東芝がHD-DVD事業撤退を発表、次世代規格はBDに一本化へ(4)

東芝は19日、3月末をめどに次世代DV D(デジタル多用途ディスク)「HD-DVD」事業を打ち切ると発表した。 レコーダーとプレーヤーの開発・生産を停止し、パソコンやゲーム向けなど駆 動装置(ドライブ)製造も顧客の需要に配慮しながら量産を終了する。これに より次世代DVDの規格はソニーなどの推す「ブルーレイディスク(BD)」 に一本化されることになった。

東芝は米マイクロソフトなどと組み、BDとの規格争いを展開。しかし、 最大の激戦市場である米国で1月にワーナー・ブラザーズがBD支持を表明し、 映画大手7社のうちHD-DVDは2社となった。さらに2月にはレンタル業 者や小売り最大手のウォルマート・ストアーズも離れ、撤退に追い込まれた。

東芝の西田厚聡社長は19日夕の記者会見で、ワーナーの方針変更が発端 となって「勝ち目がない」事業環境となったため「苦渋の決断」をしたと説明。 16日以降の報道で数百億円とされている撤退損失の額は確定していないものの、 基本的には08年3月期で処理する意向を示した。

西田氏はさらに、次世代DVDでBD陣営にくら替えしてプレーヤーやレ コーダーを生産・販売する計画は「現時点で全くない」と断言。むしろデジタ ル情報家電の本格普及時代に備えて、半導体メモリーなど同社の強みを生かし た「次世代映像事業の中長期戦略を構築する」と語った。

関連してみずほインベスターズ証券の石田雄一アナリストは、記憶媒体と しての次世代DVDについて、ビデオテープや従来のCD、DVDに比べると 「商品力は落ちている」と指摘。半導体メモリー使用のSDカードなどが「容 量やコスト面で追いつくのは時間の問題。あと数年では」と指摘。東芝がメモ リー増産を19日に同時発表した点をとらえ「次世代DVDで中途半端な生き 残りを目指すよりも、メモリーに注力するのは有効な戦略」とみている。

本格普及前の決着

次世代DVDの世界初製品は、ソニーが2003年4月に日本で発売したB Dレコーダーだった。両陣営のプレーヤーとレコーダーが出そろったのは06 年の歳末商戦から。北京五輪の需要増を期待し、昨年末に各社が品ぞろえを充 実させたものの、市場関係者の間では「本格的に普及するのは08年度から」 (クレディ・スイス証券の田端航也アナリスト)の見方が一般的だ。

ソニーの広報担当者、遠藤真代氏によると同社は、次世代DVDのプレー ヤーとレコーダーの世界市場規模は07年度が計約200万台で、08年度は600 万台程度に拡大すると試算。パソコンや家庭用ゲーム機「プレイステーション 3(PS3)」に搭載のBDドライブは含まない。PS3は06年11月の発売 から昨年末までに、世界で1049万台(卸売りベース)を販売している。

ソニーの広報担当者、吉田成宣氏は「規格の一本化は消費者と関連業界の 双方を利するものだ」とコメント。引き続きBD事業への注力を進める意向を 示した。

プレーヤー販売は70万台

一方、東芝の西田社長によると、HD-DVDプレーヤーの世界販売台数 は累計約70万台で、うち北米60万台、欧州10万台。日本は約1万台。国内 販売のみであるレコーダーは約2万台。マイクロソフトのゲーム機「Xbox 360」向けドライブは推定30万台程度。パソコンに搭載された形で売れたドラ イブは世界で約30万台、ドライブの単独販売は200万台という。

マイクロソフトは東芝のHD-DVD撤退報道を受けて18日、「HD- DVDの動向がXbox360の売れ行きには響かないと確信している」とのコ メントを発表していた。

「決め手」の変質

映像記憶媒体をめぐっては、1970年代後半にビデオテープの規格争いがあ った。ソニーが開発したベータマックスと日本ビクター開発のVHSが争った が、松下電器産業をはじめ電機メーカーの大多数がVHS側に付いたことが勝 負を分けた。

次世代DVDでは、西田社長が19日の会見でワーナーの「寝耳に水」の 方針変更が撤退につながったと指摘したように、メーカーではなく映画会社や 小売り業者の動向が決め手となった。

みずほインベ証の石田氏は、当面は「レンタル店のDVDがBDに置き換 わる」形が続くとみている。ただ、通信の大容量化で高品位映像をインターネ ットで配信することも可能になりつつあると指摘。実際、NTTが光ファイバ ーを利用して3月末に商用化する次世代通信網(NGN)では、高品位映像を 放送に似たスタイルでネット配信するサービスも行う。

石田氏は「VHSは市場に出回り始めて20年過ぎた2000-01年に、レン タル店などでの主役をDVDに明け渡した」としたうえで、BDが来期から本 格普及するとの認識を基に「従来のDVDは7年で終わる」と指摘。次世代D VDの商品サイクルも5年程度ではないかとみている。CS証の田端氏も、次 世代DVDは5年後の「13年に普及のピークを迎える」との見通しを示してい る。

東芝の株価の19日終値は前日比5円(0.6%)安の824円、ソニーは同 110円(2.2%)高の5010円。