クレディ・スイスCEOの信用問題か-突然のABS評価額引き下げで

スイス2位の銀行、クレディ・スイス・グ ループのブレイディ・ドゥーガン最高経営責任者(CEO)が、国債から複雑 なデリバティブ(金融派生商品)まで対象にした同行の取引が株主に「安心感 を与える」と保証したのはほんの1週間前のことだった。

そのため、一部トレーダーの価格設定ミスが原因で資産担保証券(ABS) 評価額を28億5000万ドル(約3075億円)引き下げるとの19日の発表は、驚 きを持って受け止められた。クレディ・スイス株は同日、6.6%下げた。

シュローダー・インベストメント・マネジメント(ロンドン)でクレディ・ スイス株を含む約100億ドル相当の資産運用を担当するアンディ・リンチ氏は 「10日も経たないうちに態度が突然変わって、『しまった。30億ドルの引き下 げだ』と言われたら、今後明らかになる問題がこれ以上ないとは全く確信でき ない」と語る。

今回の発表は、昨年5月に就任したドゥーガンCEO(48)にとって、最 大のマイナス点だ。米国籍の同氏はこれまでアナリストから称賛を受け、カタ ール投資庁(QIA)を含む投資家を引き付けてきた。クレディ・スイスが先週 発表した2007年決算では、米国のサブプライム(信用力の低い個人向け)住宅 ローン市場崩壊の影響をかわした同行の姿が示されていた。

昨年10-12月(第4四半期)決算発表後の12日のインタビューで同CE Oは、「評価損や諸問題が今後発生しないと保証するのが良い考えかどうか分 からない」と前置きしつつも、「リスク管理におけるこれまでの実績から、わ れわれが今後もうまくやっていけるとの安心感を与えられると感じる」と述べ た。

ドゥーガンCEOは19日のアナリストや記者との電話会議では、値洗いが 遅れた「少数の」トレーダーの取引を停止したことを明らかにした上で、同行 のリスク管理を正当化。ミスが「迅速に、内部調査で見つかったことは非常に 良い兆しだ」と語った。さらに、07年決算発表時点では、先週発覚したこの価 格設定ミスが問題を引き起こす可能性を認識していなかったと説明している。

格下げの可能性も

同CEOによれば、住宅ローン担保証券(RMBS)や債務担保証券(C DO)を中心とした評価額引き下げは08年1-3月(第1四半期)の市場動向 の結果によるもの。クレディ・スイスは同四半期業績について、依然として黒字 だが、純利益は約10億ドル程度押し下げられると発表した。また同行広報担当 者によれば、3月18日に予定する年次報告書公表前に内部調査を終了する。

クレディ・スイスの19日株価終値は前日比3.75スイス・フラン安の53フラ ン。時価総額は541億フラン(約5兆3300億円)に下がった。また、CMAデ ータビジョンによると、同行の社債保証料を示すクレジット・デフォルト・ス ワップ(CDS)スプレッドは17ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%) 上昇し、過去最高の177bpを付けた。

米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は同日のクレデ ィ・スイスの発表を受け、「今件は管理や評価、リスク管理手続きが適切かどう か、多大な疑問を喚起するものだ」とし、同行の債務格付けを引き下げる可能 性を指摘した。