食糧確保目指す中国、フィリピンで農地利用へ-現地農民の不満高まる

フィリピンに住むジュアン・ディエゴ氏 (80)は20年前、マニラの北にある広さ1ヘクタールの水田の所有権をめぐっ て裕福な土地所有者やフィリピン政府と争った経験がある。そしていま、中国人 が自分の農地を取得してしまうのではないかと懸念している。

複数の中国企業が昨年、コメやトウモロコシ、サトウキビを栽培するため、 フィリピンで120万ヘクタールの土地を借りることで合意。フィリピンのアロヨ 大統領は、50億ドル(約5400億円)規模のこの契約がフィリピン人向けの食糧 の生産拡大につながると主張するが、現地の農民や議員らの反対により契約は保 留されている。

マニラから205キロ離れたギンバで、娘や4人の息子とともに農業を営むデ ィエゴ氏は「フィリピン政府や中国側はこの契約をパートナーシップと呼ぶが、 結局は中国人が地主となり、われわれはあくせく働くことになるだろう」と語る。

フィリピンの農民たちは、スペインと米国の統治下で400年以上にわたって 他人の土地で働くことを強いられた歴史があるため、警戒しているのだ。19日 には国会議員3人がフィリピンの最高裁判所に対し、食糧輸出は憲法違反である として、中国企業との契約の取り消しを求める申し立てを行った。

米農務省(USDA)の統計によると、フィリピンの昨年のコメ輸入量は 190万トンと、世界最大だった。この量は全消費量の約16%を占める。小麦の輸 入量は235万トンで、実質的には全消費量を輸入に依存している。

リサ・ホンティベロス・バラケル議員は「この合意は良く言えば思慮が足り ず、悪く言えば危険だ」と述べ、「フィリピン政府は自国の食糧確保を優先する べきだ」との見方を示す。

保留された契約

不満が高まるなか、アロヨ大統領は昨年9月、契約を保留。ヤップ農業相に よると、フィリピン政府は、契約を復活させる前に農民と協議する見通しだ。

農業改革担当のジェルンディオ・マドゥエノ次官によると、農地は、フィリ ピン政府が1988年以降、土地を所有しない農民に対して分配した500万ヘクタ ールのなかから貸し出される可能性がある。中国大使館の経済・商業担当官、リ ャン・ウェンタオ氏によると、フィリピン政府と中国企業との契約期間は25年 で、フィリピン人の農民が雇用される見込み。農民らは収穫高の最大25%を受 け取る見通しだ。

約13億人の人口を抱える中国は、国内の農地だけでは食糧需要に対応でき ないため、海外での農地確保を目指している。中国の新華社通信は昨年4月、中 国では2000-05年に実施された5カ年計画の下で、毎年平均123万ヘクタール の農地が失われたと報じた。