クレハ社長:膜製造で水処理事業に本格参入-アジアで排水分野狙う

化学メーカーのクレハは早ければ年内にも、 家庭用浄水器から産業用まで利用されているフィルターである中空糸膜の高機能 製品を自社で開発・生産し、環境問題で注目を集める水処理事業に本格的に参入 する。同社はこれまで膜製造メーカーに原材料を供給していたが、同社の製造技 術を転用し、成長が続くアジア地域を対象に競争力のある製品ができる見込みだ として決断した。同社の岩﨑隆夫社長が20日までにブルームバーグ・ニュースに 明らかにした。

同社はこれまで水処理の膜の原料となるフッ化ビニリデン樹脂を東レや旭化 成などのメーカーに提供してきた。日本で同樹脂を製造するのはクレハのみ。今 回、同社の持つ皮膜技術を応用し排水向けに高いフィルター機能をもつ製品を製 造することで新分野へ挑戦し、高い需要が期待できる環境分野に取り組み事業を 多様化する。

水は戦略的コモディティー

岩﨑社長は将来的に「水は石油よりも戦略的に重要なコモディティーになる 可能性がある」として、数年前から水処理プラントなどを建設するなど新事業の ひとつとして取り組んできた。中空糸膜の「技術を最近確立し、1年ぐらい前か ら排水処理、下水処理の模擬プラントを運転している。実績を積み重ねてきて、 事業化のチャンスがあると判断した」と語る。

同社が新事業に参入する強みとしては、膜原料の保有と膜製造の新技術で特 許を取得済みである点。同社は、下水、排水に特化した膜を製造する。同社長は 「中国では排水がすでに問題化している」と述べ、中国を中心にアジア地域で同 事業を展開する見通し。しかし、具体的な事業規模や事業地域、また膜製造から プラント建設まで一貫して手掛けるのか、などは採算性などを考慮して検討し正 式決定後に発表すると述べた。

水再利用では膜が鍵

水処理分野を研究・分析している富士経済の大阪マーケティング本部の高田 圭介・研究員は「海外では水の再利用に関心が高く、その鍵となるのが膜だ」と 指摘する。膜製品は、除濁・除菌、飲料化向けのMF・UF膜などがある。高田 氏は「MF・UF膜では中空糸膜が現在の膜モジュールの主流を占めている。今 後、排水処理分野では、生物処理と膜処理を組み合わせたMBR(膜分離活性汚 泥法)を中心に、海外では10%以上の伸びが期待されている」と語る。

富士経済では、プラント、装置、ユニットなどを含まない水処理向け膜モジ ュールの世界市場規模は1300億円程度と推計している。同研究所によると国内の 水処理・水再生分野の2007年度の予測数値は6836億円となっている。

中国市場は今後拡大の見通し

また、環境市場調査サービス会社、エンヴィックスの中里純啓社長は「世界 の浄水、廃水処理の製品とサービスの市場規模は、2010年には1830億ドルにな ると予測されている。うち、世界の水処理用膜市場では、2008年には90億ドル となるだろう」とした。中国については「世界銀行の中国向け融資の約半分が都 市上下水道プロジェクトに振り分けられている」として、今後拡大する市場だと の見方を示した。

クレハは、2005年10月に呉羽化学工業から社名を変更。同時に、従来の化 学製品原料主体の事業体制から、岩﨑社長の経営方針により一段と高付加価値の 原料や製品製造に重きを置く経営にシフトしている。化学分野の原料や製品に加 え、断熱材として高い成長の伸びが続く炭素繊維やPPS(ポリフェニレンサル ファイド)が事業として成長し収益の柱の一角を占める。

クレハの株価は前日比8円(1.3%)安の588円(午前10時6分現在)。