米利下げの行き着く先は中国の人民元上昇容認-アジア中銀も同じ状況

好むと好まざるにかかわらず、中国には人 民元の対米ドル上昇容認しか選択肢がない。

元上昇の加速容認を求める欧米からの圧力に中国当局が抵抗しても、同国 の世界最速の経済成長と11年ぶり高水準のインフレ率、市場介入のコスト高が 相まって、元は値上がり加速を余儀なくされると、米パシフィック・インベス トメント・マネジメント(PIMCO)やスイスのプライベートバンク、ピク テは指摘する。

また、この2社と米証券大手メリルリンチによれば、タイとマレーシア、 シンガポール、フィリピンの中央銀行も中国と同様の状況にあり、これらの国 の通貨は投資妙味を増している。ブルームバーグ・ニュースが為替ストラテジ ストを対象に実施した調査によれば、今年、ドルに対する上昇率が上位10位内 に入る通貨のうち9通貨がアジア通貨となる見込み。

PIMCOで600億ドル相当以上の新興市場債と通貨の運用を担当するラ ミン・トルーイ氏は「今後、介入は減るだろう」と指摘、「アジア中銀数行は、 一段と速い通貨上昇がインフレを抑制する重要な手段と認識している」と語る。

人民元は昨年7%上昇後、今年に入ってからはこれまでに1.7%値上がり して1ドル=7.1825元。米銀JPモルガン・チェースはさらに14%、同シテ ィグループは6%、それぞれ上昇すると予想している。

タイのバーツは年初来で3.7%上昇して1ドル=32.51バーツ、台湾ドル は2.2%上昇の1ドル=31.74台湾ドルで取引されている。また、マレーシア のリンギットとシンガポール・ドルは10年ぶり高値に近い水準となっている。

介入のコスト

国際通貨基金(IMF)はアジアの新興国の成長率が今年は8.6%と、昨 年の9.6%から低下すると予想。それでも米国で見込まれる1.5%のほぼ6倍 だ。また、日本を除くアジアの主要10カ国の消費者物価指数は平均で年率5.3% 上昇しており、これも米国の4.1%上昇を上回る(ブルームバーグ調べ)。イン フレ高進は利上げ観測につながり、これもアジア通貨の妙味を増す結果になる。

アジア通貨が急激に上昇して輸出企業に悪影響を与えないよう、アジアの 中銀はこれまでにドル買い介入を実施。その結果、4兆ドル(約431兆円)も の外貨準備が積み上がった。ただ、介入すれば、現地通貨の供給が増え、イン フレを助長させる。これを防ぐため、中銀は通常、債券発行によって市場から 余剰資金を吸い上げる。

この選択肢のコストが高くなっている。債券の利払いは外貨準備の投資益 で賄うが、米当局による昨年9月以来5回の利下げ後、アジア中銀の投資先で ある米国債の利回りが低下しているためだ。6カ月物で比較すると、中国の利 回りは米債利回りを1.31ポイント上回っている。このいわゆるスプレッドは半 年前は逆転しており、米国の方が2.2ポイント高かった。

仏銀BNPパリバによれば、中国人民銀行は現在、介入で毎月40億ドルを 失う計算だ。また英銀HSBCホールディングスの為替ストラテジスト、リチ ャード・イエッツエンガ氏(香港在勤)は、アジアの中銀9行が2006年7月以 降の1年で合わせて1600億ドルを失ったと指摘する。同氏は「勝負を終わらせ るには介入の減少しかない」と語った。

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