買収提案直後の昨年2月19日に同年初来の高値 (960円)を付けた。一時低迷した後にモルガンSとの提携で買い進まれたが、2月 以降は700円台で推移している。スティールTOBは実現しないと市場は読んでいる。

--共同取材 東京 山崎朝子 Editor : Masashi Hinoki、Yoshito Okubo

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