米地方債入札の不成立急増:ウォール街の影響力、あらためて浮き彫り

米国で州政府など地方自治体や地方公共団 体が発行する入札方式証券(ARS)の需要が落ち込み、十分な応札が集まら ず入札が不成立となるケースが相次いでいることは、ウォール街の金融機関に は監督当局もかなわないということを示しているのかもしれない。

今月に入り数百の地方債入札が不成立となり、発行体の借り入れコストは 最大で20%上昇した。米ゴールドマン・サックス・グループやシティグループ、 スイスのUBS、米メリルリンチといった金融機関のディーラーが、自己資金 で地方債の買い入れをやめたことが大きく影響している。

過去15年間で2度の調査があったものの、監督当局は応札操作と情報開示 の欠如を容認してきたが、ここにきて3420億ドル(約37兆円)規模のARS 市場が納税者の負担を犠牲に消え去ろうとしているのを静観せざるを得ない状 況だ。

米証券取引委員会(SEC)の地方債担当責任者、マーサ・ヘインズ氏は 21日までにインタビューに応じ、不適切なディスクロージャー(情報開示)が 「金利と流動性に対するブローカーを兼ねたディーラーの影響力を覆い隠して きたのかもしれない」と述べた。「ディーラーが応札を減らしたことで生じたと される最近の入札不成立急増は、こうした懸念に十分な根拠があることを示し ているようだ」としている。

フロリダ州タラハシーのハリケーン被害に対する住宅所有者向けの保険を 扱うシチズンズ・プロパティー・インシュアランスは大きな打撃を受けた。同 州運営のシチズンズが発行した総額47億5000万ドルの証券の一部に対する金 利は15%と、5%から急上昇した。入札を仕切るUBSが13日に入札不成立 を容認したためだ。

「金融機関が支え」

シチズンズのシャロン・ビンヌン最高財務責任者(CFO)は、「金融機関 が支えだった。買い注文よりも売り注文の方が多ければ、金融機関がそのギャ ップを埋めてくれて、入札が不成立となることはなかった」と話す。

ゴールドマンとシティ、UBS、メリルの関係者はコメントを控えている。 UBSは今月、十分な応札の集まらない債券を買い入れない方針をブローカー に告げた。メリルはARSの購入を減らすとしている。

米国債や株式と異なり、ARSには日々の情報源がない。発行体は、入札 で買い手が見つからなければ、最後の手段として、金融機関側の買い入れに依 存している。

クレジットカード大手の米アメリカン・エキスプレス(アメックス)向け にARSが最初に発行された1984年以来、高金利を求める投資家の需要を背景 にこの市場は拡大してきた。

ここに至るまでの間、SECは1995年、アメックス向けの入札を操作した として米リーマン・ブラザーズ・ホールディングスに85万ドルの罰金を科した。 その2年後、証券会社15社がARSで談合があったとの主張に対し和解するた め1300万ドルをSECに支払った。金融機関側は不正行為を肯定も否定もして いない。